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30.手を繋いで、明日へ
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「――で、結局元の鞘に収まったのか」
珈琲を傾けていたレンが呆れかえったようにじっとりとした目でこちらを見た。
アレクシスにうなじを噛まれた後から顔を合わせていなかったが、「相談に乗ってやったのだから経過報告ぐらいしろ」というお達しを送り付けてきたので会いにきたのだが……開口一番にこれである。
コミュニケーション能力が地中にめり込んでいるのかこの男。
鏡写しのように呆れた眼差しを返してやる。
「ええ」
「だが、兄上を王城に返す気はない、と」
「それは陛下の御心次第ね」
あれから、アレクシスはネクタル領に逗留している。
もともと国外までの追放処分などは下されていない上に、一応廃嫡のきっかけとなった事件の被害者といえるサラージュが事件自体を許してしまったので、いろいろややこしいことになっている。サラージュ自身はアレクシスがもともと予定されていた通りどこぞの一領主に落ち着くならばそれでよしと思っているのだが、勢力図的にいささか難しいらしい。
よって、今回の件は最終的に王に一任されることになった。
万が一にも「別れてレンに輿入れしろ」という命が出たらさっさとアレクシスを連れて逃避行をする用意はあるが、あの王のことなのでそれはないだろう。
そのあたりの予想はレンも合致しているようで、静かな頷きが返された。
「父上は、おそらくこのままにするだろうな。そう簡単に継承権を移動していては王位自体が軽いものになる」
「そもそも、継承権を返還したのはレクシア自身よ。重ねて言えば陛下も自主返還を狙っていたフシはあるわね」
「気に食わない」
「掌の上が?」
口がぐにゃりと曲がった。正解らしい。なぜそのわかりやすさを正の方向にも発揮できないんだ。
じっとりとしたまなざしに、何か思うところがあったのか、ふいっと視線がズレた。
「……これから、どうするんだ」
無理やり軌道を変えられたが、まあ必要なことは話した後なのでいいとしよう。
カップをソーサーに置き、「そうね」と予定を思い出す。罰は罰として受けたいアレクシスを説き伏せるのに色々手をつくしたものだから、どれが最終的に選ばれたのか少し曖昧になっているところがあったので。
「わたくし個人の領地でしばしご静養、という名目になるかしら。東はネクタルの庭だもの。雑音を届けさせやしないわ」
記憶からひっぱりだしたそれを伝えれば、レンは深々とため息をついた。
「過保護め」
「なんとでも言いなさい。それよりレン、あなた王太子になるのだからもうすこし表情を柔らかくした方がいいわよ。社交をすべてあの子に任せるつもり?」
「………………善処する」
曖昧な返答に思わずカップを置く手が乱れる。
負担が誰に行くか、わかっていないのか。
「確約して。わたくしも出来る限りいろはを叩きこむつもりではあるけれどね。王太子妃――国母になるための心構えなど、彼女はしてこなかったのだから、いざという時を想定してきた貴方より負担が大きいのよ。わたくしが言うことではないけれど」
アレクシスが王太子から降りるということは、余程のことがない限りは第二王子であるレンが繰り上がって王太子となる。正式発表はまだだが、第二子であるイリスは彼女自身が適性がないとして固辞した。彼が次代の王になるのはもう決まったも同然だろう。
そうなってくると、問題となってくるのは妃だ。
レンの婚約者は貴族ではあるものの、位は高くない。この男が側室を取るとも思えない以上、これまでサラージュが担ってきた王太子妃としての仕事はすべて彼女の肩に掛かることになる。ただ花のように微笑んでいればいい立ち位置でないことは、サラージュが一番知っている。
せめて伴侶の口下手フォローなんていう雑務は最初に減らしておいてあげたい。
コミュニケーション能力が絶望的なタイプではないのだから、あとは本人の気合次第だろう。
溺愛する婚約者に余計な負担をかけるのは本意ではないらしく、こくりと黒髪が縦に揺れた。
「わかった。……おい」
「人を『おい』と呼ぶのはおよしなさい。何?」
「後は任せろ。せいぜい蜜月を満喫するんだな、幼馴染殿」
「――いつでも泣きついていいわよ。背中だけなら貸してあげる」
本当に、口下手な癖に余計な一言が多い男である。
互いに半ば喧嘩腰で会話を続けていれば、かたんと扉が開いた。柔らかなハニーブロンドがひょっこり覗く。
「サラ。ここにいたのか」
「レクシア」
別邸とはいえ気を使わせたくないと言い出したアレクシスは今、変装と称して侍従服とやぼったい眼鏡をかけている。何とも見慣れないし、絶妙に似合っていない。仕草が王族の優美さに溢れすぎている。
「お迎えだな」
「別に頼んだわけじゃないわよ」
書庫にいると言っていたのだが、あの言いようだとひょっとして探し回っていたのだろうか。
いくら侍従ごっこをしているとはいえ、さすがに入り口で立たせておくわけにもいかないので招き入れれば、ぱちんとライトグリーンが瞬いた。
「レンもいたのか」
「入口から見えていたはずだろう」
「サラしか見えなかった」
「嫁バカめ。もう用は済んだから勝手に持って帰ってくれ」
「言われなくともそうする」
「わたくし、物じゃなくってよ」
「わかっているとも、ぼくの宝。それじゃあ――レン」
するりと手を取られ、なめらかに扉へエスコートされる。
振り返ったアレクシスに、レンが珍しく柔らかな笑みを浮かべた。
「ん。……幸せにな。兄上」
「すまない。ありがとう」
寄り添いあって扉の向こうへ消える恋人たちを見送り、レンは一息ついたとでも言いたげにカップの中に残っていた珈琲を傾けた。
そうしてもう彼らの足音すら聞こえなくなるころになって、ふいに青年は瞬いた。
「……あの似合わない一人称、やめたのか」
いつからか聞かなくなっていた懐かしい響きを口にする兄の憑き物が落ちたような顔は、「理想の王子様」とやらに徹していたころよりもずっと生き生きしているように思えた。
***
隣を歩くアレクシスの顔を伺い、サラージュはこてんと首を傾げた。
「レクシア、大丈夫?」
「? なにがだ」
「……レンとわたくしが二人でいたの、気にならなくって?」
これまでの――少なくともつい先日までの不安定なアレクシスならば、たとえ弟だろうと二人きりで居るところを見たら悋気に煽られて仕方がなかっただろう。
念のため侍従に控えさせていたのだが、なにやらトラブルがあったらしく丁度どちらもそばを離れているタイミングで彼がやってきたので、結果的に二人きりの場面に遭遇したことになる。落ち着いているほうが不思議だ。
だが、アレクシスは少し瞬くと、ふわりと笑った。
「ああ……。少し妬いたな」
その顔は言葉とは裏腹にひどく穏やかで、緑の目をした魔物はそこにはいない。
侍従服に相応しい礼をとるように、アレクシスが自身の胸に手を当てた。
「だが、今のぼくはサラのものである自負に満ちているからな。きみが愛を注いでくれる限りあのような醜態は見せないとも」
それはひどく自慢げで、王太子としての豪奢な服を纏っていたころにはついぞ見られなかった力強い笑み。
王太子というヒトのルールから抜け出しただけでこうも回復するとは――と思いかけて、思考を訂正する。
彼は結局のところ、昔から何一つ変わってなどいないのだ。
サラージュという一個人を欲し、ただその想いだけで満たされていたい。それが彼の望みだった。
「仕方のない方」
アレクシスだけで世界が完結するほど、サラージュは割り切れない。幼いころに追いかけた星はまだこの手の中にはない。
それでも、彼がこの身を星というのならば――生きていてもいいのだと、自分を少しは許せるような気がした。
「大好きよ、わたくしの狼さん。どうかずっと傍にいてね」
三歳のあの日に置き忘れた砂糖菓子の甘さを含ませて、少女は笑った。
ーfinー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*お読みいただきありがとうございました。楽しんで頂けたでしょうか?
すこしでも響くものがあったのならば幸いです。
本編はここまでとなりますが、番外編をいくつかUPしていきます。感想はもちろんのこと、ここ深堀してほしいなどのコメントも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。
珈琲を傾けていたレンが呆れかえったようにじっとりとした目でこちらを見た。
アレクシスにうなじを噛まれた後から顔を合わせていなかったが、「相談に乗ってやったのだから経過報告ぐらいしろ」というお達しを送り付けてきたので会いにきたのだが……開口一番にこれである。
コミュニケーション能力が地中にめり込んでいるのかこの男。
鏡写しのように呆れた眼差しを返してやる。
「ええ」
「だが、兄上を王城に返す気はない、と」
「それは陛下の御心次第ね」
あれから、アレクシスはネクタル領に逗留している。
もともと国外までの追放処分などは下されていない上に、一応廃嫡のきっかけとなった事件の被害者といえるサラージュが事件自体を許してしまったので、いろいろややこしいことになっている。サラージュ自身はアレクシスがもともと予定されていた通りどこぞの一領主に落ち着くならばそれでよしと思っているのだが、勢力図的にいささか難しいらしい。
よって、今回の件は最終的に王に一任されることになった。
万が一にも「別れてレンに輿入れしろ」という命が出たらさっさとアレクシスを連れて逃避行をする用意はあるが、あの王のことなのでそれはないだろう。
そのあたりの予想はレンも合致しているようで、静かな頷きが返された。
「父上は、おそらくこのままにするだろうな。そう簡単に継承権を移動していては王位自体が軽いものになる」
「そもそも、継承権を返還したのはレクシア自身よ。重ねて言えば陛下も自主返還を狙っていたフシはあるわね」
「気に食わない」
「掌の上が?」
口がぐにゃりと曲がった。正解らしい。なぜそのわかりやすさを正の方向にも発揮できないんだ。
じっとりとしたまなざしに、何か思うところがあったのか、ふいっと視線がズレた。
「……これから、どうするんだ」
無理やり軌道を変えられたが、まあ必要なことは話した後なのでいいとしよう。
カップをソーサーに置き、「そうね」と予定を思い出す。罰は罰として受けたいアレクシスを説き伏せるのに色々手をつくしたものだから、どれが最終的に選ばれたのか少し曖昧になっているところがあったので。
「わたくし個人の領地でしばしご静養、という名目になるかしら。東はネクタルの庭だもの。雑音を届けさせやしないわ」
記憶からひっぱりだしたそれを伝えれば、レンは深々とため息をついた。
「過保護め」
「なんとでも言いなさい。それよりレン、あなた王太子になるのだからもうすこし表情を柔らかくした方がいいわよ。社交をすべてあの子に任せるつもり?」
「………………善処する」
曖昧な返答に思わずカップを置く手が乱れる。
負担が誰に行くか、わかっていないのか。
「確約して。わたくしも出来る限りいろはを叩きこむつもりではあるけれどね。王太子妃――国母になるための心構えなど、彼女はしてこなかったのだから、いざという時を想定してきた貴方より負担が大きいのよ。わたくしが言うことではないけれど」
アレクシスが王太子から降りるということは、余程のことがない限りは第二王子であるレンが繰り上がって王太子となる。正式発表はまだだが、第二子であるイリスは彼女自身が適性がないとして固辞した。彼が次代の王になるのはもう決まったも同然だろう。
そうなってくると、問題となってくるのは妃だ。
レンの婚約者は貴族ではあるものの、位は高くない。この男が側室を取るとも思えない以上、これまでサラージュが担ってきた王太子妃としての仕事はすべて彼女の肩に掛かることになる。ただ花のように微笑んでいればいい立ち位置でないことは、サラージュが一番知っている。
せめて伴侶の口下手フォローなんていう雑務は最初に減らしておいてあげたい。
コミュニケーション能力が絶望的なタイプではないのだから、あとは本人の気合次第だろう。
溺愛する婚約者に余計な負担をかけるのは本意ではないらしく、こくりと黒髪が縦に揺れた。
「わかった。……おい」
「人を『おい』と呼ぶのはおよしなさい。何?」
「後は任せろ。せいぜい蜜月を満喫するんだな、幼馴染殿」
「――いつでも泣きついていいわよ。背中だけなら貸してあげる」
本当に、口下手な癖に余計な一言が多い男である。
互いに半ば喧嘩腰で会話を続けていれば、かたんと扉が開いた。柔らかなハニーブロンドがひょっこり覗く。
「サラ。ここにいたのか」
「レクシア」
別邸とはいえ気を使わせたくないと言い出したアレクシスは今、変装と称して侍従服とやぼったい眼鏡をかけている。何とも見慣れないし、絶妙に似合っていない。仕草が王族の優美さに溢れすぎている。
「お迎えだな」
「別に頼んだわけじゃないわよ」
書庫にいると言っていたのだが、あの言いようだとひょっとして探し回っていたのだろうか。
いくら侍従ごっこをしているとはいえ、さすがに入り口で立たせておくわけにもいかないので招き入れれば、ぱちんとライトグリーンが瞬いた。
「レンもいたのか」
「入口から見えていたはずだろう」
「サラしか見えなかった」
「嫁バカめ。もう用は済んだから勝手に持って帰ってくれ」
「言われなくともそうする」
「わたくし、物じゃなくってよ」
「わかっているとも、ぼくの宝。それじゃあ――レン」
するりと手を取られ、なめらかに扉へエスコートされる。
振り返ったアレクシスに、レンが珍しく柔らかな笑みを浮かべた。
「ん。……幸せにな。兄上」
「すまない。ありがとう」
寄り添いあって扉の向こうへ消える恋人たちを見送り、レンは一息ついたとでも言いたげにカップの中に残っていた珈琲を傾けた。
そうしてもう彼らの足音すら聞こえなくなるころになって、ふいに青年は瞬いた。
「……あの似合わない一人称、やめたのか」
いつからか聞かなくなっていた懐かしい響きを口にする兄の憑き物が落ちたような顔は、「理想の王子様」とやらに徹していたころよりもずっと生き生きしているように思えた。
***
隣を歩くアレクシスの顔を伺い、サラージュはこてんと首を傾げた。
「レクシア、大丈夫?」
「? なにがだ」
「……レンとわたくしが二人でいたの、気にならなくって?」
これまでの――少なくともつい先日までの不安定なアレクシスならば、たとえ弟だろうと二人きりで居るところを見たら悋気に煽られて仕方がなかっただろう。
念のため侍従に控えさせていたのだが、なにやらトラブルがあったらしく丁度どちらもそばを離れているタイミングで彼がやってきたので、結果的に二人きりの場面に遭遇したことになる。落ち着いているほうが不思議だ。
だが、アレクシスは少し瞬くと、ふわりと笑った。
「ああ……。少し妬いたな」
その顔は言葉とは裏腹にひどく穏やかで、緑の目をした魔物はそこにはいない。
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それはひどく自慢げで、王太子としての豪奢な服を纏っていたころにはついぞ見られなかった力強い笑み。
王太子というヒトのルールから抜け出しただけでこうも回復するとは――と思いかけて、思考を訂正する。
彼は結局のところ、昔から何一つ変わってなどいないのだ。
サラージュという一個人を欲し、ただその想いだけで満たされていたい。それが彼の望みだった。
「仕方のない方」
アレクシスだけで世界が完結するほど、サラージュは割り切れない。幼いころに追いかけた星はまだこの手の中にはない。
それでも、彼がこの身を星というのならば――生きていてもいいのだと、自分を少しは許せるような気がした。
「大好きよ、わたくしの狼さん。どうかずっと傍にいてね」
三歳のあの日に置き忘れた砂糖菓子の甘さを含ませて、少女は笑った。
ーfinー
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