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ifの世界線のお話
2:サイモンとお嬢様
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シャロン・ジルフォードとの出会いはサイモンが6歳の時だった。
彼の父が仕えるジルフォード侯爵家の末娘として生まれたばかりの彼女を紹介された彼は、妹ができたと喜んだ。
当主に『可愛がってやってくれ』と言われた時は笑顔で『はい』と答えた。
サイモンは妹としてシャロンを大切にすると誓った。
そして時は流れ、彼女と出会い10年ほど経ったころ、サイモンは気づいた。
やはりこのお姫様もジルフォードの血筋なのだと。
わずか10歳にして薬草に興味を持ち、薬師見習いの自分と一緒に研究を始めた。
普通のご令嬢なら嫌がりそうな虫も平気で触るし、ドレスが汚れようとも土をいじる事をやめない。
さすがは変人の巣窟、ジルフォード家の娘である。普通じゃない。
けれど、サイモンはそんな彼女を可愛いと思っていた。
嬉々としてバッタを追いかけまわす姿も、泥をつけた顔でにこりと笑う姿も全部可愛かった。
強がりを拗らせて、誰もいない厩で泣く姿すら可愛かった。
いや、何故に避難場所が厩なのかとは思ったし、そういうチョイスは本当に可愛く無いが、それ以外は泣いていても兎に角可愛かった。
人見知りのせいか、あまり感情を表に出さない彼女が自分の前でだけ感情を見せる事を知ったときは、堪らなく幸せだった。
それでもこの時はまだ、サイモンは兄として妹のシャロンを可愛がっているだけだった。
しかし、この頃からサイモンは薬師の修行のために一時期ジルフォードの家を離れたり、シャロンが学院に通ったりで会わない日が続いたせいか、彼の彼女に対する感情は徐々に崩れ始める。
それはシャロンが学院から一時的に帰省している日のことだった。
彼女の姿が見当たらないとメイドに言われたサイモンは、いつものように厩へ探しに行った。
そこで目にしたのはいつものように蹲り泣いているシャロンだった。
だが、サイモンの心だけはいつもと違った。
大きな金色の瞳に涙を溜めて自分の名を呼ぶ彼女の姿に、彼の心臓の鼓動は早くなった。
全身の血が沸騰するように暑くなるのを感じた。
久しぶりに見たシャロンがとても美しく見えたのだ。
サイモンはこの瞬間恋に落ちた。
そして、同時に失恋した。
何故ならシャロン・ジルフォードは貴族の娘だ。
平民の息子である彼が隣に立てっていい相手じゃ無い。
サイモンはこの日、芽生えた恋心を箱に入れ、鍵をかけて海の底へと沈めた。
***
なんて、物思いに耽っていたサイモンはふと、天井を這うように進む動く黒い物体を見つけた。
「何してんですか。その動きはもうほぼほぼGですよ」
「やあ、久しぶりのハディスお兄様だよ」
「うるせーわ」
何故か天井に張り付いているGもとい、ジルフォード家の次男に向けてサイモンは思い切り枕を投げつけた。
ハディスはそれを華麗に避けると、一回転して着地する。
「お前、シャロンから何も聞いてなかったんだって?」
「可哀想な奴を見る目で見ないでください」
「実際に可哀想な奴なのだから仕方がないだろう」
「俺が可哀想なのはあんたの妹のせいだ」
「ではこれから飲みに行かないか?責任とって慰めてやろう」
趣味の悪い金の財布をチラつかせたハディスは、ニヤリと口角を上げた。
サイモンは人の金で飲む酒ほど美味いものはないと、素直にこの変態に奢られてやることにした。
彼の父が仕えるジルフォード侯爵家の末娘として生まれたばかりの彼女を紹介された彼は、妹ができたと喜んだ。
当主に『可愛がってやってくれ』と言われた時は笑顔で『はい』と答えた。
サイモンは妹としてシャロンを大切にすると誓った。
そして時は流れ、彼女と出会い10年ほど経ったころ、サイモンは気づいた。
やはりこのお姫様もジルフォードの血筋なのだと。
わずか10歳にして薬草に興味を持ち、薬師見習いの自分と一緒に研究を始めた。
普通のご令嬢なら嫌がりそうな虫も平気で触るし、ドレスが汚れようとも土をいじる事をやめない。
さすがは変人の巣窟、ジルフォード家の娘である。普通じゃない。
けれど、サイモンはそんな彼女を可愛いと思っていた。
嬉々としてバッタを追いかけまわす姿も、泥をつけた顔でにこりと笑う姿も全部可愛かった。
強がりを拗らせて、誰もいない厩で泣く姿すら可愛かった。
いや、何故に避難場所が厩なのかとは思ったし、そういうチョイスは本当に可愛く無いが、それ以外は泣いていても兎に角可愛かった。
人見知りのせいか、あまり感情を表に出さない彼女が自分の前でだけ感情を見せる事を知ったときは、堪らなく幸せだった。
それでもこの時はまだ、サイモンは兄として妹のシャロンを可愛がっているだけだった。
しかし、この頃からサイモンは薬師の修行のために一時期ジルフォードの家を離れたり、シャロンが学院に通ったりで会わない日が続いたせいか、彼の彼女に対する感情は徐々に崩れ始める。
それはシャロンが学院から一時的に帰省している日のことだった。
彼女の姿が見当たらないとメイドに言われたサイモンは、いつものように厩へ探しに行った。
そこで目にしたのはいつものように蹲り泣いているシャロンだった。
だが、サイモンの心だけはいつもと違った。
大きな金色の瞳に涙を溜めて自分の名を呼ぶ彼女の姿に、彼の心臓の鼓動は早くなった。
全身の血が沸騰するように暑くなるのを感じた。
久しぶりに見たシャロンがとても美しく見えたのだ。
サイモンはこの瞬間恋に落ちた。
そして、同時に失恋した。
何故ならシャロン・ジルフォードは貴族の娘だ。
平民の息子である彼が隣に立てっていい相手じゃ無い。
サイモンはこの日、芽生えた恋心を箱に入れ、鍵をかけて海の底へと沈めた。
***
なんて、物思いに耽っていたサイモンはふと、天井を這うように進む動く黒い物体を見つけた。
「何してんですか。その動きはもうほぼほぼGですよ」
「やあ、久しぶりのハディスお兄様だよ」
「うるせーわ」
何故か天井に張り付いているGもとい、ジルフォード家の次男に向けてサイモンは思い切り枕を投げつけた。
ハディスはそれを華麗に避けると、一回転して着地する。
「お前、シャロンから何も聞いてなかったんだって?」
「可哀想な奴を見る目で見ないでください」
「実際に可哀想な奴なのだから仕方がないだろう」
「俺が可哀想なのはあんたの妹のせいだ」
「ではこれから飲みに行かないか?責任とって慰めてやろう」
趣味の悪い金の財布をチラつかせたハディスは、ニヤリと口角を上げた。
サイモンは人の金で飲む酒ほど美味いものはないと、素直にこの変態に奢られてやることにした。
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