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出会い⑥
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その後幸太達が三人で波打ち際で座っていた時、後方から騒がしい声が近付いて来た。
「なんだ?何の集まりだ?」
「まさか撮影?」
幸太達の後方では男達がカメラを片手に騒ぎながら歩いていた。男性五人組は巷では有名な動画配信者のようで、今も多数のギャラリーを引き連れている。
そんな五人組を遠くから見つめながら咲良が眉根を寄せて、少し不愉快そうにしていた。
「ああ、何か見た事あるかも。確か五人組でドッキリ動画とか心霊スポットに行って配信とかしてる人達だったかな」
「へぇ、そうなのか。咲良詳しいのか?有名なやつら?」
弘人が軽く尋ねたが、咲良は顔をしかめた。
「良くも悪くも少しは有名かもね。動画自体は当たり障りなく軽いノリで明るく笑える感じなんだけど、撮影に行った先でのマナーが悪いっていう噂もあるし、何より女癖が悪いらしいから私は嫌いかな」
「なるほどねぇ」
咲良の話を聞き、二人は遠巻きに見つめながら頷いていた。実際、今も女性のギャラリーを引き連れ、カメラ片手に撮影をしているようだったが、他の一般の海水浴客に気を使っているような素振りなどなく、大声で笑いながら浜辺を我が物顔で歩いていたのだ。
「よーし次の撮影は夜だ。それまで海を満喫しようぜ」
「俺、疲れてんのかちょっと頭痛いからホテル帰っとくわ」
「なんだノリ悪いな」
そんな事を話しながら五人組はギャラリー達と海に入って行く。少し呆れたように幸太達はそれを見つめていた。
「また今年もああいう奴らがいっぱい来るのかな?」
「ああ、だろうな。夏と言えば海に、そして心霊スポットなんだろうな」
うんざりした様な幸太の問い掛けに、弘人も気だるそうに答えた。
幸太達のいるこの街には幾つか心霊スポットと呼ばれる場所と怪談話があった。そんな話を聞きつけ夏になると毎年肝試しに来る者達が一定数おり、地元民である幸太達はそんな肝試しに来る者達を快く思っていなかったのだ。
そんな時、幸太は今朝見た自分の夢の事を思い出した。
「そう言えば今日、変な夢を見たんだ」
そう言って幸太は今朝見た夢の事を二人に話した。
三人でいると波にさらわれた事。二人は消え、幸太だけが残された事。そして誰かが幸太の足をつかんで離さなかった事。
「う~無理無理」
話を聞いた咲良が顔をしかめて首を振っていた。
「なんか幸太の夢、海女の話みたいだな」
「ははは、やっぱりそう思うか?」
弘人が笑いながら言うと幸太も苦笑しながら頷いていた。海女の話とはこの辺り一帯で噂される怪談話である。
海女の話。
それはいつしかこの地域で広まった怪談話で昔、と言ってもそれほど昔という訳でもなく、昭和の後半か平成初期の頃。この街の海辺でサーフィンを楽しんでいた男がおり、そしていつもそれを彼女である女性が浜辺でずっと見つめていた。男のサーフィン仲間が「いつもここでずっと見てるだけで飽きないのかい?」と尋ねると「彼が楽しそうにしているからそれでいいの」と女性は笑顔で答えていた。周りから見れば何の問題もない幸せなカップル。そう見えていた。
だがそんな二人の幸せな関係は長くは続かず、一年も続く事はなかった。男の容姿は整っており、常に女遊びを繰り返していたのだが、女性はそれでも辛抱強く我慢し続けていた。だが最終的に別の女性に乗り換えられ、別れを告げられたのだ。
翌シーズン。
男がいつも通りサーフィンを楽しんでいると新しい彼女が浜辺でそれを見ていた。しかし離れた浜辺では前の彼女である女性もまた男を見つめていたのだ。
当の本人達は勿論の事、周りの人間もその状況に困惑していた。
『どうするべきか?』『注意するべきか?』
悩んだ末、男は女性に迷惑だと告げ、何処かへ行くよう促した。女性は素直に聞き入れ姿を消し、皆一様に安堵していたのだが、直後に女性は崖から身を投げ、その命を絶ってしまったのだ。
その場にいた全員が罪悪感に苛まれたが、事故から暫く経つと、皆普通の生活に戻って行った。
しかし暫くすると『浜辺で女性を見かけた』『海の方を見つめる女性を見かけた』と言った話が聞かれ始め、そして海で溺れかけた人が『知らない女性が足をつかんできた』と言った事をきっかけに怪談話は一気に広がって行った。
「なんだ?何の集まりだ?」
「まさか撮影?」
幸太達の後方では男達がカメラを片手に騒ぎながら歩いていた。男性五人組は巷では有名な動画配信者のようで、今も多数のギャラリーを引き連れている。
そんな五人組を遠くから見つめながら咲良が眉根を寄せて、少し不愉快そうにしていた。
「ああ、何か見た事あるかも。確か五人組でドッキリ動画とか心霊スポットに行って配信とかしてる人達だったかな」
「へぇ、そうなのか。咲良詳しいのか?有名なやつら?」
弘人が軽く尋ねたが、咲良は顔をしかめた。
「良くも悪くも少しは有名かもね。動画自体は当たり障りなく軽いノリで明るく笑える感じなんだけど、撮影に行った先でのマナーが悪いっていう噂もあるし、何より女癖が悪いらしいから私は嫌いかな」
「なるほどねぇ」
咲良の話を聞き、二人は遠巻きに見つめながら頷いていた。実際、今も女性のギャラリーを引き連れ、カメラ片手に撮影をしているようだったが、他の一般の海水浴客に気を使っているような素振りなどなく、大声で笑いながら浜辺を我が物顔で歩いていたのだ。
「よーし次の撮影は夜だ。それまで海を満喫しようぜ」
「俺、疲れてんのかちょっと頭痛いからホテル帰っとくわ」
「なんだノリ悪いな」
そんな事を話しながら五人組はギャラリー達と海に入って行く。少し呆れたように幸太達はそれを見つめていた。
「また今年もああいう奴らがいっぱい来るのかな?」
「ああ、だろうな。夏と言えば海に、そして心霊スポットなんだろうな」
うんざりした様な幸太の問い掛けに、弘人も気だるそうに答えた。
幸太達のいるこの街には幾つか心霊スポットと呼ばれる場所と怪談話があった。そんな話を聞きつけ夏になると毎年肝試しに来る者達が一定数おり、地元民である幸太達はそんな肝試しに来る者達を快く思っていなかったのだ。
そんな時、幸太は今朝見た自分の夢の事を思い出した。
「そう言えば今日、変な夢を見たんだ」
そう言って幸太は今朝見た夢の事を二人に話した。
三人でいると波にさらわれた事。二人は消え、幸太だけが残された事。そして誰かが幸太の足をつかんで離さなかった事。
「う~無理無理」
話を聞いた咲良が顔をしかめて首を振っていた。
「なんか幸太の夢、海女の話みたいだな」
「ははは、やっぱりそう思うか?」
弘人が笑いながら言うと幸太も苦笑しながら頷いていた。海女の話とはこの辺り一帯で噂される怪談話である。
海女の話。
それはいつしかこの地域で広まった怪談話で昔、と言ってもそれほど昔という訳でもなく、昭和の後半か平成初期の頃。この街の海辺でサーフィンを楽しんでいた男がおり、そしていつもそれを彼女である女性が浜辺でずっと見つめていた。男のサーフィン仲間が「いつもここでずっと見てるだけで飽きないのかい?」と尋ねると「彼が楽しそうにしているからそれでいいの」と女性は笑顔で答えていた。周りから見れば何の問題もない幸せなカップル。そう見えていた。
だがそんな二人の幸せな関係は長くは続かず、一年も続く事はなかった。男の容姿は整っており、常に女遊びを繰り返していたのだが、女性はそれでも辛抱強く我慢し続けていた。だが最終的に別の女性に乗り換えられ、別れを告げられたのだ。
翌シーズン。
男がいつも通りサーフィンを楽しんでいると新しい彼女が浜辺でそれを見ていた。しかし離れた浜辺では前の彼女である女性もまた男を見つめていたのだ。
当の本人達は勿論の事、周りの人間もその状況に困惑していた。
『どうするべきか?』『注意するべきか?』
悩んだ末、男は女性に迷惑だと告げ、何処かへ行くよう促した。女性は素直に聞き入れ姿を消し、皆一様に安堵していたのだが、直後に女性は崖から身を投げ、その命を絶ってしまったのだ。
その場にいた全員が罪悪感に苛まれたが、事故から暫く経つと、皆普通の生活に戻って行った。
しかし暫くすると『浜辺で女性を見かけた』『海の方を見つめる女性を見かけた』と言った話が聞かれ始め、そして海で溺れかけた人が『知らない女性が足をつかんできた』と言った事をきっかけに怪談話は一気に広がって行った。
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