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12.釈放のち新たな悩み
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それからいくつか言葉を交わした後、サラージュはそれまでの監禁が嘘であったかのように解放された。
期間にして十四日。短くも長い執着の檻から解き放たれたのは、そんな唐突過ぎる早朝のことだった。
(……突然、だったわね)
躾は、まだ半ばだった。
信頼関係の再構築が終わり、制御はなんとか効くようになったので、その報酬として与えていた褒め殺しや甘やかしのバランスを取り始めていた。本能と社会性の共存ラインを探る段階だ。
それが済んでから彼の手綱をサラージュが生涯離さないことを誓うことで、監禁に至るほどの不安感を払拭する――というのがサラージュのプランだったのだが。
唐突に、アレクシスがサラージュの足枷を外し、扉を開け放った。
「すまなかった」と告げられただけで「出ていけ」という命こそ下されなかったが、少なくとも枷が外された時点で監禁とは言い難いだろう。軟禁ですらない。サラージュの脚力ならドアは愚か窓とて蹴り破れる。
当然だが、王との約束の一か月になりそうな場合に使う予定だった『解放しろ』のコマンドは一音たりとも使用していない。
(自分の意志でとどまってほしかった、とか? いいえ、わたくしに嫌気がさした? ……どちらににしても、違和感があるわね)
自ら縛られてほしいと言うにしては眼差しにも指先にも懇願が無く、この身に嫌気がさしたにしては枷を外す手には乱雑さの一つもなかった。
いったい彼にどんな変化があったというのだろうか。
そんなことを思い悩む頭とは裏腹に、身体は久方ぶりの解放を喜んでいるようで、自室に踏み入れた足は真っすぐに窓を開け放ちに向かった。冴え冴えとした風が頬を撫で、白む空の薄明りがちりりと網膜を刺激する。
うっすらと光って見えるバルコニーへと歩を進め、ぐっと伸びをする。太陽の熱を忘れたさっぱりとした空気を肺に入れ、ゆっくりと吐き出す。
「……あら」
ぺたん。と少女は意図せずその場に座り込んだ。十四日間のうちほとんどをベッドの上に留め置かれ筋力が低下しているとはいえ、日常生活をおくるために最低限の身体強化魔法はかけてある。だと言うのに唐突に萎えたそれに首を傾げ、そして自覚した。
(思ったよりも、疲れていたのね)
言語化すれば、身体を取り巻く疲労の澱が重さを増す。
強化魔法は問題なく作用している。となればこれは精神的な疲労だろう。
慣れない上に向いていない【命令】を使用したというストレスは勿論のこと、なにより置かれていた状況を考えれば当たり前のことだ。
閉鎖空間での時間感覚の麻痺。
視覚情報が生きているのに死んでいるという矛盾。
新たな情報が何一つ入ってこない世界の壊死。
どれも、人が心を壊すことに繋がる要素だ。
心証自体は惚れた欲目といった文言で誤魔化せなくもないが、所詮人の精神は肉体の状態に左右されるもの。似たような極限状態に陥りがちな戦場でもある程度は保つように訓練を受けたサラージュだからこの程度の疲労で済んだに過ぎない。
きっと、あの直情的な婚約者殿はそこまで考えていなかったのだろうけれど。
(――まあ、気にする必要はないわね。わたくしはこうして生きているのだし)
勘案し、即決する。
監禁というノイズこそあったものの、アレクシスの精神を安定させるという王からの依頼は達成されたのだから、と。
***
自分が彼の『運命』であると理解すると同時に、サラージュは一つの推測を立てた。
それは、アレクシスが無制御に泣くことでしか負荷を逃がせなかったのは、本能の部分で無秩序であったからではないか、というものだ。
サラージュという安全圏、私的空間を守る伴侶の膝だから泣けたのではない。
サラージュという『運命』を前にしていたから理性による感情制御が狂ってしまい、泣かずにはいられなかったのだ。
公的な場ではヒトとしての理性が働いていても、二人きりの場ではフェロモンを操れないつがいを前に「求愛しろ」と脳が誤作動を起こし、本来なら働くはずの羞恥や自己制御が効かなくなっていたのだろう。
ストレス発散ということ自体は成果から見れば事実だったのだろうが、本当にストレスの発散のためだけの落涙であるならば睡眠中に無意識に流れ出ることもあるはずだ。しかし、思い返せば噂好きの精霊たちがそのようなことを口にしたことは一度たりともなかった。彼らはアレクシスのハニーブロンドを好んでいるので、常日頃から観察日記のように風に噂を流しているというのに。
(わたくしの手落ちね。聴こえているものを当然と思いすぎたわ……『運命』のことといい、判断材料はたくさんあったのに。でも、まあ、いいわ)
途中とはいえ、その暴走気味だった本能に手綱をかけることには成功した。
ストレスと求愛欲求による過負荷が起こりかけたとしても、外付けの理性としてサラージュが働きかけることが可能になるはずだ。
そう結論付けると、サラージュはゆっくり立ち上がった。精神疲労を加味した分の強化魔法を重ね掛けしたので先ほどのような脱力が襲うことはもうない。
木々の合間から零れだした朝日が色の薄い髪と睫毛にあたって、頬に光と影を散らす。ほう、とついた息が白く濁って霧散する。
万事うまくいった。
かかると思っていた期間を半分も消費せず済ませることができた。支払われたコストも自分の自由のみ。アレクシスがこの身をつがいだと認識しているという新たな判断基準も手に入れた。
手落ちはない。そう冷静に勘定する自分が告げているというのに――頭の隅に、どこかざわつくものが残ってやまない。
「手順は何も間違っていない。……そのはず、なのに」
躾の最中にアレクシスが見せた、恍惚としているのに傷ついているような下手くそな笑顔が、忘れられない。
ぼんやり木々を眺めていた瞳に、一条の光がちくりと突き刺さった。
反射的に細めた視界の隅に、黒い陰りがぽつりぽつりと焦げ跡のように焼け付く。
(……わからないわ。どうして、殿下はあんな顔をしたのかしら)
普段の彼ならば、サラージュの口から「初恋はあなた」と告げられればはしゃぎ倒していたという確信がある。だというのに、そうではなかった。
その理由が、少女にはとんとわからない。
そして、さらに根深く胸に巣食う陰りがひとつ。
「どうして、わたくしはこんなにも気にしているの」
ほんの些細な、小さな違和感だったというのに、頭から離れない。
予想を外したことが不快なわけではない――自分の快不快など、どうでもいい。
サラージュ以外の誰にも影響を与えないそんなものに費やす時間があるならば、民を守る鍛錬をした方がよほど有意義で、書物をひとつ読む方が衆生のためになるというものだ。
普段通りに、そうすればいいだけだというのに、一度姿を見せた陰りは心臓にまとわりついて離れない。
(ああ、嫌だ――あたまが、いたい)
目を逸らすように、サラージュはベッドの上で胎児のように丸くなる。
普段の凛々しさからはかけ離れた、弱々しさすら感じさせるその姿を見るものはいない。
――酷使された体と精神を存分に癒せと王から休養の命が出ている。
言い訳のように事実を反芻して、少女の意識はワインレッドの瞳と共に眠りへと沈んでいった。
奈落へ身投げするように、深く、重く。
期間にして十四日。短くも長い執着の檻から解き放たれたのは、そんな唐突過ぎる早朝のことだった。
(……突然、だったわね)
躾は、まだ半ばだった。
信頼関係の再構築が終わり、制御はなんとか効くようになったので、その報酬として与えていた褒め殺しや甘やかしのバランスを取り始めていた。本能と社会性の共存ラインを探る段階だ。
それが済んでから彼の手綱をサラージュが生涯離さないことを誓うことで、監禁に至るほどの不安感を払拭する――というのがサラージュのプランだったのだが。
唐突に、アレクシスがサラージュの足枷を外し、扉を開け放った。
「すまなかった」と告げられただけで「出ていけ」という命こそ下されなかったが、少なくとも枷が外された時点で監禁とは言い難いだろう。軟禁ですらない。サラージュの脚力ならドアは愚か窓とて蹴り破れる。
当然だが、王との約束の一か月になりそうな場合に使う予定だった『解放しろ』のコマンドは一音たりとも使用していない。
(自分の意志でとどまってほしかった、とか? いいえ、わたくしに嫌気がさした? ……どちらににしても、違和感があるわね)
自ら縛られてほしいと言うにしては眼差しにも指先にも懇願が無く、この身に嫌気がさしたにしては枷を外す手には乱雑さの一つもなかった。
いったい彼にどんな変化があったというのだろうか。
そんなことを思い悩む頭とは裏腹に、身体は久方ぶりの解放を喜んでいるようで、自室に踏み入れた足は真っすぐに窓を開け放ちに向かった。冴え冴えとした風が頬を撫で、白む空の薄明りがちりりと網膜を刺激する。
うっすらと光って見えるバルコニーへと歩を進め、ぐっと伸びをする。太陽の熱を忘れたさっぱりとした空気を肺に入れ、ゆっくりと吐き出す。
「……あら」
ぺたん。と少女は意図せずその場に座り込んだ。十四日間のうちほとんどをベッドの上に留め置かれ筋力が低下しているとはいえ、日常生活をおくるために最低限の身体強化魔法はかけてある。だと言うのに唐突に萎えたそれに首を傾げ、そして自覚した。
(思ったよりも、疲れていたのね)
言語化すれば、身体を取り巻く疲労の澱が重さを増す。
強化魔法は問題なく作用している。となればこれは精神的な疲労だろう。
慣れない上に向いていない【命令】を使用したというストレスは勿論のこと、なにより置かれていた状況を考えれば当たり前のことだ。
閉鎖空間での時間感覚の麻痺。
視覚情報が生きているのに死んでいるという矛盾。
新たな情報が何一つ入ってこない世界の壊死。
どれも、人が心を壊すことに繋がる要素だ。
心証自体は惚れた欲目といった文言で誤魔化せなくもないが、所詮人の精神は肉体の状態に左右されるもの。似たような極限状態に陥りがちな戦場でもある程度は保つように訓練を受けたサラージュだからこの程度の疲労で済んだに過ぎない。
きっと、あの直情的な婚約者殿はそこまで考えていなかったのだろうけれど。
(――まあ、気にする必要はないわね。わたくしはこうして生きているのだし)
勘案し、即決する。
監禁というノイズこそあったものの、アレクシスの精神を安定させるという王からの依頼は達成されたのだから、と。
***
自分が彼の『運命』であると理解すると同時に、サラージュは一つの推測を立てた。
それは、アレクシスが無制御に泣くことでしか負荷を逃がせなかったのは、本能の部分で無秩序であったからではないか、というものだ。
サラージュという安全圏、私的空間を守る伴侶の膝だから泣けたのではない。
サラージュという『運命』を前にしていたから理性による感情制御が狂ってしまい、泣かずにはいられなかったのだ。
公的な場ではヒトとしての理性が働いていても、二人きりの場ではフェロモンを操れないつがいを前に「求愛しろ」と脳が誤作動を起こし、本来なら働くはずの羞恥や自己制御が効かなくなっていたのだろう。
ストレス発散ということ自体は成果から見れば事実だったのだろうが、本当にストレスの発散のためだけの落涙であるならば睡眠中に無意識に流れ出ることもあるはずだ。しかし、思い返せば噂好きの精霊たちがそのようなことを口にしたことは一度たりともなかった。彼らはアレクシスのハニーブロンドを好んでいるので、常日頃から観察日記のように風に噂を流しているというのに。
(わたくしの手落ちね。聴こえているものを当然と思いすぎたわ……『運命』のことといい、判断材料はたくさんあったのに。でも、まあ、いいわ)
途中とはいえ、その暴走気味だった本能に手綱をかけることには成功した。
ストレスと求愛欲求による過負荷が起こりかけたとしても、外付けの理性としてサラージュが働きかけることが可能になるはずだ。
そう結論付けると、サラージュはゆっくり立ち上がった。精神疲労を加味した分の強化魔法を重ね掛けしたので先ほどのような脱力が襲うことはもうない。
木々の合間から零れだした朝日が色の薄い髪と睫毛にあたって、頬に光と影を散らす。ほう、とついた息が白く濁って霧散する。
万事うまくいった。
かかると思っていた期間を半分も消費せず済ませることができた。支払われたコストも自分の自由のみ。アレクシスがこの身をつがいだと認識しているという新たな判断基準も手に入れた。
手落ちはない。そう冷静に勘定する自分が告げているというのに――頭の隅に、どこかざわつくものが残ってやまない。
「手順は何も間違っていない。……そのはず、なのに」
躾の最中にアレクシスが見せた、恍惚としているのに傷ついているような下手くそな笑顔が、忘れられない。
ぼんやり木々を眺めていた瞳に、一条の光がちくりと突き刺さった。
反射的に細めた視界の隅に、黒い陰りがぽつりぽつりと焦げ跡のように焼け付く。
(……わからないわ。どうして、殿下はあんな顔をしたのかしら)
普段の彼ならば、サラージュの口から「初恋はあなた」と告げられればはしゃぎ倒していたという確信がある。だというのに、そうではなかった。
その理由が、少女にはとんとわからない。
そして、さらに根深く胸に巣食う陰りがひとつ。
「どうして、わたくしはこんなにも気にしているの」
ほんの些細な、小さな違和感だったというのに、頭から離れない。
予想を外したことが不快なわけではない――自分の快不快など、どうでもいい。
サラージュ以外の誰にも影響を与えないそんなものに費やす時間があるならば、民を守る鍛錬をした方がよほど有意義で、書物をひとつ読む方が衆生のためになるというものだ。
普段通りに、そうすればいいだけだというのに、一度姿を見せた陰りは心臓にまとわりついて離れない。
(ああ、嫌だ――あたまが、いたい)
目を逸らすように、サラージュはベッドの上で胎児のように丸くなる。
普段の凛々しさからはかけ離れた、弱々しさすら感じさせるその姿を見るものはいない。
――酷使された体と精神を存分に癒せと王から休養の命が出ている。
言い訳のように事実を反芻して、少女の意識はワインレッドの瞳と共に眠りへと沈んでいった。
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