上 下
10 / 10
10章

潜入

しおりを挟む
トミーはすでに城の中へ。

俺と爺さんは、城の通用口の近くの茂みに隠れる。

「なあ爺さん、いつになったら来るのかよ?」

「トミーの情報じゃ、あと10分… 朝の7時になったら来るハズじゃ……」

なんたって正門のすぐ近く。

さっきから、ブラックスーツたちや城の関係者が、ぞろぞろ出入りしてやがる。

ホントにうまく入れるのかよ……


トミーの情報によると、搬入のトラックは3台。
1番先頭のトラックが受付をしている間に、最後尾のトラックの荷台に忍び込み、食材搬入の時に厨房から潜入する段取り。


「ホントにトラックは、一旦、通用口の所で止まるのかよ?」

「ああ、止まる… と言うか、止まって貰わんと困る……」

おいおい、困るって……

「なんたって、トミーの情報じゃからな… 若干の間違いはあるかも知れん……」

「ちょ、止まらなかったらどうすんだよ!」

「大丈夫じゃ。今まで、トミーの情報はだいたい合ってるからな……」

だ、だいたい…?

じじい、ふざんけじゃねーぞ!

「だいたいって…… そんな……」

爺さんの自信満々な真剣な眼差しを見て、思わず言葉が止まってしまった。

爺さん、ホントにトミーの事を信用してんだな……

なんか2人が話してると、滅茶苦茶な話しをしてるように思ってたけど、よく考えたら、今までたった2人で色んな苦難を乗り越えて来たんだよな…

トミーは爺さんを尊敬し、爺さんはトミーを可愛がり、お互いに助け合って来たんだろうよ。

じゃないと、あんな天然のトミーなんかを信用出来ないもんな。


根っからの真面目で、気は優しくて力持ち……


確かにそうだよな。


「…き、来たぞ!」

正門に向かってトラックがやって来た。
ちゃんと3台いる。

トラックが正門の前で止まり、運転手が受付を始めた。

「…さあ、ここからが勝負じゃ! 素早く乗り込むんじゃぞ!」

ヤバい!
すんげードキドキしてきた。

「今じゃ! 行くぞ!」

爺さんと一緒に茂みの中から飛び出す。

心臓が飛び出しそうだ……

最後尾のトラックの荷台しか見えてない……

必死に走る……

まだかよ… まだ着かねーのかよ……

たった10mぐらいの距離が100mぐらいに感じる……

息が止まりそうだ……



ドン!



はあ、はあ……

なんとか飛び乗った……



「……ふ~う… 大丈夫か?」

「……はあ、はあ…… なんとか……」

荷台に寝転ぶ2人。

あとは気付かずに出発するのを待つだけだ。

早く!
早く出発してくれ!



ブロロロローン……



数分後、車のエンジンが掛かり、いよいよ城の敷地内へ。



「…入ったのかよ?」

「…ああ、なんとかな。今、厨房に向かっているところじゃろう……」

外の景色が見えないからよくわからない。

「…で、この先はどうするんだったっけ?」

「…トミーが注意を引きつけている間に、城の中に入る……」

そうだった。
トミーの奴、やたら張り切ってたもんな。

僕は男になるんだぁ~! …なんて言ってたし……

頼むぞ。トミー!



車が止まった。
厨房に着いたみたいだ。

荷台のすき間から外の様子を伺う。


……ん?
いねーぞ……


「爺さん、トミーのやつ、いないぞ!」

「そんな事は……」

慌てて爺さんも、すき間から覗く。

「…どうしたんじゃ! 本当にいないぞ……」

厨房の外で門番らしき2人と、搬入業者が話しをしている。

その周りには、誰もいない……

「あ、あいつ、逃げたんじゃ……」

「ば、馬鹿な…… そんな事……」

何か嫌な予感しまくり。

「ほ、本当じゃ…… どこにもおらん……」

いくら探しても、トミーの姿はない。

おい、どうすんだよ!

このまま荷台に乗っかったままかよ!



ヤバい!

厨房に荷物を入れ始めやがった!

こっちの荷台にも来るぞ!


「じ、爺さん!」

「な、なるべく奥に隠れるんじゃ!」

奥に隠れたって、ちっちゃな荷台の上。
すぐ見つかっちまう……


トミー、どこ行ったんだよ!!!



ヤ、ヤバイ!

足音が近づいて来た!!!



「お前、誰だ!」



……なんだ?



「……いやいや、ちょっと…… つまり、なんて言うか……」

……どっかで聞き覚えのある声。

そっと外の様子を見ると、全身黒ずくめの男が、門番と言い合いになってる。

「お前、何者だ? 変な格好しやがって……」

「……だから、ちょっと…… あ! 食材に興味がありましてね……」

「食材…?」

「……食材って言うか…… 料理って言うか……」

「なんだ? 何が言いたいんだ!」

「……とにかく、ちょっと待って欲しい訳ですよ…」

あの、がっしりした体……
間違いなく、トミーだ……

あいつ、何やってんだ?

「お前、何者だ? レッドカードを見せろ!」

「……………」

「お前、怪しいぞ! よし、両手を挙げて、その場にひざまずけ!」

「ちょ、ちょっと…… 銃を向けないで下さいよ… 怪しい者じゃないから……」

「怪しくないだと? それはこっちが決める事だ! さあ、おとなしく両手を挙げて……」


爺さん、どうすんだよ?
トミー、捕まっちまうぜ!

「じ、爺さん……」

「こりゃ、いかんな……」

いやいや、いかんな…じゃなくて……
助けに行かないと……


「……う~う…… う~う……」

…なんだ?
トミーの奴、うなり出したぞ。

「う~…… う~……」

どうしたんだ?
体が震えてるぞ!

「う~…… ウギャーーー!!!」

門番に掴みかかりやがった!

「ウギャギャウギャギャーーー!!!」

こ、こいつ……
投げ飛ばしやがった!

「ぼ~くはおとこ~ か~こぉ~い~い~♪」

こいつ、無茶苦茶だ……
近くにあるもの、片っ端から投げ飛ばし始めやがった。

みんなトミーの周りから逃げ回ってる。

「じ、爺さん! い、いいのかよ?」

「…ふっふ…… トミーの奴、緊張が極限を超えたな……」

爺さん、ニコニコ見てんじゃねーよ!
こんな事したら、すぐに他のやつらが来ちまうじゃねーかよ!

「まあ、とにかく今がチャンスって事じゃの…」

「チャ、チャンス…?」

「さあ、行くぞ!!!」

「……行くって……」

爺さん、荷台から飛び降りて城に向かって走り出しちまった。

「ちょ… 待てよ…」

慌てて付いて行く。


トミーが暴れ回ってるのを横目に、横の扉から城の中に潜入。


「……はあ、はあ… ホントに大丈夫かよ。トミーの奴、完全にぶっ飛んだ顔してたぜ?」

「…大丈夫じゃよ。あいつがこうなるのは初めての事じゃないし……」

し、知ってたのかよ!

「初めてじゃないったって……」

「あいつは気がちっちゃいじゃろ? だから、どうしょうもなくなった時は、ああなるみたいじゃ……」

…にしたって、あんなに変貌するとは……

「まあ、顔はバレてない訳じゃし、あいつの事じゃから、何とか逃げてくれるハズじゃ……」

ホントに大丈夫かよ……

「なんて顔をしとるんじゃ。わしらの目的は、あんたの相棒の救出じゃろうが?」

確かにそうだけどよ……

「じゃあ、そんなにトミーが心配なら戻るか?」

…そ、それは……

「さあ、ここからが難問じゃぞ! 気を引き締めてな!」

「あ…… ああ……」

「しっかり付いて来るんじゃぞ!」

真剣な爺さんの顔を見ると、こっちまで緊張してきちまう……

「さあ行くぞ!」

銃を構えて走る爺さんの後を、必死に付いて行った。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

まっく
2021.08.20 まっく

ありがとーございまっする!
とても嬉しいです。
幼稚な文章ですが
良かったら引き続き
読んで下さいな♪

解除

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

福来博士の憂鬱

九条秋来
SF
福来博士は福来友吉博士をモデルにして。かってにSF的に展開しています。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。