ダーク・プリンセス

ノリック

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「始まり、そして旅立ち」1

奪還6

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* * *



「――なんじゃなんじゃ、侵入者じゃと!」

 ――黒球研究室。エニグマ博士は〈研究所〉に流れる侵入者の警戒警報に驚いていた。研究の邪魔になると邪険になる。

「侵入者など排除してしまえ!……まったく、黒衣の男などは何をやっているんじゃ」

「私なら、ここにいる」

「――こ、黒衣の男!」

 侵入者を気にする博士が黒衣の男の名を口にすると、もう既にどこからか黒衣の男が黒球研究室の中に入ってきていた。黒衣の男は腕を組み足を軽く曲げ壁にもたれかかっている。

「侵入者の排除という事なら任せておけ。今は研究所の奥への扉を閉めているが、もしもの時は私が参戦する」

「むぅ」

「その娘だが、娘の体には気を付けておくのだな」

 黒衣の男はそう言うと、研究所のどこかに消えていった。

 エニグマ博士はミシェルを見ると、何か思うところがあるのか一度黙ってから、喋り出した。

「――こんな娘のどこにあの黒球を動かす要素があるのかのう……ふふふ、ふっふふっふふふ」

 エニグマ博士はそう言って、不気味に笑い出すと研究用の資料を読み漁り始める――。



* * *



「これで何とかする!私に任せておくんだ!」

 ジョニーは背負っていたバッグからなんと機械に使う工具を取り出す。すると要塞の中の奥の扉に使われている部品を解体し始める。

「扉の部品を解体して、この扉を開ける!」

 ジョニーは熱心に扉の部品を解体している。ビルとニッシュは呆気にとられていたが、やがて感心し始めた。

「――そんなことが!」

「まぁ、さすが父ちゃんだな」

 ジョニーは手や体を動かし工具を使いながら「これはこう、これはこう」などと言って部品を解体する。

やがてジョニーは解体が扉のコンピューターの心臓部に達するとこう呟いた。

「プログラムキーが設定されているようだな。パスワードが設定されている」

 ジョニーはそう言ってしばらく考えると、ビルとニッシュにあることを言う。

「パスワードを攻略するのは時間がかかるから、扉の部品をもっと直接解体して……」

 ジョニーはそこまで喋って金属製のレイピアを手に取り、こう言った。

「このレイピアで直接扉を叩いて開ける!」

 ビルとニッシュはジョニーの言った事に唾を飲み込んだ。この人の言う事は大胆でいて、挑戦的だが頼りになる。

 ジョニーは扉を開閉するための箇所を直接工具で解体できるだけ解体した。そして金属製のレイピアを手に取る。

「ビル、ニッシュ、離れていなさい。ここは私一人で何とかする!」

 ジョニーはそう言うと、呼吸を整え、「コォオォー!」と息を吸って吐き、レイピアをぶんぶんと回すと右手に持ち構え出した。そして、

「セイヤァ!」

 と扉に向かって両手も使い、金属製のレイピアに全身の力を加えて強烈な突きを放つ。

 ゴォオォォォォン!

 扉は金属の鈍い轟音を立てる。それはまるで研究所の隅々まで響くようだ。

「凹んだ!」

「行けぇ、父ちゃん!」

 扉はジョニーの強烈な突きによって、真ん中に大きな凹みができる。ジョニーは更に突きを入れて、扉を開けようと試みる。

「ハァッ!ハァッ!セイヤァ!」

 ゴォオォォン!ゴォオォォン!ゴォオォォォォン!

 ジョニーは扉に向け強烈な突きの連撃を浴びせる、そして、

 グワァアァァァァンッッ!ゴンッ!

 扉はその頑丈な金属が疲労に耐えられなくなると、ジョニーが突きを放つ方向に倒れていった。ジョニーはついに扉を壊して開けてしまった。

「よし、開いた!」

「凄い!」

「よっしゃー!さすがだぜ!」

「ここからは、また闘いが始まるかもしれない。だが、必ずミシェルを助けるぞ!」

 ジョニーの声掛けにニッシュとビルが「はい!」「おう!」と答える。

 三人は研究所の奥に歩みを進める。
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