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2.監禁以前(1)
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アレクシス・ガイナシウス・ファーレン。
この国の王太子にして『太陽の君』と呼ばれる青年である。
常に笑みを絶やさず、民に公平で、仕事にも懸命。
時折抜けているところもあるが、それが親しみやすく、けれども肝心なところで高貴さを忘れない。王家の血に相応しい清廉潔白な人。
陽光をよく弾くハニーブロンドの柔らかな髪とライトグリーンの垂れ目が優し気な、童話から飛び出したような理想の『王子様』。
それが、世間一般における彼の評価だ。
実際、婚約者であるサラージュから見ても、おおむね同意できるものと言えよう。
高位貴族でこういった人柄を持っている人物はたいてい裏があるものだが、彼にはそうした裏表がない。
――なさすぎるので、こういう事態になった。ともいうのだが。
事の起こりは、アレクシスの父である国王の発言だった。
「アレクシスと婚約破棄、してみない?」
「……はい?」
単語の重さとは裏腹に軽い調子で告げられたそれに、サラージュは臣下の礼を取るのも忘れて首を傾げた。
言葉の内容が理解できなかったわけでも、王のあまりの軽さに困惑したわけでもない。この人はいつもこんな感じだ。式典以外では軽い。身内が相手ともなればもはや浮草よりも軽々しい。
サラージュも幼少期から王には親戚のごとく可愛がられていた身だ。もはや見慣れている。国王とサラージュの父は竹馬の友らしく、そう簡単に足を運べる距離ではないはずなのに幼いころの記憶にはたいていこの王がいるくらいには。
その縁で出会ったアレクシスとサラージュは婚約者という関係性を築き上げ、とくにこれまで不和を起こすこともなく仲睦まじく過ごしていた――はずだ。
だというのに、婚約破棄とは。
サラージュ自身には思い当たる節がまるでない。王命と言えど、さすがに理由もなしに告げるのは道義に悖るだろう。
仮にアレクシスの方に問題があったのだとすれば、なおさら。
徐々に剣呑さを帯びていく迫力あるワインレッドの瞳を前に、王はへらりと笑った。
「いやあ、あの子はさ、よくやってくれているんだが……なにかと嫌なことがあるとすぐそなたに泣きつくであろう?」
「それは……そうですね」
脳裏に、涙でぐしゃぐしゃになった婚約者の美麗な顔がよぎった。
アレクシスは、純粋だ。
幼いという意味ではない。王族としての分別もあり、公的な場でおかしな行動をとることもない。社交の場で無知や過剰な無垢を晒すような真似もしない知性も持ち合わせている。
ただ、心根が王族にしては有り得ないほどに透明なまま育った上に、感受性がひどく高いのだ。
柔らかな心は本来傷ついた分だけ捻くれるなり硬質になるなりして自分の身を守ろうとするものだが、彼はそうはなれなかった。
本人は幾度も――時には違法スレスレの魔術まで用いて心を凍らせる術を学ぼうとしたのだが、そのたびにひどく体調を崩し、上手くいくことはなかった。
どうしようもなくなった彼は、ある日泣くようになった。
最も私的な部分を明け渡せる、未来の伴侶であるサラージュの前でのみ子供のように泣き続ける。わんわんと、声をあげて泣き縋る。時にはドレスがダメになることがあるほどに。
たしかに年齢を考えれば眉を顰められかねない絵面だろうが、あくまで私的空間でのみ行われることだ。ストレスの解消が出来ずに心を病まれるよりはずっといい。
だいたい、とサラージュは気まずげに視線を落としながら言葉を返した。
「……今さらです、よね?」
彼の涙を受け止めるようになって、もう随分と年数が経つ。
公務の時には『理想の王子様』が崩れることはない上に、彼は一度泣けば後には引きずらないタイプだ。弊害と言えばせいぜい泣いた後しばらくは目元が赤く声が枯れるくらいだが、それも日程調整にすでに組み込まれているし、有事の際には治癒魔術で対処できている。
「そうなのだが、あの子はこう……声が大きいから」
「……まあ、泣くほどに声が大きくなる癖が殿下にはございますね」
「あの子がああいう子だっていうのは城のモノは皆わかってはいるんだが。……どうやら、客人用の離宮にまで声が届いたようでな」
「あぁ……それは」
珍しく言いよどむように告げた王に、サラージュもこめかみを揉んだ。
客人用の離宮は立地的にもサラージュとアレクシスが過ごす宮とは離れている上に、それぞれに防音も兼ねた保護魔術が幾重にもかけられている。
魔術が不正に解除されていないのに離宮まで届いたということは、防音性能の許容レベルを超えてしまったということだ。
(殿下のお声、そんなに大きかったのね)
幼少期から慣らされていたせいか全く気付かなかった。
なるほど、それは対策をとる必要があるだろう。
魔術障壁の改良はもちろんだが、聞かれてしまった以上根本的なところで対処しなければなるまい。
アレクシスは仮にも一国の王太子だ。それも、もともとうつけとして名高いならまだしも、アレクシスの外面は完璧なのが痛い。理想の姿が基本とあらば自然と周囲の判定基準も高くなるというものだ。
そんな青年が甘えた声で婚約者にごろごろと喉を鳴らしたり泣きついている声が来賓の耳に届けば、威厳もなにもあったものではないだろう。サラージュが弱点であると知れ渡るだけならばまだしも、すぐに泣いてしまうほどメンタルが弱いと知られるなんてもってのほかである。
国民にばれる分には「愛嬌がある」で済まされるかもしれないが、来賓がこの国に好意的である保障などどこにもないのだから。
いささか艶を欠いた王の尾が、椅子の端をぱしんと打った。王は感情が読みやすい形質を発現している分、端々の挙動に気を使っているはずなのだが……どうやら気づいていないらしい。
(気が回らないほど困っておられるのでしょうね)
「そなたには何の落ち度もないのだが、あれはそなたにべったりだからな。傍にいては別の方法を見つけようとも思わんだろう。よって、一度距離を取ることで萎れさせたい」
「構いませんけれど……、わたくしが離れる程度でそんなに効果がありますか?」
「ある。絶対にな。『サラージュを返してほしくば泣きつかずに済む方法を編み出せ』で一発よ」
妙に確信に満ちた言葉と共にぐっと王が親指を立てた。いちいち動作が俗っぽい。
だが、仕草こそふざけていてもここで虚言や冗談を言うほど彼も暇ではない。その言葉は事実なのだろう。
「それならば、陛下のご随意のままに。……けれど、婚約破棄となると別の問題が出てまいりましょう?」
なにせ、次代の国王たる王太子と国境の守護者たる辺境伯長女の婚約である。
昨今自由恋愛の機運が高まっているとはいえ、それぞれが国の中で背負う看板が大きすぎる。情だけで結ばれたとしても後から必ずしがらみが生まれる家格同士だ。
下手を踏めば国内はおろか、国外にまで波紋が広がりかねない。矯正のためにそこまでリスクを冒す必要があるだろうか。
懸念を提示すれば、王が「もっともだな」と頷いてから口端を上げた。いたずら小僧のような笑みである。
「何、そなたがするのはフリだけでよい」
「フリ」
「噂とそなたの思わせぶりな発言で一か月は持つだろう。あの子、そなたの言うことはおおよそ素直に信じるしな」
「御自分の後継にとんでもないことを申されますね。否定しませんが」
思い当たる節はあった。アレクシスは立ち居振る舞いこそ完璧だが、ことサラージュに関しては思い込んで一直線に走りがちな性質がある。
王の後継者としてはいささか問題だが、とうのサラージュ自身が傾けずに立てる気満々で、立場を悪用する気がこれっぽっちもないため見過ごされていた性質だ。
からりと王が歯を見せて笑う。
「はっはっは。早々に気付いたならばそれでよいしな」
「長引きそうな時は、いかがいたしますか?」
「その時は余がネタ晴らしを引き受けるとも。三か月程度でよいか?」
それ以上噂が蔓延すれば、火もないのに煙が立ちかねない。そういうことだろう。
サラージュは少し考えて、軽く頷いた。
「さすがの殿下もそこまで鈍くはないでしょうし、充分かと」
この国の王太子にして『太陽の君』と呼ばれる青年である。
常に笑みを絶やさず、民に公平で、仕事にも懸命。
時折抜けているところもあるが、それが親しみやすく、けれども肝心なところで高貴さを忘れない。王家の血に相応しい清廉潔白な人。
陽光をよく弾くハニーブロンドの柔らかな髪とライトグリーンの垂れ目が優し気な、童話から飛び出したような理想の『王子様』。
それが、世間一般における彼の評価だ。
実際、婚約者であるサラージュから見ても、おおむね同意できるものと言えよう。
高位貴族でこういった人柄を持っている人物はたいてい裏があるものだが、彼にはそうした裏表がない。
――なさすぎるので、こういう事態になった。ともいうのだが。
事の起こりは、アレクシスの父である国王の発言だった。
「アレクシスと婚約破棄、してみない?」
「……はい?」
単語の重さとは裏腹に軽い調子で告げられたそれに、サラージュは臣下の礼を取るのも忘れて首を傾げた。
言葉の内容が理解できなかったわけでも、王のあまりの軽さに困惑したわけでもない。この人はいつもこんな感じだ。式典以外では軽い。身内が相手ともなればもはや浮草よりも軽々しい。
サラージュも幼少期から王には親戚のごとく可愛がられていた身だ。もはや見慣れている。国王とサラージュの父は竹馬の友らしく、そう簡単に足を運べる距離ではないはずなのに幼いころの記憶にはたいていこの王がいるくらいには。
その縁で出会ったアレクシスとサラージュは婚約者という関係性を築き上げ、とくにこれまで不和を起こすこともなく仲睦まじく過ごしていた――はずだ。
だというのに、婚約破棄とは。
サラージュ自身には思い当たる節がまるでない。王命と言えど、さすがに理由もなしに告げるのは道義に悖るだろう。
仮にアレクシスの方に問題があったのだとすれば、なおさら。
徐々に剣呑さを帯びていく迫力あるワインレッドの瞳を前に、王はへらりと笑った。
「いやあ、あの子はさ、よくやってくれているんだが……なにかと嫌なことがあるとすぐそなたに泣きつくであろう?」
「それは……そうですね」
脳裏に、涙でぐしゃぐしゃになった婚約者の美麗な顔がよぎった。
アレクシスは、純粋だ。
幼いという意味ではない。王族としての分別もあり、公的な場でおかしな行動をとることもない。社交の場で無知や過剰な無垢を晒すような真似もしない知性も持ち合わせている。
ただ、心根が王族にしては有り得ないほどに透明なまま育った上に、感受性がひどく高いのだ。
柔らかな心は本来傷ついた分だけ捻くれるなり硬質になるなりして自分の身を守ろうとするものだが、彼はそうはなれなかった。
本人は幾度も――時には違法スレスレの魔術まで用いて心を凍らせる術を学ぼうとしたのだが、そのたびにひどく体調を崩し、上手くいくことはなかった。
どうしようもなくなった彼は、ある日泣くようになった。
最も私的な部分を明け渡せる、未来の伴侶であるサラージュの前でのみ子供のように泣き続ける。わんわんと、声をあげて泣き縋る。時にはドレスがダメになることがあるほどに。
たしかに年齢を考えれば眉を顰められかねない絵面だろうが、あくまで私的空間でのみ行われることだ。ストレスの解消が出来ずに心を病まれるよりはずっといい。
だいたい、とサラージュは気まずげに視線を落としながら言葉を返した。
「……今さらです、よね?」
彼の涙を受け止めるようになって、もう随分と年数が経つ。
公務の時には『理想の王子様』が崩れることはない上に、彼は一度泣けば後には引きずらないタイプだ。弊害と言えばせいぜい泣いた後しばらくは目元が赤く声が枯れるくらいだが、それも日程調整にすでに組み込まれているし、有事の際には治癒魔術で対処できている。
「そうなのだが、あの子はこう……声が大きいから」
「……まあ、泣くほどに声が大きくなる癖が殿下にはございますね」
「あの子がああいう子だっていうのは城のモノは皆わかってはいるんだが。……どうやら、客人用の離宮にまで声が届いたようでな」
「あぁ……それは」
珍しく言いよどむように告げた王に、サラージュもこめかみを揉んだ。
客人用の離宮は立地的にもサラージュとアレクシスが過ごす宮とは離れている上に、それぞれに防音も兼ねた保護魔術が幾重にもかけられている。
魔術が不正に解除されていないのに離宮まで届いたということは、防音性能の許容レベルを超えてしまったということだ。
(殿下のお声、そんなに大きかったのね)
幼少期から慣らされていたせいか全く気付かなかった。
なるほど、それは対策をとる必要があるだろう。
魔術障壁の改良はもちろんだが、聞かれてしまった以上根本的なところで対処しなければなるまい。
アレクシスは仮にも一国の王太子だ。それも、もともとうつけとして名高いならまだしも、アレクシスの外面は完璧なのが痛い。理想の姿が基本とあらば自然と周囲の判定基準も高くなるというものだ。
そんな青年が甘えた声で婚約者にごろごろと喉を鳴らしたり泣きついている声が来賓の耳に届けば、威厳もなにもあったものではないだろう。サラージュが弱点であると知れ渡るだけならばまだしも、すぐに泣いてしまうほどメンタルが弱いと知られるなんてもってのほかである。
国民にばれる分には「愛嬌がある」で済まされるかもしれないが、来賓がこの国に好意的である保障などどこにもないのだから。
いささか艶を欠いた王の尾が、椅子の端をぱしんと打った。王は感情が読みやすい形質を発現している分、端々の挙動に気を使っているはずなのだが……どうやら気づいていないらしい。
(気が回らないほど困っておられるのでしょうね)
「そなたには何の落ち度もないのだが、あれはそなたにべったりだからな。傍にいては別の方法を見つけようとも思わんだろう。よって、一度距離を取ることで萎れさせたい」
「構いませんけれど……、わたくしが離れる程度でそんなに効果がありますか?」
「ある。絶対にな。『サラージュを返してほしくば泣きつかずに済む方法を編み出せ』で一発よ」
妙に確信に満ちた言葉と共にぐっと王が親指を立てた。いちいち動作が俗っぽい。
だが、仕草こそふざけていてもここで虚言や冗談を言うほど彼も暇ではない。その言葉は事実なのだろう。
「それならば、陛下のご随意のままに。……けれど、婚約破棄となると別の問題が出てまいりましょう?」
なにせ、次代の国王たる王太子と国境の守護者たる辺境伯長女の婚約である。
昨今自由恋愛の機運が高まっているとはいえ、それぞれが国の中で背負う看板が大きすぎる。情だけで結ばれたとしても後から必ずしがらみが生まれる家格同士だ。
下手を踏めば国内はおろか、国外にまで波紋が広がりかねない。矯正のためにそこまでリスクを冒す必要があるだろうか。
懸念を提示すれば、王が「もっともだな」と頷いてから口端を上げた。いたずら小僧のような笑みである。
「何、そなたがするのはフリだけでよい」
「フリ」
「噂とそなたの思わせぶりな発言で一か月は持つだろう。あの子、そなたの言うことはおおよそ素直に信じるしな」
「御自分の後継にとんでもないことを申されますね。否定しませんが」
思い当たる節はあった。アレクシスは立ち居振る舞いこそ完璧だが、ことサラージュに関しては思い込んで一直線に走りがちな性質がある。
王の後継者としてはいささか問題だが、とうのサラージュ自身が傾けずに立てる気満々で、立場を悪用する気がこれっぽっちもないため見過ごされていた性質だ。
からりと王が歯を見せて笑う。
「はっはっは。早々に気付いたならばそれでよいしな」
「長引きそうな時は、いかがいたしますか?」
「その時は余がネタ晴らしを引き受けるとも。三か月程度でよいか?」
それ以上噂が蔓延すれば、火もないのに煙が立ちかねない。そういうことだろう。
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