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ifの世界線のお話
16:エミリーからの手紙
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愛しのエミリーへ。
私が心から愛しているのはエミリーだけです。そのはずです。
けれど、この間からおかしいのです。
何故か幼馴染の事が頭から離れなくて困っています。
彼の混じり気のない金髪も、海に近い色の青い瞳も、柔らかい微笑みも今までと違ってとても見えて、とても新鮮でなんだかドキドキと心臓がうるさいです。
あの低く澄んだ声で名前を呼ばれただけで、全身が沸騰するように熱くなります。
私はどうすれば良いのでしょう?
p.s
オススメの本を読みましたが、どうやらは私とエミリーでは解釈が違うようです。私は鬼畜メガネ伯爵は攻めと見せかけてのツンデレ受けだと思います。そして伯爵家の執事はそんなツンデレな伯爵をそのおおらかさで包み込む攻めです。
***
親愛なるシャロンへ。
もうそれは恋です。流れに身を任せるべし。
p.s
どうしてシャロンはそういう歪んだ見方しか出来ないのですか?鬼畜メガネ伯爵は鬼畜メガネというだけで、もう攻める方です。確かに、伯爵家の執事は少し傲慢なところがある伯爵を全て包み込むだけの度量はありますが、全てを包み込む受けというものも存在します。物事はもっと真正面からストレートに見るべきです。
***
愛しのエミリーへ。
これは恋なのですか?しかし、私はエミリーが好きなのですよ?流れに身を任せると二股になりませんか?
p.s
いいえ。ここはどうしても譲れません。鬼畜メガネ伯爵が穏やかな笑みを浮かべる執事に攻められ、うっすらと涙を浮かべる様を想像してみてください。アリだと思うでしょう?
***
親愛なるシャロンへ。
二股にはなりません。
よく考えてみなさい。貴女の私への感情は所詮紛い物です。
しかし、あなたの幼馴染はそんな紛い物の感情に支配されていた貴女の心に入り込んできたのです。
もうそれは恋です。それこそ真の恋心です。王道展開、萌。
早急に告白するべし。
p.s
想像したら鼻血を吹き出して、貴女のお兄様にドン引きされてしまいました。ですが、アリです。
ちなみに、その解釈であの小説を見れるのならば、『悪役令嬢の執事に転生!?-何故か俺が王太子に溺愛されてます-』という本をオススメします。
***
エミリアからの手紙を受け取り、スッキリしたような表情をするシャロン。
対して、彼女たちの伝書鳩を務めるハディスは怪訝な顔をしていた。
「…すごく内容が気になるが、何を書いてるんだ?」
「主に恋の相談です」
「…恋?」
「と、言うわけで、私は今からサイモンに告白してきます」
「待って待って待って。急展開すぎてお兄ちゃん、ついていけないから」
手紙を握りしめ、サイモンの元へ行こうとするシャロンをハディスはとりあえず引き留めた。
興奮状態にあるのか、少しテンションがおかしい。無表情なのに、明らかに頭から花を飛ばしている。
「落ち着け、シャロン。お前はまだ公爵夫人だ。離縁の手続きが済んでいない」
離縁することは決まっているが、諸々の処理が済んでいないのに、他の男と結ばれるのは倫理的にどうなのだろうか。
ハディスはそう意義を唱える。しかし…。
「え?もう離縁すること確定なのですし、気持ちを伝えるくらいはしても良いのではないですか?」
どうせ振られるのだし、とシャロンはシレッと返した。どうやらサイモンの気持ちには気づいていないらしい。
「ふ、振られないかもしれないだろう」
「振られますよ。サイモンみたいなカッコよくて優しい人が私なんかで妥協するわけないじゃないですか」
「はい?では、お前は今から振られに行こうとしているということか?」
「そうですけど…。それが何か?」
呆れ顔の兄に、シャロンはコテンと首を傾げる。
普通、愛の告白というものはもう少し緊張したり、中々一歩踏み出せず悩んだりするものだろう。
それなのに何故、彼女はこんなにも平然としていられるのか。
やはり情緒がない。さすがは恋愛化石女だ。ハディスは頭を抱えた。
「兄様、私は伝えてスッキリしたいです」
「お前はスッキリするだろうが、サイモンはそうとは限らないだろう?」
「…何故ですか?」
「あいつは平民でお前は貴族、それもまだ公爵夫人だ。あいつはそういうの気にすると思うぞ」
「…確かに」
そう言えばサイモンは最近、自分との間にきっちり線を引くようになっていたことを思い出したシャロンは、手紙を握りしめたまま俯いてしまった。
ハディスはそんな彼女の頭をポンポンと叩く。
「…シャロン。せめて気持ちを伝えるのは離縁してからにしよう」
「わかりました。ではとりあえず、サイモンのところに行ってきます」
シャロンは不貞腐れたような口調でそういう時、踵を返し、薬草園へと向かおうとする。
ハディスはそんな彼女をまた引き留めた。
「…シャロン?お兄ちゃんの話聞いてた?」
「聞いてましたよ?」
「では何故サイモンのところに?」
「最近、サイモンのことを避けてしまっていたので謝りに行こうかと」
「…お、おう」
「では、お兄様。お手紙ありがとうございました」
何となく嫌な予感しかしないハディスだが、謝りに行くと言われてはこれ以上引き止められない。
泣く泣く妹を幼馴染の元へと送り出した。
私が心から愛しているのはエミリーだけです。そのはずです。
けれど、この間からおかしいのです。
何故か幼馴染の事が頭から離れなくて困っています。
彼の混じり気のない金髪も、海に近い色の青い瞳も、柔らかい微笑みも今までと違ってとても見えて、とても新鮮でなんだかドキドキと心臓がうるさいです。
あの低く澄んだ声で名前を呼ばれただけで、全身が沸騰するように熱くなります。
私はどうすれば良いのでしょう?
p.s
オススメの本を読みましたが、どうやらは私とエミリーでは解釈が違うようです。私は鬼畜メガネ伯爵は攻めと見せかけてのツンデレ受けだと思います。そして伯爵家の執事はそんなツンデレな伯爵をそのおおらかさで包み込む攻めです。
***
親愛なるシャロンへ。
もうそれは恋です。流れに身を任せるべし。
p.s
どうしてシャロンはそういう歪んだ見方しか出来ないのですか?鬼畜メガネ伯爵は鬼畜メガネというだけで、もう攻める方です。確かに、伯爵家の執事は少し傲慢なところがある伯爵を全て包み込むだけの度量はありますが、全てを包み込む受けというものも存在します。物事はもっと真正面からストレートに見るべきです。
***
愛しのエミリーへ。
これは恋なのですか?しかし、私はエミリーが好きなのですよ?流れに身を任せると二股になりませんか?
p.s
いいえ。ここはどうしても譲れません。鬼畜メガネ伯爵が穏やかな笑みを浮かべる執事に攻められ、うっすらと涙を浮かべる様を想像してみてください。アリだと思うでしょう?
***
親愛なるシャロンへ。
二股にはなりません。
よく考えてみなさい。貴女の私への感情は所詮紛い物です。
しかし、あなたの幼馴染はそんな紛い物の感情に支配されていた貴女の心に入り込んできたのです。
もうそれは恋です。それこそ真の恋心です。王道展開、萌。
早急に告白するべし。
p.s
想像したら鼻血を吹き出して、貴女のお兄様にドン引きされてしまいました。ですが、アリです。
ちなみに、その解釈であの小説を見れるのならば、『悪役令嬢の執事に転生!?-何故か俺が王太子に溺愛されてます-』という本をオススメします。
***
エミリアからの手紙を受け取り、スッキリしたような表情をするシャロン。
対して、彼女たちの伝書鳩を務めるハディスは怪訝な顔をしていた。
「…すごく内容が気になるが、何を書いてるんだ?」
「主に恋の相談です」
「…恋?」
「と、言うわけで、私は今からサイモンに告白してきます」
「待って待って待って。急展開すぎてお兄ちゃん、ついていけないから」
手紙を握りしめ、サイモンの元へ行こうとするシャロンをハディスはとりあえず引き留めた。
興奮状態にあるのか、少しテンションがおかしい。無表情なのに、明らかに頭から花を飛ばしている。
「落ち着け、シャロン。お前はまだ公爵夫人だ。離縁の手続きが済んでいない」
離縁することは決まっているが、諸々の処理が済んでいないのに、他の男と結ばれるのは倫理的にどうなのだろうか。
ハディスはそう意義を唱える。しかし…。
「え?もう離縁すること確定なのですし、気持ちを伝えるくらいはしても良いのではないですか?」
どうせ振られるのだし、とシャロンはシレッと返した。どうやらサイモンの気持ちには気づいていないらしい。
「ふ、振られないかもしれないだろう」
「振られますよ。サイモンみたいなカッコよくて優しい人が私なんかで妥協するわけないじゃないですか」
「はい?では、お前は今から振られに行こうとしているということか?」
「そうですけど…。それが何か?」
呆れ顔の兄に、シャロンはコテンと首を傾げる。
普通、愛の告白というものはもう少し緊張したり、中々一歩踏み出せず悩んだりするものだろう。
それなのに何故、彼女はこんなにも平然としていられるのか。
やはり情緒がない。さすがは恋愛化石女だ。ハディスは頭を抱えた。
「兄様、私は伝えてスッキリしたいです」
「お前はスッキリするだろうが、サイモンはそうとは限らないだろう?」
「…何故ですか?」
「あいつは平民でお前は貴族、それもまだ公爵夫人だ。あいつはそういうの気にすると思うぞ」
「…確かに」
そう言えばサイモンは最近、自分との間にきっちり線を引くようになっていたことを思い出したシャロンは、手紙を握りしめたまま俯いてしまった。
ハディスはそんな彼女の頭をポンポンと叩く。
「…シャロン。せめて気持ちを伝えるのは離縁してからにしよう」
「わかりました。ではとりあえず、サイモンのところに行ってきます」
シャロンは不貞腐れたような口調でそういう時、踵を返し、薬草園へと向かおうとする。
ハディスはそんな彼女をまた引き留めた。
「…シャロン?お兄ちゃんの話聞いてた?」
「聞いてましたよ?」
「では何故サイモンのところに?」
「最近、サイモンのことを避けてしまっていたので謝りに行こうかと」
「…お、おう」
「では、お兄様。お手紙ありがとうございました」
何となく嫌な予感しかしないハディスだが、謝りに行くと言われてはこれ以上引き止められない。
泣く泣く妹を幼馴染の元へと送り出した。
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