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第二章 悪魔退治
46:神胎の儀(3) *sideジェフリー
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産後、エルザはミュリエルとともに屋根裏部屋に押し込められた。
発狂した夫人から守るためだったらしいが、小さな窓しかない、ほとんど光の届かない場所で赤子と二人きり、どう生きていけば良いと言うのか。
手の中には誰にも歓迎されていない赤子。
ふと鏡を見れば、そこにいるのは主人の心を傷つけたくせに、きちんと役目を果たせなかった自分。産後の肥立も悪く、まともに働くことすらもできない役立たずな自分。
優しいエルザは、誰かを責めることができなかったのだろう。エルザは孤独と戦いながら、自分を責め続けた。
そうしてミュリエルが3歳になる頃、限界を迎えた彼女は自ら首を吊った。
大好きな奥様への謝罪と愛を綴った手紙を残して。
「発見したのは、母だった。心が落ち着いたからと久しぶりにエルザの様子を見に行った日だった。手紙には、ミュリエルに母と呼ばれた事を喜んでしまった自分に嫌気がさした書かれていたそうだ。母はあの日、完全に壊れた」
ヘレナが思っていた以上に夫人はエルザのことを大事に思っていたらしい。
「母は怒りを向ける先を探した」
夫を愛している夫人には侯爵を責めることができない。
かといって、エルザに苦行を強いていた自覚もあるから死んだ彼女を責めることもできない。
儀式を強要した義母は夫人にとっては絶対に逆らうことのできない人で……。
夫人の思考が『悪いのは女に生まれたミュリエルだ』という結論に辿り着くのに、そう時間はかからなかった。
「母は憎しみの全てを幼いミュリエルに向けた」
夫人はミュリエルが笑うと怒るらしい。お前のせいで私たちはこんなにも不幸なのに、と。なぜお前は幸せそうにしているのだ、と。
理不尽極まりない。八つ当たりも良いところだ。
だが夫人はミュリエルを責め立てる自分を異常だとは思っていない。
「はじめはミュリエルを庇う使用人もいたんだ。みんな、子どもには罪がないことをよく理解していたし、何よりミュリエルはエルザにとてもよく似ていたから。守ってやれなかったエルザの代わりに、ミュリエルだけでも守りたかったのだと思う。……けれどみんながミュリエルを庇えば庇うほど、母の彼女に対する仕打ちは酷くなる一方で」
守ってもより酷くなるのなら守らなければいいのかとも思えたが、守らなければ幼いミュリエルはきっとすぐに死んでしまう。
考えた末、使用人たちは夫人からミュリエルを守るため、自分たちが率先してミュリエルをいじめるようになった。
「みんなは母の前でミュリエルを使用人のように扱った。まだ言葉も覚束ないミュリエルに野菜の皮剥きや掃除、洗濯を命じた。母は周囲も自分と同じようにミュリエルを疎んでいるのだと知ると、満たされたように笑った。みんなに雑に扱われるミュリエルの姿は母を満足させた。やがて母はミュリエルをいじめる役目を人に任せるようになった。いつの間にか、ミュリエルを雑に扱うことで彼女を母から遠ざけることができるようになった」
「そう、だったのか……」
「君はこれが日常だったのかと聞いたな?日常という程ではなかったよ。屋敷のみんなが、ミュリエルと母が顔を合わせないよう気をつけてくれていたから。でも父が気まぐれにミュリエルに構う時があって。その時は母は手がつけられないほどに荒れた。私たちは痛ぶられるミュリエルを見守ることしかできなかった」
助ければ、その分だけ夫人はミュリエルを殴る。だから使用人たちはその様子を見守りつつ、ベストなタイミングで『奥様のお身体が心配なので』と言って止めに入っていたらしい。
「私がミュリエルを助けようとしたらメイド長に止められた。それがミュリエルのためだからと言われた。やがて私もみんなと同じように、ミュリエルに対してキツイ態度を取るようになった。ミュリエルがある程度の仕事を覚えたら、私の専属の使用人にして、母の前でわかりやすくこき使った。それが、ミュリエルを守ることにつながるのだと言われたから、従っていた。…………でも、私は……、私はやっぱり幼い妹をそんな風に扱うなんて耐えられなくて。だから時々、こっそりパンやお菓子を与えたりした。『嫌いだなんて嘘だよ』、『愚図だなんて思ってないよ』、『私はミュリエルのことが大好きだよ、愛しているよ』って、言い訳するみたいにミュリエルに優しくした」
それは明らかな贖罪。罪悪感からの行動。けれど……。
「ミュリエルは優しくしたら笑うんだ!本当に幸せそうに笑うんだよ!エルザみたいにっ!!」
ヘレナは叫んだ。その叫びは悲痛なものだった。
「……ミュリエルは母の目がないところでだけ優しくする私を慕った。エルザが母を慕っていたように、私を神を崇めるみたいに!!………それが、しんどかった。苦しかったんだ」
ヘレナは自嘲するように笑みをこぼした。
そうして時は過ぎ、俺との婚約が決まったころ。奇跡的に夫人が妊娠した。産まれたのは男の子だった。
当時、夫人にお祝いを送ったこと日のことを俺は覚えている。お祝いを受け取った夫人はとても柔らかな笑顔を浮かべて、ありがとうと言ってくれた。
あの頃の俺は、まさか夫人がそんな状態だなんて思いもしなかった。
「その頃には母のミュリエルに対する態度も落ち着いていて、あの頃が多分一番幸せだった」
母の目を気にせず、ミュリエルを連れて外に行けた。
今まで屋敷に閉じ込めていたミュリエルに外の世界を見せてやれた。
「ジェフリーもミュリエルを可愛がってくれたから、つい甘えてしまった。今では悪かったと思ってる。無神経だった」
目をキラキラと輝かせて、ウサギみたいぴょんぴょんと跳ねて、外の世界を楽しむミュリエル。そんな彼女が可愛くて、ついデートのたびに連れてきてしまったとヘレナは言う。
「それは……、別にいいよ。俺も三人で出かけるのは楽しかったし」
「ありがとう、ジェフリー。そう言ってもらえると救われる」
「……ああ」
本当は俺と二人きりじゃ嫌なのかと思って、少し凹んだりしていたのだけれど。今それを言うのは違うだろうから、俺は言葉を飲み込んだ。
「君のことは嫌いじゃなかった。友人としては好ましいとすら思っていた。だけど、どうしても子どもを作るということには抵抗があって……。結婚がだんだんと現実味を帯びてきた頃、何となくその不安を母に漏らしたら、母はこう言ったんだ」
---ミュリエルを器にすればいい、と。
「エルザと同じ目に遭えばいいと。母の目は本気だった。母はまだミュリエルを許してはいなかったんだ」
「……最悪だな」
「私は怖くなった。もちろん、君があのふざけた儀式を行うような人ではないことはわかっているし、公爵夫人も閣下もそんなことを強要するような人じゃないのもわかってる。でも私はどうしても怖くて……」
一生、腹違いの妹を恨み続ける母。
男児が産めなければ、自分も同じ道を辿るのだろうか。
こんな風に何の罪もない子を一生恨み続けるような、恐ろしい女になってしまうのだろうか。
そう思うと怖くなった。
「わかってはいるんだ。私は母ではないし、同じような人生を歩むと決まっているわけでもないということは。けど、私の体には母の血が流れているわけで、ミュリエルみたいに天使の血は流れていないわけで……。私は変わりたくはないけれど、いつか君を愛するようになって、いつか自分もあんな風になってしまうかもしれないと思うだけで、吐き気がした。結婚が怖くて怖くて仕方がなかった」
「そう、だったのか……」
ヘレナの抱えていたものは思っていたよりもずっと重たいものだった。
俺はいつも勝気で元気なヘレナに惹かれていたが、もしかするとそれは、彼女がそうあろうと努力していた姿だったのかもしれない。
「私がそうやって悩んでいる時に、庭師が声をかけてくれたんだ。もうたくさん頑張ったのだから、逃げていいのではないかと」
その庭師は雇われてまだ日が浅かったのに、ヘレナの笑顔の裏に隠された苦悩にいち早く気がついた。ヘレナは初めて自分の心の叫びに気づいてくれた彼に心を救われたと言う。
俺の頭には一瞬、結婚式直前で平民の男に靡いたチェスター男爵令嬢の顔が浮かんだ。
婚約破棄後にやったことは許されないが、もしかすると、彼女にも彼女なりの理由があったのだろうか。
「ミュリエルの不幸を望む母がいるなら、私が逃げてもミュリエルがオーレンドルフ家に嫁ぐことになる。それはミュリエルにとっても良いことなのではないか。そう言われた」
ブラッドレイ家にいる以上、ミュリエルは一生夫人に捕らわれたままだ。もしかすると、とんでもない男の元に嫁がされる未来だってあるかもしれない。
だからヘレナは、自分の代わりにミュリエルがオーレンドルフ家に嫁ぐ方が良いと思ったらしい。
婚家でどんな扱いを受けようと、一人でブラッドレイ家に残すよりはマシだと。
「何にも考えてなかった。今逃げたら、その後どうなるかなんて簡単に想像できたはずなのに、考えなかった。ただただ現実から目を逸らしたくて、逃げ出したくて。それっぽい理由で自分を納得させただけだった」
自分はミュリエルを見捨てたのだと、ヘレナは涙を流した。
発狂した夫人から守るためだったらしいが、小さな窓しかない、ほとんど光の届かない場所で赤子と二人きり、どう生きていけば良いと言うのか。
手の中には誰にも歓迎されていない赤子。
ふと鏡を見れば、そこにいるのは主人の心を傷つけたくせに、きちんと役目を果たせなかった自分。産後の肥立も悪く、まともに働くことすらもできない役立たずな自分。
優しいエルザは、誰かを責めることができなかったのだろう。エルザは孤独と戦いながら、自分を責め続けた。
そうしてミュリエルが3歳になる頃、限界を迎えた彼女は自ら首を吊った。
大好きな奥様への謝罪と愛を綴った手紙を残して。
「発見したのは、母だった。心が落ち着いたからと久しぶりにエルザの様子を見に行った日だった。手紙には、ミュリエルに母と呼ばれた事を喜んでしまった自分に嫌気がさした書かれていたそうだ。母はあの日、完全に壊れた」
ヘレナが思っていた以上に夫人はエルザのことを大事に思っていたらしい。
「母は怒りを向ける先を探した」
夫を愛している夫人には侯爵を責めることができない。
かといって、エルザに苦行を強いていた自覚もあるから死んだ彼女を責めることもできない。
儀式を強要した義母は夫人にとっては絶対に逆らうことのできない人で……。
夫人の思考が『悪いのは女に生まれたミュリエルだ』という結論に辿り着くのに、そう時間はかからなかった。
「母は憎しみの全てを幼いミュリエルに向けた」
夫人はミュリエルが笑うと怒るらしい。お前のせいで私たちはこんなにも不幸なのに、と。なぜお前は幸せそうにしているのだ、と。
理不尽極まりない。八つ当たりも良いところだ。
だが夫人はミュリエルを責め立てる自分を異常だとは思っていない。
「はじめはミュリエルを庇う使用人もいたんだ。みんな、子どもには罪がないことをよく理解していたし、何よりミュリエルはエルザにとてもよく似ていたから。守ってやれなかったエルザの代わりに、ミュリエルだけでも守りたかったのだと思う。……けれどみんながミュリエルを庇えば庇うほど、母の彼女に対する仕打ちは酷くなる一方で」
守ってもより酷くなるのなら守らなければいいのかとも思えたが、守らなければ幼いミュリエルはきっとすぐに死んでしまう。
考えた末、使用人たちは夫人からミュリエルを守るため、自分たちが率先してミュリエルをいじめるようになった。
「みんなは母の前でミュリエルを使用人のように扱った。まだ言葉も覚束ないミュリエルに野菜の皮剥きや掃除、洗濯を命じた。母は周囲も自分と同じようにミュリエルを疎んでいるのだと知ると、満たされたように笑った。みんなに雑に扱われるミュリエルの姿は母を満足させた。やがて母はミュリエルをいじめる役目を人に任せるようになった。いつの間にか、ミュリエルを雑に扱うことで彼女を母から遠ざけることができるようになった」
「そう、だったのか……」
「君はこれが日常だったのかと聞いたな?日常という程ではなかったよ。屋敷のみんなが、ミュリエルと母が顔を合わせないよう気をつけてくれていたから。でも父が気まぐれにミュリエルに構う時があって。その時は母は手がつけられないほどに荒れた。私たちは痛ぶられるミュリエルを見守ることしかできなかった」
助ければ、その分だけ夫人はミュリエルを殴る。だから使用人たちはその様子を見守りつつ、ベストなタイミングで『奥様のお身体が心配なので』と言って止めに入っていたらしい。
「私がミュリエルを助けようとしたらメイド長に止められた。それがミュリエルのためだからと言われた。やがて私もみんなと同じように、ミュリエルに対してキツイ態度を取るようになった。ミュリエルがある程度の仕事を覚えたら、私の専属の使用人にして、母の前でわかりやすくこき使った。それが、ミュリエルを守ることにつながるのだと言われたから、従っていた。…………でも、私は……、私はやっぱり幼い妹をそんな風に扱うなんて耐えられなくて。だから時々、こっそりパンやお菓子を与えたりした。『嫌いだなんて嘘だよ』、『愚図だなんて思ってないよ』、『私はミュリエルのことが大好きだよ、愛しているよ』って、言い訳するみたいにミュリエルに優しくした」
それは明らかな贖罪。罪悪感からの行動。けれど……。
「ミュリエルは優しくしたら笑うんだ!本当に幸せそうに笑うんだよ!エルザみたいにっ!!」
ヘレナは叫んだ。その叫びは悲痛なものだった。
「……ミュリエルは母の目がないところでだけ優しくする私を慕った。エルザが母を慕っていたように、私を神を崇めるみたいに!!………それが、しんどかった。苦しかったんだ」
ヘレナは自嘲するように笑みをこぼした。
そうして時は過ぎ、俺との婚約が決まったころ。奇跡的に夫人が妊娠した。産まれたのは男の子だった。
当時、夫人にお祝いを送ったこと日のことを俺は覚えている。お祝いを受け取った夫人はとても柔らかな笑顔を浮かべて、ありがとうと言ってくれた。
あの頃の俺は、まさか夫人がそんな状態だなんて思いもしなかった。
「その頃には母のミュリエルに対する態度も落ち着いていて、あの頃が多分一番幸せだった」
母の目を気にせず、ミュリエルを連れて外に行けた。
今まで屋敷に閉じ込めていたミュリエルに外の世界を見せてやれた。
「ジェフリーもミュリエルを可愛がってくれたから、つい甘えてしまった。今では悪かったと思ってる。無神経だった」
目をキラキラと輝かせて、ウサギみたいぴょんぴょんと跳ねて、外の世界を楽しむミュリエル。そんな彼女が可愛くて、ついデートのたびに連れてきてしまったとヘレナは言う。
「それは……、別にいいよ。俺も三人で出かけるのは楽しかったし」
「ありがとう、ジェフリー。そう言ってもらえると救われる」
「……ああ」
本当は俺と二人きりじゃ嫌なのかと思って、少し凹んだりしていたのだけれど。今それを言うのは違うだろうから、俺は言葉を飲み込んだ。
「君のことは嫌いじゃなかった。友人としては好ましいとすら思っていた。だけど、どうしても子どもを作るということには抵抗があって……。結婚がだんだんと現実味を帯びてきた頃、何となくその不安を母に漏らしたら、母はこう言ったんだ」
---ミュリエルを器にすればいい、と。
「エルザと同じ目に遭えばいいと。母の目は本気だった。母はまだミュリエルを許してはいなかったんだ」
「……最悪だな」
「私は怖くなった。もちろん、君があのふざけた儀式を行うような人ではないことはわかっているし、公爵夫人も閣下もそんなことを強要するような人じゃないのもわかってる。でも私はどうしても怖くて……」
一生、腹違いの妹を恨み続ける母。
男児が産めなければ、自分も同じ道を辿るのだろうか。
こんな風に何の罪もない子を一生恨み続けるような、恐ろしい女になってしまうのだろうか。
そう思うと怖くなった。
「わかってはいるんだ。私は母ではないし、同じような人生を歩むと決まっているわけでもないということは。けど、私の体には母の血が流れているわけで、ミュリエルみたいに天使の血は流れていないわけで……。私は変わりたくはないけれど、いつか君を愛するようになって、いつか自分もあんな風になってしまうかもしれないと思うだけで、吐き気がした。結婚が怖くて怖くて仕方がなかった」
「そう、だったのか……」
ヘレナの抱えていたものは思っていたよりもずっと重たいものだった。
俺はいつも勝気で元気なヘレナに惹かれていたが、もしかするとそれは、彼女がそうあろうと努力していた姿だったのかもしれない。
「私がそうやって悩んでいる時に、庭師が声をかけてくれたんだ。もうたくさん頑張ったのだから、逃げていいのではないかと」
その庭師は雇われてまだ日が浅かったのに、ヘレナの笑顔の裏に隠された苦悩にいち早く気がついた。ヘレナは初めて自分の心の叫びに気づいてくれた彼に心を救われたと言う。
俺の頭には一瞬、結婚式直前で平民の男に靡いたチェスター男爵令嬢の顔が浮かんだ。
婚約破棄後にやったことは許されないが、もしかすると、彼女にも彼女なりの理由があったのだろうか。
「ミュリエルの不幸を望む母がいるなら、私が逃げてもミュリエルがオーレンドルフ家に嫁ぐことになる。それはミュリエルにとっても良いことなのではないか。そう言われた」
ブラッドレイ家にいる以上、ミュリエルは一生夫人に捕らわれたままだ。もしかすると、とんでもない男の元に嫁がされる未来だってあるかもしれない。
だからヘレナは、自分の代わりにミュリエルがオーレンドルフ家に嫁ぐ方が良いと思ったらしい。
婚家でどんな扱いを受けようと、一人でブラッドレイ家に残すよりはマシだと。
「何にも考えてなかった。今逃げたら、その後どうなるかなんて簡単に想像できたはずなのに、考えなかった。ただただ現実から目を逸らしたくて、逃げ出したくて。それっぽい理由で自分を納得させただけだった」
自分はミュリエルを見捨てたのだと、ヘレナは涙を流した。
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