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元々、リリアン・ハイネと二人の皇子との婚約は皇家のわがままだ。ハイネ公爵家との関係を強化し、最近力をつけている貴族たちの牽制と国防の重要な部分を担う魔法師たちを従わせるためのもの。この婚姻でハイネ家にもリリアンにも特段大きな利益はない。
だから多分、リリアンがもうこれ以上振り回されたくないとジェレミーとの婚約解消を強く主張すれば、公爵家と良好な関係を築きたい皇帝は首を縦に振るだろう。
だが、一つだけ。いくら彼女が結婚したくないと言おうとも、結婚せざるを得ない状況に持って行く方法がある。
ジェレミーはそれを狙ってリリアンを寝室に連れ込んだ。
ジェレミーに組み敷かれた彼女は彼の腕の中から抜けようとするが、手首を押さえつけられ、びくともしない。
「俺の子が出来れば、リリアンは俺と結婚するしかなくなるね?」
そう言うジェレミーの瞳に光はなく、口元は弧を描くのに、眉は苦しそうに歪んでいた。
「……」
彼が何をしようとしているのかを察し、リリアンは脳の中でプチっと何かが弾けたような音を聞いた。
そして急に抵抗するの止め、静かにゆっくりと息を吐き、低く重い声で言葉を紡いだ。
「……ねえ。それ、普通に最低だよ」
「知ってるよ」
「知ってるならやめなさい。人の道に外れる事だわ」
「だって、もうこれしか方法がないんだ。仕方がないだろう」
「何が仕方がないのよ。婦女暴行を働く理由に仕方がない事なんてないのよ」
「でも今日、君を俺だけのものにしないと、君はきっと兄上のところへ戻ってしまう……」
「私はヨハネス殿下の元に行くつもりなんてないって言ってるでしょう?」
「じゃあ俺を選んでくれるのか?そんなわけないだろ。俺は兄上とは違って何の価値もない。俺は皇室の汚点だ」
ジェレミーは悲痛な表情を浮かべてリリアンのドレスの裾からの中に手を滑らせる。
太ももに触れたその手の冷たさに、リリアンは顔を歪めた。
今の彼は冷静ではない。焦りと劣等感で卑屈になり、どんな言葉も聞き入れようとはしない。
きっと今、ヨハネスのところに戻るつもりなんて微塵もないと言っても、あなたが好きだと言っても彼は信じないだろう。
自分が最低なことをしようとしている自覚はあるのに、そうする事でしたリリアンを手に入れる事ができないと思っている。
「……っざけんなよ」
リリアンは目を閉じ、大きなため息をこぼした。
そして無詠唱で術を編み、体内に流れる膨大な魔力を一気に放出した。
小さな爆発音とともに、ジェレミーは後方5メートルの壁まで吹き飛ばされる。
咄嗟に受け身を取り、無傷なところが流石だ。
リリアンはゆっくりとベッドから起き上がると、指を鳴らした。
すると、ジェレミーの周りで無数の白い光の玉が小さく弾けた。
それにジェレミーが気を取られている一瞬の隙に、リリアンは一気に間合いを詰め、彼を壁際に追い込み、壁に両手をついて封じ込める。
少しばかり攻撃性は高いが、いわゆる壁ドンというやつだ。
ジェレミーは苦笑いを浮かべて、両手を上げた。
「……」
「その手は何?」
「降参」
「貴方なら反撃できるでしょ?」
「本気のリリアンを相手にするなら、俺も本気を出さなきゃいけなくなる。君を傷つけたくはない」
「そう」
「というか、正直言って本気出しても敵うかどうか微妙だ。無詠唱なんて上級の魔法師でもできる人少ないぞ?兄上の婚約者になってから魔法を使う機会もなかっただろうに。どうして進化してるのさ……」
「ハイネ公爵家の一員だもの。たとえ出動がなくとも鍛錬は怠りません」
「流石はハイネ公爵令嬢だな」
「その鍛錬の成果かしらね?実は私、最近新しい魔法を習得したのよ」
「…………へ?」
「卑屈な王子の劣等感を浄化する魔法よっ!」
そう言うと、リリアンは本当に浄化魔法の術式を編んだ。
ジェレミーの目を隠し、手のひらに魔力を込める。
浄化の魔法師の魔力は暖かくて優しい。
だがこれは対魔獣用の術であり、人体には毒である。
ちなみにどのくらい毒かというと、1週間ほど生死の境を彷徨うくらい。
皇族に対してそんな危険な魔法を使おうとする彼女にジェレミーは焦った。
「ま、待って待って待って!ごめん!謝るから!それは洒落にならないって!いくらハイネ家の娘でもいくら俺が不義の第二皇子でも、さすがに殺したら極刑だから!」
「大丈夫。死なない程度に調整するわ。ちょっとおいたが過ぎる婚約者を教育するだけよ」
「それ、絶対大丈夫じゃないやつだろ!?ほんと、ほんとごめんって!悪かった!俺が悪かったから!もうしないから!」
「じゃあ、私の話をちゃんと聞いてくれる?」
「聞く!聞くから!」
ジェレミーは自分の目を塞ぐリリアンの手を掴み、慌てて引き剥がした。
すると、視界が開けると同時に、今度は唇を塞がれる。
突然のことに思考が追いつかず、ジェレミーは大きく目を見開いた。
ジッとこちらを見るリリアンと目が合う。
「な、なんで……?」
ゆっくりと唇を離したリリアンは、とても真剣な眼差してジェレミーを見つめた。
そして一言。
「私はジェレミーが好きよ」
と、告げた。
だから多分、リリアンがもうこれ以上振り回されたくないとジェレミーとの婚約解消を強く主張すれば、公爵家と良好な関係を築きたい皇帝は首を縦に振るだろう。
だが、一つだけ。いくら彼女が結婚したくないと言おうとも、結婚せざるを得ない状況に持って行く方法がある。
ジェレミーはそれを狙ってリリアンを寝室に連れ込んだ。
ジェレミーに組み敷かれた彼女は彼の腕の中から抜けようとするが、手首を押さえつけられ、びくともしない。
「俺の子が出来れば、リリアンは俺と結婚するしかなくなるね?」
そう言うジェレミーの瞳に光はなく、口元は弧を描くのに、眉は苦しそうに歪んでいた。
「……」
彼が何をしようとしているのかを察し、リリアンは脳の中でプチっと何かが弾けたような音を聞いた。
そして急に抵抗するの止め、静かにゆっくりと息を吐き、低く重い声で言葉を紡いだ。
「……ねえ。それ、普通に最低だよ」
「知ってるよ」
「知ってるならやめなさい。人の道に外れる事だわ」
「だって、もうこれしか方法がないんだ。仕方がないだろう」
「何が仕方がないのよ。婦女暴行を働く理由に仕方がない事なんてないのよ」
「でも今日、君を俺だけのものにしないと、君はきっと兄上のところへ戻ってしまう……」
「私はヨハネス殿下の元に行くつもりなんてないって言ってるでしょう?」
「じゃあ俺を選んでくれるのか?そんなわけないだろ。俺は兄上とは違って何の価値もない。俺は皇室の汚点だ」
ジェレミーは悲痛な表情を浮かべてリリアンのドレスの裾からの中に手を滑らせる。
太ももに触れたその手の冷たさに、リリアンは顔を歪めた。
今の彼は冷静ではない。焦りと劣等感で卑屈になり、どんな言葉も聞き入れようとはしない。
きっと今、ヨハネスのところに戻るつもりなんて微塵もないと言っても、あなたが好きだと言っても彼は信じないだろう。
自分が最低なことをしようとしている自覚はあるのに、そうする事でしたリリアンを手に入れる事ができないと思っている。
「……っざけんなよ」
リリアンは目を閉じ、大きなため息をこぼした。
そして無詠唱で術を編み、体内に流れる膨大な魔力を一気に放出した。
小さな爆発音とともに、ジェレミーは後方5メートルの壁まで吹き飛ばされる。
咄嗟に受け身を取り、無傷なところが流石だ。
リリアンはゆっくりとベッドから起き上がると、指を鳴らした。
すると、ジェレミーの周りで無数の白い光の玉が小さく弾けた。
それにジェレミーが気を取られている一瞬の隙に、リリアンは一気に間合いを詰め、彼を壁際に追い込み、壁に両手をついて封じ込める。
少しばかり攻撃性は高いが、いわゆる壁ドンというやつだ。
ジェレミーは苦笑いを浮かべて、両手を上げた。
「……」
「その手は何?」
「降参」
「貴方なら反撃できるでしょ?」
「本気のリリアンを相手にするなら、俺も本気を出さなきゃいけなくなる。君を傷つけたくはない」
「そう」
「というか、正直言って本気出しても敵うかどうか微妙だ。無詠唱なんて上級の魔法師でもできる人少ないぞ?兄上の婚約者になってから魔法を使う機会もなかっただろうに。どうして進化してるのさ……」
「ハイネ公爵家の一員だもの。たとえ出動がなくとも鍛錬は怠りません」
「流石はハイネ公爵令嬢だな」
「その鍛錬の成果かしらね?実は私、最近新しい魔法を習得したのよ」
「…………へ?」
「卑屈な王子の劣等感を浄化する魔法よっ!」
そう言うと、リリアンは本当に浄化魔法の術式を編んだ。
ジェレミーの目を隠し、手のひらに魔力を込める。
浄化の魔法師の魔力は暖かくて優しい。
だがこれは対魔獣用の術であり、人体には毒である。
ちなみにどのくらい毒かというと、1週間ほど生死の境を彷徨うくらい。
皇族に対してそんな危険な魔法を使おうとする彼女にジェレミーは焦った。
「ま、待って待って待って!ごめん!謝るから!それは洒落にならないって!いくらハイネ家の娘でもいくら俺が不義の第二皇子でも、さすがに殺したら極刑だから!」
「大丈夫。死なない程度に調整するわ。ちょっとおいたが過ぎる婚約者を教育するだけよ」
「それ、絶対大丈夫じゃないやつだろ!?ほんと、ほんとごめんって!悪かった!俺が悪かったから!もうしないから!」
「じゃあ、私の話をちゃんと聞いてくれる?」
「聞く!聞くから!」
ジェレミーは自分の目を塞ぐリリアンの手を掴み、慌てて引き剥がした。
すると、視界が開けると同時に、今度は唇を塞がれる。
突然のことに思考が追いつかず、ジェレミーは大きく目を見開いた。
ジッとこちらを見るリリアンと目が合う。
「な、なんで……?」
ゆっくりと唇を離したリリアンは、とても真剣な眼差してジェレミーを見つめた。
そして一言。
「私はジェレミーが好きよ」
と、告げた。
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