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第三章『画廊寄武等とYouしょく!』
64.ショックな事実。
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夢の中に現れた彼女。
それは、例え容姿や性格はほぼ同じと言って良いほど似ていたとしても、夢の中の僕、略して〝夢タケト〟にとっては追い求めていた人物とは別人だった。
しかし、そんな彼女とのやり取りをしているうちに、知らず知らずの間にそんな過去の追憶に浸るかのようなやり取りを続けるのだった。
「まあ、夢の中ってのは何でも出来るとはいえ、どこか外の世界から呼び出してしまうなんて、キミには迷惑を掛けてしまったようだな」
「いえあの……。だから、いくら夢の中では何でも有りだとしても、現実世界から人を呼び出してしまうなんて、それは無茶にもほどがあるでしょう?」
そんな、まるで彼女が言いそうなピントのズレている反論に、何故だか調子が上がってきていたらしく、ノリノリで言葉を返す。
「そうかもな。だが今の僕は、ちょっとした理由で普通じゃない力が有るんだ。それが現実世界での意識が無くなっている状態……。表層意識が薄れたこの夢の中という環境のせいで枷が外れているのかもしれない」
初対面の人に対してそれじゃ伝わらないだろうという、そんな説明だったが、僕は神だか悪魔だか分からない謎の存在〝あーちゃん〟との契約によって、彼女の有している超常的な能力が共有されているのだ。
「その力が、意図せずにこんな状況を招いたというのですか……?」
なんだか彼女はそんな説明不足な言葉をすんなりと受け入れていた。もしかすると理解しきれなそうな物事は深く考えられないので、適当に受け入れてスルーしているだけなのかもしれないが……。
「お……おう。そうだ……」
想定では色々と質問受けながら説明していくつもりだったのだろう、そんな予想とは裏腹な会話を続けることになった夢タケトは、もう引き下がれない感じだった。
「ああ、迷惑をかけたようだな。だが君は、目が覚めれば何事も無かったように元の世界に戻れるはずだから、それまで適当に時間を潰して待っていてくれないか?」
「待つって、どれくらいの時間なのでしょうか? 今すぐ帰る方法は無いのですか?」
「まあ、そうしてあげたい所なんだが、悪いが俺はそろそろ行かないと……」
とりあえず答えられない質問を誤魔化しながら話の締めに入ろうとするのだったが、彼女は都合よくそれを受け入れてくれはしなかった。
「人に一方的な迷惑を掛けておいて、その態度は何なのです? こういう場合は普通、お詫びに御馳走でも振る舞って……ではなくて、えーと……」
夢の中の登場人物にそんなことを言われましても……。という気分と共に、ちょっとしたいたずら心が湧いてしまったらしい夢タケトは、ふと、たわいもない意地悪をしてしまう。
「悪いけど僕は食べ物に興味が無い。だからそんな僕の思考から生み出されているであろうこの世界にはたぶん食べ物も存在しないと思うぞ?」
「なんですと!?」
「てか、これまでの人生で外食なんてラーメン屋に試しに一回行ってみたくらいで、他にはどこにも行ったことも無いから例えこの夢の中に外食店が有ったとしても、ほぼ知識ゼロの人間が想像したナンチャッテ料理店しか無いと思うな」
「って、ここはどんな地獄なのですか!?」
彼女は世界の終わりかのような青ざめた表情で膝から崩れ落ちるのだった。
――いや、食べ物が無いってだけでそこまでショックを受けなくても……。
たわいのないいたずら心のつもりが死刑宣告をしてしまったような、そんな罪悪感が芽生えてしまいそうになっていた夢タケトに彼女は言う。
「いや、なんだか人として大事なものが欠けていますよこの世界。というか、この街にしろ車道にしろ、まともな心を持った人間を体現していないですよ、この精神世界」
「そこまで言われてしまうことなのか……。さして飢えていそうにも見えない、そんな元気そうな赤の他人に食べ物をあげないというだけで、人格否定みたいな指摘をされなきゃいけないんだよ」
「ええ。食というものは生きる上で一番大事にしなければならない重要なものなのです。それを疎かにしているということは、他の大事にするべきものもおろそかにしているということでしょう」
「いや……そんなことは無いと思うんだが……」
「では、あなたが大事にしているものとは何ですか? あなたにとって食事よりも重要なものとは?」
「うう……、そう言われてしまうと、特にそんなものも無い気がしてくるな……」
『いやあるだろう、僕には命や心を捧げてやまないブラジャー様というものが!! 何故そう答えない!?』
と、再びその体の主導権を取り戻して代わりに反論しようとしたのだが、そこでふと夢タケトがその時感じていた感情が流れてくる。
――なるほど。僕が出会った玲衣ちゃんは幽霊だったので食事が出来ない体……っていうか、食事をするための体が無い状態だったせいで食べ物関係のやり取りはあまりできなかったけど、生きている普通の状態だとこんなやり取りも有り得たのか……。
そんなことを考えている夢の中の仮の自分を見て考える。
そういえば何かの本で読んだのだが、人は夢を見ることによって記憶や思考を整理しているのだという説があるらしい。
なら、これにもそんな意味があるのだろうかと思えたのだ。
もしかするとこの夢も過去の記憶の整理の一環なのかもしれない。
これもブラ様への絶対的な忠誠と信仰心に目覚め人生観を新たに構築するための心の働きのひとつなのでは。
そう考えると、この夢の中とという荒唐無稽な世界ですら、そこに居る夢タケトが心底望んでいるのであろう相手は現れず、あくまでそっくりさんでしかないというのも頷けるだろう。
ともするとこれは、もしかしたら僕の心の中に残っているかもしれない、そんなブラ様以外のものに対する未練を断ち切るために必要な儀式なのだろう。
そんな結論に至ったのだが、そこで夢タケトは言った。
「いや、俺には有るぞ! なんとしてでもやらなければならないことがな!」
――そうだ、こんな事をしている場合じゃない。俺は本物のあの子に会うんだ!
格好つけたかったのだろうか。何故か一人称が『僕』から『俺』に変わっていた。
まあ、その彼女のそっくりさん相手とのやり取りにテンションが上がっていたのだろう。そんなことを思いながらやり取りを眺める。
「その、やらなければならないこと、というのは何です?」
まだ名前すら聞いていない彼女はそんな質問をするのだが、夢の中の僕は取り合う手間すらも惜しむように言葉少なに答えた。
「まあ言ってみりゃただの人探しだ。どうしても見付けなきゃいけない人が居るんだよ。ってわけで、俺はもう行く。じゃあな」
と、本来の使命に立ち戻った夢タケトは彼女に背を向けたのだが、相手は簡単に逃がしてはくれなかった。
「待ってください。お訊ねしたいのですが、あなたはその人を探しているのですよね?」
「そうだよ? それがどうかしたのか?」
「それなら、こんな夢の中ではなくて、目が覚めてから現実世界のほうで探した方が良いのではないでしょうか?」
――っ!!
相手にそんな意図は無かったのだろうが、その意見は夢タケトの目的意識を完全に破壊しかねない、そんなド直球の正論だった。
それは、例え容姿や性格はほぼ同じと言って良いほど似ていたとしても、夢の中の僕、略して〝夢タケト〟にとっては追い求めていた人物とは別人だった。
しかし、そんな彼女とのやり取りをしているうちに、知らず知らずの間にそんな過去の追憶に浸るかのようなやり取りを続けるのだった。
「まあ、夢の中ってのは何でも出来るとはいえ、どこか外の世界から呼び出してしまうなんて、キミには迷惑を掛けてしまったようだな」
「いえあの……。だから、いくら夢の中では何でも有りだとしても、現実世界から人を呼び出してしまうなんて、それは無茶にもほどがあるでしょう?」
そんな、まるで彼女が言いそうなピントのズレている反論に、何故だか調子が上がってきていたらしく、ノリノリで言葉を返す。
「そうかもな。だが今の僕は、ちょっとした理由で普通じゃない力が有るんだ。それが現実世界での意識が無くなっている状態……。表層意識が薄れたこの夢の中という環境のせいで枷が外れているのかもしれない」
初対面の人に対してそれじゃ伝わらないだろうという、そんな説明だったが、僕は神だか悪魔だか分からない謎の存在〝あーちゃん〟との契約によって、彼女の有している超常的な能力が共有されているのだ。
「その力が、意図せずにこんな状況を招いたというのですか……?」
なんだか彼女はそんな説明不足な言葉をすんなりと受け入れていた。もしかすると理解しきれなそうな物事は深く考えられないので、適当に受け入れてスルーしているだけなのかもしれないが……。
「お……おう。そうだ……」
想定では色々と質問受けながら説明していくつもりだったのだろう、そんな予想とは裏腹な会話を続けることになった夢タケトは、もう引き下がれない感じだった。
「ああ、迷惑をかけたようだな。だが君は、目が覚めれば何事も無かったように元の世界に戻れるはずだから、それまで適当に時間を潰して待っていてくれないか?」
「待つって、どれくらいの時間なのでしょうか? 今すぐ帰る方法は無いのですか?」
「まあ、そうしてあげたい所なんだが、悪いが俺はそろそろ行かないと……」
とりあえず答えられない質問を誤魔化しながら話の締めに入ろうとするのだったが、彼女は都合よくそれを受け入れてくれはしなかった。
「人に一方的な迷惑を掛けておいて、その態度は何なのです? こういう場合は普通、お詫びに御馳走でも振る舞って……ではなくて、えーと……」
夢の中の登場人物にそんなことを言われましても……。という気分と共に、ちょっとしたいたずら心が湧いてしまったらしい夢タケトは、ふと、たわいもない意地悪をしてしまう。
「悪いけど僕は食べ物に興味が無い。だからそんな僕の思考から生み出されているであろうこの世界にはたぶん食べ物も存在しないと思うぞ?」
「なんですと!?」
「てか、これまでの人生で外食なんてラーメン屋に試しに一回行ってみたくらいで、他にはどこにも行ったことも無いから例えこの夢の中に外食店が有ったとしても、ほぼ知識ゼロの人間が想像したナンチャッテ料理店しか無いと思うな」
「って、ここはどんな地獄なのですか!?」
彼女は世界の終わりかのような青ざめた表情で膝から崩れ落ちるのだった。
――いや、食べ物が無いってだけでそこまでショックを受けなくても……。
たわいのないいたずら心のつもりが死刑宣告をしてしまったような、そんな罪悪感が芽生えてしまいそうになっていた夢タケトに彼女は言う。
「いや、なんだか人として大事なものが欠けていますよこの世界。というか、この街にしろ車道にしろ、まともな心を持った人間を体現していないですよ、この精神世界」
「そこまで言われてしまうことなのか……。さして飢えていそうにも見えない、そんな元気そうな赤の他人に食べ物をあげないというだけで、人格否定みたいな指摘をされなきゃいけないんだよ」
「ええ。食というものは生きる上で一番大事にしなければならない重要なものなのです。それを疎かにしているということは、他の大事にするべきものもおろそかにしているということでしょう」
「いや……そんなことは無いと思うんだが……」
「では、あなたが大事にしているものとは何ですか? あなたにとって食事よりも重要なものとは?」
「うう……、そう言われてしまうと、特にそんなものも無い気がしてくるな……」
『いやあるだろう、僕には命や心を捧げてやまないブラジャー様というものが!! 何故そう答えない!?』
と、再びその体の主導権を取り戻して代わりに反論しようとしたのだが、そこでふと夢タケトがその時感じていた感情が流れてくる。
――なるほど。僕が出会った玲衣ちゃんは幽霊だったので食事が出来ない体……っていうか、食事をするための体が無い状態だったせいで食べ物関係のやり取りはあまりできなかったけど、生きている普通の状態だとこんなやり取りも有り得たのか……。
そんなことを考えている夢の中の仮の自分を見て考える。
そういえば何かの本で読んだのだが、人は夢を見ることによって記憶や思考を整理しているのだという説があるらしい。
なら、これにもそんな意味があるのだろうかと思えたのだ。
もしかするとこの夢も過去の記憶の整理の一環なのかもしれない。
これもブラ様への絶対的な忠誠と信仰心に目覚め人生観を新たに構築するための心の働きのひとつなのでは。
そう考えると、この夢の中とという荒唐無稽な世界ですら、そこに居る夢タケトが心底望んでいるのであろう相手は現れず、あくまでそっくりさんでしかないというのも頷けるだろう。
ともするとこれは、もしかしたら僕の心の中に残っているかもしれない、そんなブラ様以外のものに対する未練を断ち切るために必要な儀式なのだろう。
そんな結論に至ったのだが、そこで夢タケトは言った。
「いや、俺には有るぞ! なんとしてでもやらなければならないことがな!」
――そうだ、こんな事をしている場合じゃない。俺は本物のあの子に会うんだ!
格好つけたかったのだろうか。何故か一人称が『僕』から『俺』に変わっていた。
まあ、その彼女のそっくりさん相手とのやり取りにテンションが上がっていたのだろう。そんなことを思いながらやり取りを眺める。
「その、やらなければならないこと、というのは何です?」
まだ名前すら聞いていない彼女はそんな質問をするのだが、夢の中の僕は取り合う手間すらも惜しむように言葉少なに答えた。
「まあ言ってみりゃただの人探しだ。どうしても見付けなきゃいけない人が居るんだよ。ってわけで、俺はもう行く。じゃあな」
と、本来の使命に立ち戻った夢タケトは彼女に背を向けたのだが、相手は簡単に逃がしてはくれなかった。
「待ってください。お訊ねしたいのですが、あなたはその人を探しているのですよね?」
「そうだよ? それがどうかしたのか?」
「それなら、こんな夢の中ではなくて、目が覚めてから現実世界のほうで探した方が良いのではないでしょうか?」
――っ!!
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