上 下
18 / 62

動画撮影⑤

しおりを挟む

「なんだ、なんだ?何しやがった!」

「私は何もしてないわよ……あんた達、今まで何人の女の子を地獄にたたき落としたの?生霊だけじゃない。既に怨霊になってる子もいる。それってどういう意味か分かる?怨霊って事はその子はもうこの世にはいない。あんた達が死に追いやったって事よね?あんた達を裁くのは法なんかじゃない。勿論私でもない。その子達に任せるわ」

 そう言うと叶は倒れている幸太の元に歩み寄った。それと同時に男達に取り憑いていた怨霊と化した霊達が姿を現し、一斉に男達に襲いかかる。

「……許さない」
「……もう離さない……私だけのもの……」
「……貴方との子供……楽しみでしょ?……」

 怨霊と化した霊達は姿を現すと各々がそれぞれの想いを口にしながら男達にまとわりつく様に掴みかかった。
 一体の霊は飛び降りて自ら命を絶ったのか顔が酷く潰れていた。もう一体は怨霊化が進んでしまったのか既に全身がドクロの様になり地を這っていた。更にもう一体は身篭っていたのか大きなお腹を抱え不気味な笑みを浮かべている。

「倉井君。私じゃ君を抱える事は出来ないんだけど、こんな奴らと君を一緒にいさせたくはないから起きてくれない?」

 そう問い掛けたが、幸太は意識を失ったままだった。仕方なく叶は幸太の両脇を抱えると引きずりながらその場を後にする。

「ひっ、嫌だ、止めてくれ!」
「誰か、誰か助けて」
「ああ……助けて……許して」

 一人の男は馬乗りになられて首を絞められていた。また別の男は後ろから羽交い締めにされ身動きが封じられている。更に別の男は逃げようとするが、ずっと大きなお腹を抱えた女が横にへばりつき笑みを浮かべながら話し掛けていた。

 男達の阿鼻叫喚が響き渡る中、叶は幸太を引きずりながらようやく、旧校舎の入り口の辺りまで戻って来れた。
 流石に息も上がり、汗だくになっている。

「流石に男の子引きずって来るのは重労働ね。もう無理」

 息も絶え絶えになりながら幸太を見つめて叶が呟く。幸太は依然気を失ったままだ。叶は少し心配になり口元に手をかざし呼吸を確認する。

「息は……してるね。良かった」

 顔を間近で見ると幸太の怪我があらためて酷い事が分かる。瞼は腫れ上がり、あちこち切り傷だらけだ。

「ごめん、私のせいで怪我させちゃったね。でも私みたいな変な女の為にそんなに頑張っちゃ駄目だって……まだ起きてないよね?起きちゃ駄目だよ」

 幸太がまだ気を失っている事を確認すると叶は幸太の頬を優しく手で持ち数秒間唇を重ねた。

「卑怯かな?こんなお礼しか出来なくてごめんね。でもいい加減にしてくれないと私の気持ちも揺らいじゃうんだよね……君が本当の私を知ったらどうするかな?……気にはなるけどね」

 叶は寄り添うように腰を下ろして意識のない幸太に優しく語り掛けていた。
 それから約三十分後、逃げ出した女性からの通報を受けようやく警察が駆け付けた。赤色灯に照らされ、サイレンが鳴り響き、にわかに騒がしくなる旧校舎に遅れて弘人と咲良も駆け付ける。

「叶さん大丈夫ですか!?」

駆け寄る咲良に笑顔で手を振り叶が応えていた。

「来てくれたんだね、ありがとう。倉井君をお願い出来る?私は多分面倒臭い事になりそうだし」

気を失っている幸太を二人に預けると叶は警察と共にその場を去って行った。その時の叶の儚い笑顔が咲良の印象に深く刻まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~

しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。 のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。 彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。 そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。 しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。 その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。 友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?

処理中です...