ダーク・プリンセス

「始まり、そして旅立ち」1

ミシェルのデート8

　サントバーグの公園の時計は十二時を過ぎていて、私達は食事系のカートンショップに立ち寄った。

「ミシェル、何食べる？」

「そうね、サントバーグの公園のカートンショップなら、サントバーグサンドなんてどうかしら」

「そうだな、やっぱり定番が一番だ！」

「ふふ、じゃあそうしましょう！」

　サントバーグサンドはサントバーグの公園の名物サンドウィッチ。母なるセントシュタイン山脈からなるサントモス山、そしてシュリク河が流れる私達の街レオンハルト。その私達の土地から採れる野菜や魚、肉をふんだんに使ったのがサントバーグサンドで、家庭用からカートンショップの本格サンド、さらにウィングエッジの商店街のレストランでは超本格的なサンドウィッチが味わえる。まさにサントバーグサンドは私達レオンハルト市民のソウルフードなのだ。

　私達はサントバーグの公園の一角のサントバーグサンド屋さんに訪れた。

「はい、いらっしゃい。お兄ちゃん、お嬢ちゃん。ご注文は？」

若いお姉さん店員さんが迎えてくれると、私達は相談して注文を入れた。

「定番のスタンダードサントバーグサンドに、あとアイスコーヒーをください。どちらも二つずつ」

「はい、ご注文承りました！少々お待ちを……」

　お姉さん店員さんはサントバーグサンドを作り始めた。魚介類や肉、野菜などをふんだんに使っている。火を入れる段階になると、香ばしく食欲をそそる香りが辺りを包んで、私はお腹がとても空いてきた。

「ニッシュ、楽しみね」

「ああ、とってもいい香りだな」

　やがてお姉さん店員さんが手を止めると、「出来上がりました～」とサントバーグサンドとアイスコーヒーを手渡してくれた。

「二人分で八百ガルになります」

「俺が払うよ」

　ニッシュが精算を済ませてくれるというので、私は「ありがとう、ニッシュ」とニッシュの好意に甘えた。

　そして私達は近くのトレビの噴水のレンガの上に座ると、「いただきま～す」とサントバーグサンドにかぶりついた。

　豚肉と、スモークサーモンと、玉葱やレタス、人参などの野菜が口の中でぶわっとあふれ出して、口いっぱいにトマトとマヨネーズのソースが絶妙なハーモニーを醸し出す。一噛み、二噛みするとまた口いっぱいにソースの味が広がって、具材がまた口の中で踊り出す。

「う～ん、ニッシュ、おいし～い」

「ホントだ。サントバーグサンドにして正解だったな」

　私達はサントバーグサンドを心ゆくまで味わい、美味しい美味しいと最後までペロッと食べた。そしてアイスコーヒーをゴクリと飲み込んだ。

「あ～、美味しかった！――ふふっ、素敵な休日ね」

　私はニッシュとこうしてデートしていることになんだか感慨深く嬉しくなった。ニッシュもなんだかリラックスして嬉しそうな顔をしているので私は尚の事満足げに微笑んだ。

「じゃあニッシュ、これからはどうするのかな」

「ああ、ウィングエッジの商店街に行って、ショッピング――ウィンドウショッピングになると思うけど――行ってみようか！」

「そうね！じゃあそうしましょう！」

　私達は、ウィングエッジの商店街へと歩いていった。