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最終章『画廊寄武等のyouかん』
86.心の変化
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「ふーん……」
あーちゃんはイマトオの挑発的な言葉を気にした様子も見せずに、こちらに目を向ける。
そこには、そんな二人が対峙しているその傍らで腰砕けの状態で落ち込んでいる僕が居た。
「ん! タケト! いつまでそうやってしょげてるのよ? いいかげんに復活してくれない? ねっ!」
僕は顔も上げようともせず、いじけた口調で答える。
「僕に復活する資格なんて無いのさ……」
「ん? なんで?」
「僕は、孤独なブラジャー様のお仲間を手にするチャンスをみすみす見逃してしまった。そんな自分に幻滅したんだ、このまま死を待つべきだろう」
「んー、死を待つっていっても今のタケトはもう不老不死だよ?」
「むう……」
そんな指摘に返す言葉も無い僕に彼女は更に続ける。
「それとも契約解除する? そうすればあたしに生きたまま食べられるなんて苦行は無しにしねるけど?」
「ぐ……他に従者も居ないブラジャー様を一人残し、この世を去るわけにもいかない……」
自分の決意をあっさりと論破され、ふてくされるように膝を抱える僕にあーちゃんは明るい口調で励ますように言った。
「まあ、それでタケトが元気になるならいいんだけどさ、だったらこうしない?」
「なに?」
「二人で旅に出ようよ! うん!」
「僕はもともと引き篭もりの登校拒否男子だ。旅なんて真っ平御免だよ」
「じゃあ、その旅を一緒にしてくれるなら、あたしのブラを奪い取る権利を与えちゃう!」
「なにその権利!?」
即座に反応を示して顔を上げる僕なのだった。
「つまり、あなたはあたしのブラを狙い続け、あたしは自分のブラを守り続ける。そんなスリル満点の旅よ」
「うおぉおおおおぉっっ!! なんと魅力的な旅なんだ!?」
その言葉に僕の生気が蘇ってゆく。どころかまるで巨人の星のように目が燃え上がっていた。(ただその手に握られているのはバットやボールなどではなくブラジャーなのだが……)
僕は既にブラジャー第一の思想に完全に染まっているのだ。
それはもう変えられない確定事項なのだろう。
それはあの幽霊の女の子が最後に残してくれた言葉に忠実に従った結果であるらしい。
だとするならこれも、『これからは自分のために生きてほしい』という、そんな彼女が残した約束を果たしている結果でもあるのだ。
いうなれば、その心の奥底に隠れて未練がましくあの子の事を思い続けているその思考ですら、彼女の意に反している反逆になってしまう。
そういった意味では、イマトオに言われた通り彼女の復讐をしようと思っていた夢の中の自分こそが僕本来の人格なのかもしれない。だとするならまさに面従腹背、あの子にとっても僕自身にとっても、夢の中に出てきた別人格の自分は姑息な裏切り者でしかないと言えよう。
そんな結論に至っていた僕の頭の中に、ふと言葉がよぎった気がした。
――そんな卑屈で卑怯なロクデナシに出来る事はひとつしかないよな。
そんな意識を無視するように僕の口は〝あーちゃん〟に応える。
「……うん」
そうして僕は、燃える瞳で己が手にしていたブラをしばしの間見つめ、滾る自分の心を落ち着かせるように一呼吸してから、彼女に視線を向けた。
「あーちゃん。ごめん」
そう言って頭を下げる。
「え?」
その彼の態度と言葉が理解できずに、戸惑うばかりの彼女に彼は言葉を続ける。
「やっぱり僕は、その物語には付き合えないな」
その時僕は、全ての苦悩から解き放たれているかのような気分に包まれていた。それは傍から見ても変化として感じ取れたのだろうか。
あーちゃんは驚愕に目を見開きながら僕に言う。
「どうしたのタケト……もしかしてタケトを自分の物にするための作戦の話、聞こえてたの!?」
「聞いてたよ!! ってか、この距離で聞こえてない方がおかしいだろ!!」
「いや、そのおかしいのがタケトなんだってば!」
「やっぱそれは無理があるって!!」
「その無理があるところがタケトの魅力じゃない!」
「君の中で僕はどういうキャラ設定なんだよ!?」
「こーゆー設定よ!」
あーちゃんはそう言うと、露出している肩の部分から服の中へ手を突っ込む。そうしたかと思うと、そのまま一気に何かを引き抜いたようだった。
「なんだ?……ううっ!!」
その手には、彼女が身に着けていたのであろうブラジャーが握られていた。それを掲げるようにして言う。
「これをあげるから、全てを捨ててあたしと一緒に来て!」
涙を浮かべてそう嘆願する彼女をみて、僕はおおいに動揺しながら訊ねる。
「その一連の動作でどうやってそのブラを取り出せたんだ!!」
僕の中に沸いた疑問は、彼女の目から零れ落ちそうな涙よりも、ブラの構造についての疑問だった。
そんな、一般的にはろくでもない対応をしている僕に対し、あーちゃんはあーちゃんでたいした気にもしていない様子で返してくる。
「あたしの隠し芸よ。びっくりした? あたしはどんなブラでもすぐに外して取り出せるのよ……じゃなくて、リアクションが違うでしょ!!」
そう、確かにリアクションは間違えているかもしれない。
ブラジャーを交換条件に提示されたならば今の僕なら……。
「はい喜んで!!」
とか言いながら相手の前で跪いて恭順の意を示したり……
とりあえず目の前のそのブラに飛び付いたり……。
そんな行動に出なくとも、「ぐっ!!」とか言いながら迷う心と葛藤してみせたりなど、そんな反応を示すのが自分だった筈だ。
しかし僕は、さも悲しげに言った。
「ごめん、今の僕はもうあの子の残したこのブラジャー様にしか興味は無いんだ」
そう宣言する。
「ウソよ! そんな訳ない!」
「はい嘘です! すんません!!」
……即答してしまった。やっぱりブラ様の影響力は強大だ。だが僕は悟りきった顔で言葉を返す。
「うん、やっぱり僕はこの世の全てのブラジャーを崇拝しているよ。でも、一番はあの子が残したこのブラジャーだけなんだ」
「え……」
そんな僕の言葉に彼女はショックを隠せない様子だった。
あーちゃんはイマトオの挑発的な言葉を気にした様子も見せずに、こちらに目を向ける。
そこには、そんな二人が対峙しているその傍らで腰砕けの状態で落ち込んでいる僕が居た。
「ん! タケト! いつまでそうやってしょげてるのよ? いいかげんに復活してくれない? ねっ!」
僕は顔も上げようともせず、いじけた口調で答える。
「僕に復活する資格なんて無いのさ……」
「ん? なんで?」
「僕は、孤独なブラジャー様のお仲間を手にするチャンスをみすみす見逃してしまった。そんな自分に幻滅したんだ、このまま死を待つべきだろう」
「んー、死を待つっていっても今のタケトはもう不老不死だよ?」
「むう……」
そんな指摘に返す言葉も無い僕に彼女は更に続ける。
「それとも契約解除する? そうすればあたしに生きたまま食べられるなんて苦行は無しにしねるけど?」
「ぐ……他に従者も居ないブラジャー様を一人残し、この世を去るわけにもいかない……」
自分の決意をあっさりと論破され、ふてくされるように膝を抱える僕にあーちゃんは明るい口調で励ますように言った。
「まあ、それでタケトが元気になるならいいんだけどさ、だったらこうしない?」
「なに?」
「二人で旅に出ようよ! うん!」
「僕はもともと引き篭もりの登校拒否男子だ。旅なんて真っ平御免だよ」
「じゃあ、その旅を一緒にしてくれるなら、あたしのブラを奪い取る権利を与えちゃう!」
「なにその権利!?」
即座に反応を示して顔を上げる僕なのだった。
「つまり、あなたはあたしのブラを狙い続け、あたしは自分のブラを守り続ける。そんなスリル満点の旅よ」
「うおぉおおおおぉっっ!! なんと魅力的な旅なんだ!?」
その言葉に僕の生気が蘇ってゆく。どころかまるで巨人の星のように目が燃え上がっていた。(ただその手に握られているのはバットやボールなどではなくブラジャーなのだが……)
僕は既にブラジャー第一の思想に完全に染まっているのだ。
それはもう変えられない確定事項なのだろう。
それはあの幽霊の女の子が最後に残してくれた言葉に忠実に従った結果であるらしい。
だとするならこれも、『これからは自分のために生きてほしい』という、そんな彼女が残した約束を果たしている結果でもあるのだ。
いうなれば、その心の奥底に隠れて未練がましくあの子の事を思い続けているその思考ですら、彼女の意に反している反逆になってしまう。
そういった意味では、イマトオに言われた通り彼女の復讐をしようと思っていた夢の中の自分こそが僕本来の人格なのかもしれない。だとするならまさに面従腹背、あの子にとっても僕自身にとっても、夢の中に出てきた別人格の自分は姑息な裏切り者でしかないと言えよう。
そんな結論に至っていた僕の頭の中に、ふと言葉がよぎった気がした。
――そんな卑屈で卑怯なロクデナシに出来る事はひとつしかないよな。
そんな意識を無視するように僕の口は〝あーちゃん〟に応える。
「……うん」
そうして僕は、燃える瞳で己が手にしていたブラをしばしの間見つめ、滾る自分の心を落ち着かせるように一呼吸してから、彼女に視線を向けた。
「あーちゃん。ごめん」
そう言って頭を下げる。
「え?」
その彼の態度と言葉が理解できずに、戸惑うばかりの彼女に彼は言葉を続ける。
「やっぱり僕は、その物語には付き合えないな」
その時僕は、全ての苦悩から解き放たれているかのような気分に包まれていた。それは傍から見ても変化として感じ取れたのだろうか。
あーちゃんは驚愕に目を見開きながら僕に言う。
「どうしたのタケト……もしかしてタケトを自分の物にするための作戦の話、聞こえてたの!?」
「聞いてたよ!! ってか、この距離で聞こえてない方がおかしいだろ!!」
「いや、そのおかしいのがタケトなんだってば!」
「やっぱそれは無理があるって!!」
「その無理があるところがタケトの魅力じゃない!」
「君の中で僕はどういうキャラ設定なんだよ!?」
「こーゆー設定よ!」
あーちゃんはそう言うと、露出している肩の部分から服の中へ手を突っ込む。そうしたかと思うと、そのまま一気に何かを引き抜いたようだった。
「なんだ?……ううっ!!」
その手には、彼女が身に着けていたのであろうブラジャーが握られていた。それを掲げるようにして言う。
「これをあげるから、全てを捨ててあたしと一緒に来て!」
涙を浮かべてそう嘆願する彼女をみて、僕はおおいに動揺しながら訊ねる。
「その一連の動作でどうやってそのブラを取り出せたんだ!!」
僕の中に沸いた疑問は、彼女の目から零れ落ちそうな涙よりも、ブラの構造についての疑問だった。
そんな、一般的にはろくでもない対応をしている僕に対し、あーちゃんはあーちゃんでたいした気にもしていない様子で返してくる。
「あたしの隠し芸よ。びっくりした? あたしはどんなブラでもすぐに外して取り出せるのよ……じゃなくて、リアクションが違うでしょ!!」
そう、確かにリアクションは間違えているかもしれない。
ブラジャーを交換条件に提示されたならば今の僕なら……。
「はい喜んで!!」
とか言いながら相手の前で跪いて恭順の意を示したり……
とりあえず目の前のそのブラに飛び付いたり……。
そんな行動に出なくとも、「ぐっ!!」とか言いながら迷う心と葛藤してみせたりなど、そんな反応を示すのが自分だった筈だ。
しかし僕は、さも悲しげに言った。
「ごめん、今の僕はもうあの子の残したこのブラジャー様にしか興味は無いんだ」
そう宣言する。
「ウソよ! そんな訳ない!」
「はい嘘です! すんません!!」
……即答してしまった。やっぱりブラ様の影響力は強大だ。だが僕は悟りきった顔で言葉を返す。
「うん、やっぱり僕はこの世の全てのブラジャーを崇拝しているよ。でも、一番はあの子が残したこのブラジャーだけなんだ」
「え……」
そんな僕の言葉に彼女はショックを隠せない様子だった。
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