画廊寄武等とyouれい!

須江まさのり

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第二章 『画廊寄武等とyouじん!』

44.死神達の対処

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「あ……」

 そんな間の抜けた声と共に。

 皮肉にも神憑りともいえる奇跡が重なった結果、既に上半身しかない状態だったアリアさんの体はさらに縦に真っ二つに切り裂かれてしまうのだった。

 そんな自らの起こした成果を目の当たりにした仮面の男は、その結果を信じられないという感じで呆然とそれを見おろしている。

 とはいえそれも一瞬だった。

「おおおおっっ!!」

 突然訪れた逆転着に、魔族の男は己を鼓舞するように雄叫びを上げると、真っ二つになった女神さんの上半身に対し、更に刃を振るい下ろす。

 胸から上を縦から更に半身にされてしまいながらもアリアさんは、その攻撃すら掴み取ろうとしているように、指でつまむような動きを見せたのだが。
 顔面を真っ二つにされていたせいで距離感が測れない状態だったのだろう。
 その手の動きは空振りして、更にその腕ごと分断されてしまう。

「そ、そんな……」

 こうなると頼みの綱は、まだ動ける下半身の方だったが、こちらも我に返った死神の呪術で構成された無数の光の刃によって切り裂かれていた。

 その攻撃によって、アリアさんの下半身が蹴り飛ばしたロングソードはコントロールが効かずに、敵の存在しないほぼ真上へと空高く蹴り上げられる。

 死神はその、行く先も見えないほど上空に蹴り上げられたロングソードを見て、「どんだけのパワーなんだよ……」と呆れながらも己の放った攻撃でバラバラに刻まれて地面にばらまかれた肉片に呆けたような視線を移した。

「退避するぞ!」

「ん? ああ分かってるよ……」

 仮面の男のその叫びで再び我に返った死神は、アリアさんの残骸を警戒するようにしながらその場を離れようとしたが、そこで動きを止めた。

「旦那、ちょっと待て!」

「なんだ!? これまでの化け物ぶりからすると霊体になっても何をして来るか分からない厄介な相手だぞ!!」

 そう叫びながらその場から離れようとする仮面の男に、死神は言う。

「この化け物女神の魂、バラバラになった肉片に分散したままだ……」

「どういう意味だ?」

 仮面の男の質問に対し、死神は冷や汗を流しつつも引きつった笑みを浮かべながら言う。

「普通、神族ってのは肉体に対する執着が薄いんだが、こいつは珍しく己の肉体に執着するタイプのようだって事さ」

 死神はそう言うと、いつもの迷惑な口癖を返す時間も惜しむかのように一心不乱に何やら長い呪文を唱え始めた。

 それと同時に、死神の前に光る大きな魔法陣が現れる。

 その魔方陣が発する光に包まれた彼女の遺骸が、ゆっくりとその魔法陣の中へと集まってゆくのを見て、仮面の男は自らの考えを纏めるかのように呟いた。

「確かに……その可能性は有るか……」

 その時の僕は突然の展開に呆然としていてそんな会話はろくに耳に入ってもいなかったし、もしちゃんと聞いていた所で意味は分からなかったのだろうが、後に知った話ではこういうことらしい。

 というのも普通、神という存在は肉体にあまり執着はしない。というか、肉体など無くとも魂だけでも霊的な物質として存在もできるし、何ならその霊体を疑似的に実体化させることも可能だ。
 つまり普通は致命的な損害を受けた場合、その肉体を放棄して霊体になるものなのだが、稀に神でも己の肉体に執着する場合がある。

 しかもアリアさんはその体が二つに引き裂かれても普通に戦えるほどの生命力がある肉体を持っていた。

 なので体がバラバラに切り裂かれた状態からでも肉体を再生することが可能なため、通常ならば放棄すべき肉体にそれぞれ分散された魂を残したままの状態で留まっていたのだろう。

 更に言えば、そんな危機に陥った事など皆無だったと言っていいアリアさんは、霊体という形をとった経験もほとんど無かったため、霊体化に手間取る可能性は充分にあり得ると、死神はそう判断したのだった。

 それを察した仮面の男は、退避行動を一時解きながら魔方陣を操作している死神に訊ねる。

「どうだ行けそうなのか? 無理ならば撤退するぞ!」

 仮面の男もさすがにここに至っては無口なキャラを演じていられないのだろう。そんな問いに対し、死神のほうも普段のふざけた口調も忘れて答えを返す。

「ああ。とりあえずこの化物女神の残骸にばらけている状態で封印してみる! まあ、イチかバチかだな。あの化け物っぷりからすると、ここから再逆転されるってのもあり得そうだけどな……」

 そんな言葉を聞いて、魔族の男は即座に決断を下した。

「その術を成し遂げる以外に我らの生きる道は無い……か。このまま放っておけば、この女神は復活してしまうだろう。そうなれば、我々などはどこに逃げても追い詰められる羽目になるからな!」

「まったく迷惑な話だ! なら旦那はクソ女神の体の破片を集めてこの魔方陣に投げ入れてもらおうか?」

「了解だ!」

 答えながら魔族の男は、死神が発動させた魔方陣の範囲外に落ちていた細切れになっている女神の体の残骸を拾い集め始めると、次々とその光を放つ輪の中へ投げ込んでいく。

 対する死神は必死の形相で呪術的な呪文を唱え続けている。己のありったけの精力を絞り出そうとしている様子が、はた目からもありありと想像できた。

「う……うわぁ……」

 僕はそこで重大な判断ミスをしてしまっていた。

 もし、僕がその場から逃れる可能性があったとするならば、それはこの時以外には無かっただろう。

 だがあまりにもな急展開に思考が停止していた僕は、ただそんな様子を呆然と立ち尽くしているだけだった。

 そうしている間にもアリアさんのバラバラにされた体が次々とその魔方陣に投げ込まれてゆく。

「これで全てか……」

 そんな作業を終え、ここから先は死神の領分となったのだろう。

 仮面の悪魔は何もする事が無くなったのか、取りこぼしがないかを確認するように周りを見回す。

「む……」

 そんな余裕が生まれた仮面の男と僕の視線が合った。

 この突然の逆転劇を眺めながら呆然と突っ立っている無能な男子に、ようやく気付いたようだ。

「我々は生き延びねばならない。これからも悪事を為すために。ならば我はこの目撃者である少年を消すという悪事を為そう」

 独り言のようにそう呟きながら、自分の方へと歩いて来る異形の仮面の男を、僕は真っ白な思考のままでただ眺めているだけだった……。
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