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41:期待していたから(3)
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「嘘だ」
好きと告げられたジェレミーの答えは、その一言だった。
リリアンは拳を握りしめ、ニコッと微笑む。
「ぶっ飛ばすわよ?」
「だって!だって…….、恋愛初心者のリリアンがそんなサラッと告白なんてできるけないし……」
「なんと失礼な」
「リリアンの告白はもう少し、言葉を詰まらせながら、頬を染めて恥ずかしそうに『好き』って言って、その後は布団に潜り込んで悶絶してるはず……と言うか、それを期待していた……」
「よーし、わかった。ぶっ飛ばされたいのね」
確かに自分でも思っていたよりはサラッと言えたが、内心は心臓が壊れそうなほどにうるさく鳴っているし、気を抜けば布団に潜り込みたいくらいには恥ずかしいと思っている。
なのにこの男はそれを嘘だと言う。なんと腹立たしいことか。
リリアンは指を鳴らし、肩を回した。完全に戦闘モードに突入である。
「まあ、私も貴方からのプロポーズを冗談で処理しようとしたから人のことは言えないんだけれどもね?それでもやっぱり、嘘だと言われたら腹が立つわね」
「……嘘じゃないなら、何なの?」
「嘘じゃないなら本当ってことでしょうが!私はジェレミーが好きなの!大好きなの!だから、ジェレミーと結婚するの!」
「……本当に?」
「本当にっ!」
「……本当の本当に?」
「本当の本当によっ!私はジェレミーのことが大好きですっ!貴方に恋してますっ!……もうっ!いい加減信じてよおおお!!」
顔を真っ赤にしたリリアンはジェレミーの襟元を掴み、絞め殺さんとする勢いで前後に乱暴に振った。
照れ隠しとしては些か暴力的である。
だがジェレミーは大きく目を見開き、呆然とされるがままに前後に首を揺らしていた。
「リリアンが、俺のことを、好き……?ただの好きじゃなくて……大好き?恋?恋の好き?」
「ちょ……、何回も言わないで。恥ずかしいからぁ!」
「好きなの?どこが?俺なんかのどこが好きなの?」
「全部よ!その笑うと可愛いところ端正なお顔も、帝国のために磨いた剣の腕前も、ブラコンなところも、聡明なところも、嫉妬深くて卑屈なところも、押しつぶされそうなほどの重い愛を向けてくるところも、全部好きよ!」
「即答かよ……」
「即答したら悪いのかっ!言っておきますけどね、こんなに誰かにドキドキした事なんて、私の人生で一度もなかったんだからね!?ジェレミーが最初で最後なんだからね!?」
「最初で、最後……?」
「そうよ!最初で最後よ!」
リリアンは肩で息をしながら、盛大に口を滑らせる。
最初がジェレミーで最後がジェレミーなら、それはつまり、リリアンの恋心は全てジェレミーのものということだ。
意識しているのか、それとも無自覚なのか。
嬉しいことばかり言うリリアンに、ジェレミーは内側からどんどん体が熱くなるのを感じた。
「俺も好きだよ、リリー」
「……うん」
「キスして良い?」
「……お、お好きにどうぞ」
許可を得たジェレミーは自分の襟元を掴んでいたリリアンの手を取り、指を絡ませた。
そして彼女を抱き寄せ、額に、頬に、口付ける。
彼が触れた部分が、何だかくすぐったくて、リリアンはギュッと瞳を閉じた。
すると、自然とジェレミーの唇がリリアンのそれに優しく触れる。
「ごめんね」
「何が?」
「酷いことをしようとした。酷いことを言った」
「いいよ。気にしてない」
「ありがとう」
「うん」
「愛してる。誰よりも君を愛しているよ、リリー」
ジェレミーは彼女をキツく抱きしめた。
泣いているのか、声は少し震えている。
「私もよ。愛してるわ、ジェレミー」
リリアンも彼を抱きしめ返した。
二人だけの空間に、雲の隙間から温かい光が差し込む。
その光はまるで彼らを祝福しているように思えた。
たとえ壁が凹んでいようと、壁紙が剥がれ落ち、瓦礫がそこらへんに転がっていようとも、その空間はとても神秘的で、幸せに満ちていた。
好きと告げられたジェレミーの答えは、その一言だった。
リリアンは拳を握りしめ、ニコッと微笑む。
「ぶっ飛ばすわよ?」
「だって!だって…….、恋愛初心者のリリアンがそんなサラッと告白なんてできるけないし……」
「なんと失礼な」
「リリアンの告白はもう少し、言葉を詰まらせながら、頬を染めて恥ずかしそうに『好き』って言って、その後は布団に潜り込んで悶絶してるはず……と言うか、それを期待していた……」
「よーし、わかった。ぶっ飛ばされたいのね」
確かに自分でも思っていたよりはサラッと言えたが、内心は心臓が壊れそうなほどにうるさく鳴っているし、気を抜けば布団に潜り込みたいくらいには恥ずかしいと思っている。
なのにこの男はそれを嘘だと言う。なんと腹立たしいことか。
リリアンは指を鳴らし、肩を回した。完全に戦闘モードに突入である。
「まあ、私も貴方からのプロポーズを冗談で処理しようとしたから人のことは言えないんだけれどもね?それでもやっぱり、嘘だと言われたら腹が立つわね」
「……嘘じゃないなら、何なの?」
「嘘じゃないなら本当ってことでしょうが!私はジェレミーが好きなの!大好きなの!だから、ジェレミーと結婚するの!」
「……本当に?」
「本当にっ!」
「……本当の本当に?」
「本当の本当によっ!私はジェレミーのことが大好きですっ!貴方に恋してますっ!……もうっ!いい加減信じてよおおお!!」
顔を真っ赤にしたリリアンはジェレミーの襟元を掴み、絞め殺さんとする勢いで前後に乱暴に振った。
照れ隠しとしては些か暴力的である。
だがジェレミーは大きく目を見開き、呆然とされるがままに前後に首を揺らしていた。
「リリアンが、俺のことを、好き……?ただの好きじゃなくて……大好き?恋?恋の好き?」
「ちょ……、何回も言わないで。恥ずかしいからぁ!」
「好きなの?どこが?俺なんかのどこが好きなの?」
「全部よ!その笑うと可愛いところ端正なお顔も、帝国のために磨いた剣の腕前も、ブラコンなところも、聡明なところも、嫉妬深くて卑屈なところも、押しつぶされそうなほどの重い愛を向けてくるところも、全部好きよ!」
「即答かよ……」
「即答したら悪いのかっ!言っておきますけどね、こんなに誰かにドキドキした事なんて、私の人生で一度もなかったんだからね!?ジェレミーが最初で最後なんだからね!?」
「最初で、最後……?」
「そうよ!最初で最後よ!」
リリアンは肩で息をしながら、盛大に口を滑らせる。
最初がジェレミーで最後がジェレミーなら、それはつまり、リリアンの恋心は全てジェレミーのものということだ。
意識しているのか、それとも無自覚なのか。
嬉しいことばかり言うリリアンに、ジェレミーは内側からどんどん体が熱くなるのを感じた。
「俺も好きだよ、リリー」
「……うん」
「キスして良い?」
「……お、お好きにどうぞ」
許可を得たジェレミーは自分の襟元を掴んでいたリリアンの手を取り、指を絡ませた。
そして彼女を抱き寄せ、額に、頬に、口付ける。
彼が触れた部分が、何だかくすぐったくて、リリアンはギュッと瞳を閉じた。
すると、自然とジェレミーの唇がリリアンのそれに優しく触れる。
「ごめんね」
「何が?」
「酷いことをしようとした。酷いことを言った」
「いいよ。気にしてない」
「ありがとう」
「うん」
「愛してる。誰よりも君を愛しているよ、リリー」
ジェレミーは彼女をキツく抱きしめた。
泣いているのか、声は少し震えている。
「私もよ。愛してるわ、ジェレミー」
リリアンも彼を抱きしめ返した。
二人だけの空間に、雲の隙間から温かい光が差し込む。
その光はまるで彼らを祝福しているように思えた。
たとえ壁が凹んでいようと、壁紙が剥がれ落ち、瓦礫がそこらへんに転がっていようとも、その空間はとても神秘的で、幸せに満ちていた。
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