ダーク・プリンセス

ノリック

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「始まり、そして旅立ち」1

ミシェル8

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「コホン。ミシェル、ちょっといいかい」

 父さんがわざとらしく咳払いをする。わたしは父の呼びかけの内容が分かっていても軽くだけ返事をした。

「何、父さん?」

「―――あーー、あのだな、それだ。ニッシュのことなんだがな。彼のことは、私も知っている。なかなかいい青年じゃないか。レイピア術への熱意も、なかなかのものの様だし……しかしな、ミシェル。お前はまだ高等学校生で、年も十七だ。彼とは、節度ある交際をしていかんとな―――それからだがな……」

「まぁ、あなた、それくらいにして。ミシェルが困るじゃないの」

「しかしなぁ、お前……こういう事は」

「まぁまぁ、あなた。ミシェルも子供じゃないんだから、ニッシュに愛想を付かされることはないでしょう」

 母さんの余裕の大人の対応に父さんは面食らって、

「――って、お前。そういう事じゃなくて」

 後手後手に回る父さん。大丈夫、ニッシュなら真面目な好青年なのに。私だって不安がない訳ではないけれど、大丈夫よ。

「私は大丈夫よ。ニッシュとは、節度ある交際をするわ」

 私はニッシュならちゃんとする自信があるのだ。

「おお!!さすが、私の娘だ!――――って、ミシェル!そういう事でもなくてな………父さんとしてはだな。お前はまだ高等学校生なんだから、誰かと付き合うとか、そういう事はだな。何というか、あーー」

「――って、父さんさぁ。父さんと母さんも、付き合いだしたのは大学生の頃なんだろ?だったらさぁ」

 しどろもどろになる父さんにビルがもっともな事を言う。父さんだって若いうちに母さんと付き合いだしてるのにね、うん。

「大学生と高等学校生とではだな―――かなりの違いがあるというか―――何というか……、―――とにかくだ!!ミシェル!ニッシュとは、仲良くしていくのはいいが―――これまで通りというか――、……友達として付き合うことは出来んのかね?」

「何だよ?それ?」

 ビルの?マークが飛び出してきた発言に父さんは自分の気持ちが整理できないようで、

「ビルは黙ってなさい」

「ひえ」

「はいはい、それ位にして―――だから、あなた、ミシェルももう子供じゃないんだから、ニッシュと付き合うことは認めてくださいね」

 母さんがお開きとばかりに話に終止符を打ってきた。

「お、お前。でも――――それは……」

 父さんが哀願したけれど、母は父を〈キッ〉と睨んだ。父はうなだれて、ナイフとフォークをそっとテーブルに置いた。

「……ごちそう様…………食べ終わったから、レイピア術の鍛錬を―――する前に―――ちょっと機械に触れてくる……」

「はい、あまり夢中になりすぎないでくださいね」

「ふふふ――あの×××を、×××して………しかし、ミシェルのことは気になるが………母さんの言うことも……。ハ、ハハハ……、―――そうだ!私には機械がある!あれを、こうして、そうして……ふ、ふふふ………ふふふふふ!」

「……あ~あ。父さん、スイッチ入っちゃったよ」

 父さんと母さんは普段から仲が良いのだけれど、この時(父の〈機械いじり〉が始まる時)は母さんはいつも面食らってしまう……誰にでも、人に素直に自慢できないことはあるわよね……父さん……

「ああなると、しばらくは戻ってこられないわね―――ああ、私の素敵なあの人が、また……」

「父さんがああなる時は、何かあるときだから。今回も、私の事を心配してくれたからだし……」

「あの人の事は放っておけば、またいつも通りになるわよ―――それよりミシェル、今日はニッシュとのデートの日よね?彼とはどんな感じでいるの?」

 母さんの私のボーイフレンドへの興味の発言。私はニッシュの事を思い浮かべて少し笑みを浮かべて言った。

「―――そうね。ニッシュは優しいし、思いやりがあるし……一緒にいて楽しいわ――さっき電話で話した時も、私を笑わせてくれたし――」

「そう、あなたは快活で明るいし、レイピア術もやっていて社交性もあるわ。ミシェルならきっといい恋愛ができるわ。頑張ってね、ミシェル!」

「うん!ありがとう、母さん!―――ごちそうさま。私、自分の部屋に行って、出掛ける準備してくるね!」

「ふふ、ミシェル。うまくやるのよ!」
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