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第二章 『画廊寄武等とyouじん!』
46.心変わりの顛末
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次の瞬間。
僕はくるりと回れ右をしていた。
――あれ……なんだそれ?
――何故だ! 君が戦えと願ってくれなくたって俺は戦うし、勝てと言うのなら勝ってもみせる。君が言ってくれたのなら奇跡だって起こしてみせるのに!
――なのに君は俺にそれをさせてはくれないというのか!?
そんな心の声も次第に消えてゆき、僕の思考はまるで寝ぼけていた状態から正気に返るかのように切り替わってゆく。
『あのポシェットの開け方を探し出して、その中に封印されている御神体を開放すると、僕はそう誓ったじゃないか! こんなところで命を懸けてる場合じゃないんだ!!』
そんな思考に囚われていた僕の思考には、既にそれを約束したはずの誰かの記憶はもう消えていた。
そこで相手に向かって行こうとしていた行為には何の意味も見いだせなくなっていたのだ。
『あんなのは、一般人でしかない僕の手に負える相手ではない!』
ましてや自分は兄弟喧嘩すらした事も無い非力な一人っ子だ。そんな僕が生き残る可能性なんてのはゼロだ。
ならば戦いを挑むふりをして、相手の意表をついて逃げた方がまだ生き残る可能性が有る気がした。
そんな判断をして、その場から駆け出した僕の中には、この場から逃げ去ろうという以外の思考が割り込める隙間はもうなかった。
なので背を向けた瞬間、その背後から『旦那、あぶねぇ!』とか。
『な、何ぃっ!?』とか、そんな声が聞こえた気がしても振り返りはしなかった。
更にその直後、何かが地面に突き刺さったかのような、そんな音がしてもそれを確認すらしない。
『こ、これは……あの女神のロングソード……』
『さっき下半身が空に蹴り上げた剣が今になって落ちてきたってか? こりゃあまるで、自分を使えとでも言ってるみてえなタイミングだ、迷惑だなぁ……』
そんな声が聞こえてきたが罠だとしか思えなかった。
まさか、そんな都合の良すぎる奇跡などが起きるわけも無い。確認することすら無意味だ。
その判断は正しい筈だ。それを証明するように追撃が遅れているし、何なら意表を突かれて呆然と立ちつくしている仮面の男の気配を感じる。
ついでに言えば、魔方陣に取り込まれている筈の女神さんの体の破片や、ロングソードまでがズッコケているような、そんな気配がした気もするが、それはさすがに気のせいだろう。
僕はそんな背後でのリアクションを気に掛ける余裕も無いまま、ただ全力で逃げ出すのみだった。
そうして、敷地を塞ぐように張られていた立ち入り禁止の黄色いテープをくぐって、ようやくその敷地から道路へと出ようとした所で、地を蹴ろうとした足が空をきった。
「あ、あれ……?」
そこからいくら足を動かしても、それが地面を蹴る感触が感じ取れない。
不思議に思い視線を落すと、足より先に何やら胸のあたりにある異物が目に入った。
――あれ……胸から何か……生えて……いる?
「ぐ……ほっ……」
どうやら僕は、先ほどのアリアさんと同じように、背後から心臓を貫かれていたらしい。
ただアリアさんとは違い僕は平気では居られなかった。それを認識した次の瞬間には、どこが痛みの発生源なのかすらも認識できないほど、ただただ痛みの奔流の中にあった。
僕の体は胸を一突きに貫かれてそのまま持ち上げられているようで、そのせいでいくら動かそうとこの足は地面に付くこともなしに、ただただ虚しく空気を蹴るだけの状態になってしまっているのだ。
仮面の男は、話の流れを無視して逃げ出した僕の行動に意表を付かれながらも、本来の目的を見失う事は無かったようだ。
その魔族や死神はアリアさんとの戦いでこそ手も足も出ないイメージだったが、それは相手の強さが桁違いだっただけで、本来は人間など相手にもなるべくもない、そんな存在なのだ。
そんな認識と同時に、それまで動いていた手足が力を失ったようにだらりと垂れさがる。
『なんて事だ……僕はあのポシェットに封印されている御神体を開放するという、その使命を果たす事もできないままここで終わるのか……』
視界も意識も闇の中に落ちてゆく中……もう声も出せなくなっていた口で、僕はそんな言葉を呟く。
死を迎えようとしているのに、僕の思考にあったのは部屋に残したポシェットの事だけだった。
そこには非業の死を迎えた少女のことも、友の仇を取れずに終わった女神様も無く。
そんな最低人間の最後としてはまさにふさわしい、そんなろくでもない最後だと思えた。
第二章『画廊寄武等とYouじん』終わり。
なんだか、更に面倒な展開になったまま、第三章『画廊寄武等とYouしょく!』へと続く。
僕はくるりと回れ右をしていた。
――あれ……なんだそれ?
――何故だ! 君が戦えと願ってくれなくたって俺は戦うし、勝てと言うのなら勝ってもみせる。君が言ってくれたのなら奇跡だって起こしてみせるのに!
――なのに君は俺にそれをさせてはくれないというのか!?
そんな心の声も次第に消えてゆき、僕の思考はまるで寝ぼけていた状態から正気に返るかのように切り替わってゆく。
『あのポシェットの開け方を探し出して、その中に封印されている御神体を開放すると、僕はそう誓ったじゃないか! こんなところで命を懸けてる場合じゃないんだ!!』
そんな思考に囚われていた僕の思考には、既にそれを約束したはずの誰かの記憶はもう消えていた。
そこで相手に向かって行こうとしていた行為には何の意味も見いだせなくなっていたのだ。
『あんなのは、一般人でしかない僕の手に負える相手ではない!』
ましてや自分は兄弟喧嘩すらした事も無い非力な一人っ子だ。そんな僕が生き残る可能性なんてのはゼロだ。
ならば戦いを挑むふりをして、相手の意表をついて逃げた方がまだ生き残る可能性が有る気がした。
そんな判断をして、その場から駆け出した僕の中には、この場から逃げ去ろうという以外の思考が割り込める隙間はもうなかった。
なので背を向けた瞬間、その背後から『旦那、あぶねぇ!』とか。
『な、何ぃっ!?』とか、そんな声が聞こえた気がしても振り返りはしなかった。
更にその直後、何かが地面に突き刺さったかのような、そんな音がしてもそれを確認すらしない。
『こ、これは……あの女神のロングソード……』
『さっき下半身が空に蹴り上げた剣が今になって落ちてきたってか? こりゃあまるで、自分を使えとでも言ってるみてえなタイミングだ、迷惑だなぁ……』
そんな声が聞こえてきたが罠だとしか思えなかった。
まさか、そんな都合の良すぎる奇跡などが起きるわけも無い。確認することすら無意味だ。
その判断は正しい筈だ。それを証明するように追撃が遅れているし、何なら意表を突かれて呆然と立ちつくしている仮面の男の気配を感じる。
ついでに言えば、魔方陣に取り込まれている筈の女神さんの体の破片や、ロングソードまでがズッコケているような、そんな気配がした気もするが、それはさすがに気のせいだろう。
僕はそんな背後でのリアクションを気に掛ける余裕も無いまま、ただ全力で逃げ出すのみだった。
そうして、敷地を塞ぐように張られていた立ち入り禁止の黄色いテープをくぐって、ようやくその敷地から道路へと出ようとした所で、地を蹴ろうとした足が空をきった。
「あ、あれ……?」
そこからいくら足を動かしても、それが地面を蹴る感触が感じ取れない。
不思議に思い視線を落すと、足より先に何やら胸のあたりにある異物が目に入った。
――あれ……胸から何か……生えて……いる?
「ぐ……ほっ……」
どうやら僕は、先ほどのアリアさんと同じように、背後から心臓を貫かれていたらしい。
ただアリアさんとは違い僕は平気では居られなかった。それを認識した次の瞬間には、どこが痛みの発生源なのかすらも認識できないほど、ただただ痛みの奔流の中にあった。
僕の体は胸を一突きに貫かれてそのまま持ち上げられているようで、そのせいでいくら動かそうとこの足は地面に付くこともなしに、ただただ虚しく空気を蹴るだけの状態になってしまっているのだ。
仮面の男は、話の流れを無視して逃げ出した僕の行動に意表を付かれながらも、本来の目的を見失う事は無かったようだ。
その魔族や死神はアリアさんとの戦いでこそ手も足も出ないイメージだったが、それは相手の強さが桁違いだっただけで、本来は人間など相手にもなるべくもない、そんな存在なのだ。
そんな認識と同時に、それまで動いていた手足が力を失ったようにだらりと垂れさがる。
『なんて事だ……僕はあのポシェットに封印されている御神体を開放するという、その使命を果たす事もできないままここで終わるのか……』
視界も意識も闇の中に落ちてゆく中……もう声も出せなくなっていた口で、僕はそんな言葉を呟く。
死を迎えようとしているのに、僕の思考にあったのは部屋に残したポシェットの事だけだった。
そこには非業の死を迎えた少女のことも、友の仇を取れずに終わった女神様も無く。
そんな最低人間の最後としてはまさにふさわしい、そんなろくでもない最後だと思えた。
第二章『画廊寄武等とYouじん』終わり。
なんだか、更に面倒な展開になったまま、第三章『画廊寄武等とYouしょく!』へと続く。
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