恋する魔法のエトセトラ さくらドロップス

ノリック

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タイムスリップ

中学生へ

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   中学生へ

 目を瞑った後に開けると、そこは中学校の校舎の中だった。外は桜の花が咲いていて、桜の花が咲くその時期に来た事が分かる。

「今日、いよいよ中学校の卒業式ね」

 牡丹が私に話しかけて、(ああそうか、中学校の卒業式の時に来たのか)と私はタイムスリップした時が何処か分かる。桜の妖精さん、キュリオネールはその力をまた発揮して、私をこの時間に連れてきてくれたのだ。

(中学生の時も、春楓に振り向いてもらえるようにしなくちゃね)

 私は自分に言い聞かせる。この時間の中でも、ここに来た目的、春楓に振り向いてもらうという事に、私は全力を注がなければならない。それが、ここに来た意味だから。



「仰げば尊し、我が師の恩……」

 仰げば尊しの歌が体育館に響く。中学三年生の卒業式が始まっている。私は再び中学三年生の卒業式をしている事をちょっと不思議に感じながら臨んでいた。

(そういえば、春楓はこの後制服の第二ボタンを下級生にあげるんだっけ……)

 と私は思い出していた。(それについては、大丈夫かしらね)と思いながらも、楓やその下級生の事を考えると、春楓への想いが強くて胸がキュッとする。とにかく、春楓に想いを告げないと。



 卒業式が終わると、私達八人はカラオケ店に打ち上げをしに繰り出した。(そうね、カラオケ店に行ったのよね)と私は過去を振り返る。

「さくら、さくら、ただ舞い落ちる……」

 健大なんかや皆が春の曲を楽しそうに歌う。私はカラオケ店で、春楓に話しかけた。

「春楓、卒業おめでとう」

「んん、さくら。さくらも卒業おめでとう」

 そして(中学校を卒業した年は、春楓と五年置きに会う年よね)と私は確認すると、その日の打ち上げを懐かしむ様に楽しむ。街の公園で、春楓に告白するんだ。



 春休み、春楓からのLINEを一日、一日と待っていた私は、春楓からのLINEが入ると、スマホに飛びついて春楓からのメッセージを見た。



春楓 さくら、五年前の約束、覚えてる?



さくら 覚えてるわ!二人の家の近くの街の公園で四月五日に会うって話ね



春楓 うん、そう!また四月五日午後二時に会えるかな?



 私は春楓からやっぱり誘ってもらえてたのね、と知っていたけれど、その事が嬉しくなって返事をした。



さくら うん、大丈夫。四月五日、午後二時に会いましょう!



春楓 うん、じゃあその日に街の公園で会おう!



 四月五日、午後二時に街の公園で春楓と待ち合わせをした日。私は(中学生の時も……頑張るわ)と自分を鼓舞する。私が着くと春楓はもう私を待っていた。

「春楓、こんにちは」

「さくら、こんにちは」

 街の公園の桜は綺麗に満開で、清々しい春の陽気の中、一番大きな桜の前のベンチに座って話をする。

 そして、私達は小一時間ほど話をした。中学生の時の事を思い出して、私は春楓に自身の想いを告げるチャンスを待つ。

「桜、綺麗だね。さくら」

 その春楓のドキッとする言葉を聞いて、そういえば春楓そんな事言ったわねと思い出しながら、私はここぞとばかりに春楓に言った。

「春楓、私、春楓の事がやっぱり好き」

 私は自身の春楓への告白に、精一杯を込める。その春楓は、嬉しそうに微笑んだけれど何処か困っている様にも見えた。

「さくら、俺も……でも、その答えは、あの日から、二十年後だから……」

 その春楓の言葉を再び聞いた私は「それって何?」と春楓に聞いたけれど、春楓は「時が来たら、必ずさくらに言うよ」とだけ……答えていた。春楓のその意味深な発言に、私は何だろうとヤキモキした。

「じゃあ、さくら、今日はこれで。またね」

 春楓がそう言って、その場を離れようとする。私は「春楓……」と名を呼んだけれど、春楓は行ってしまった。



「さくらちゃん、さくらちゃん」

 私が街の公園の桜の前のベンチで佇んでいると、桜の妖精さん、キュリオネールが私に話しかけていた。

「さくらちゃん、時間を巡る次の旅が来たから、また時空を飛ぶよ」

 桜の妖精さんのその言葉で、私は(次は、高校生ね……)と思うと、こう桜の妖精さんに告げる。

「桜の妖精さん、次は高校生、私が十八歳の時。でも次は桜の時期じゃなくて、私が大学受験をする前、志望校を決める時に行ってくれるかしら」

 私のその頼みに、「分かった、やってみるよ」と桜の妖精さんは快諾してくれた。

「ラジカル、ラルカル、ラリルルルルルルル!さくらちゃんが高校生の時に、レッツゴー!」

 桜の妖精さんの魔法の様な呪文が再び唱えられる。私は自分のへその辺りがキュッと鳴るのを感じると、時空の海を越えて、時間旅行に旅立っていく。

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