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本編
16:デートのお誘い(2)
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「それで?何か御用ですか?」
シャロンは平静を装い、リサの入れた紅茶を口に含む。
尤も、平静を装うまでもなく他人の目に映る彼女はいつも何事にも動じない冷静沈着な女性に見えているのだが、本人はそう思っていない。
「突然ごめんね。実は頼みがあって」
申し訳なさそうにアルフレッドが取り出したのは一通の招待状だった。
シャロンはそれを手に取り、首を傾げる。
「これは?」
「王宮で行われる舞踏会の招待状だよ」
「まあ」
「頼みというのはそのことなんだ」
「…夜会に出席せよと?」
「ああ。できれば一緒に参加して欲しい。どうだろうか?」
顔を覗き込む様にしてシャロンの反応を伺うアルフレッド。彼女は安定の無表情なので、その感情を読み取ることはできない。
だが、あまり良い反応でないことは確かだった。
「だめかな?」
「あの、公爵様…。その夜会は夫婦同伴が絶対条件でしょうか?」
「いや、そういう訳ではないんだが、同僚が君を紹介しろとうるさくてね。君さえ良ければ一度紹介しておきたいんだ」
「なるほど…」
(行きたくない…)
シャロンが夜会に行きたくない理由は色々あるが、1番の理由は高確率で学院時代の同級生に遭遇するからだ。
今のシャロンは噂の『烏公爵の後妻』。どんな風に奴らが声をかけてくるかは想像に容易い。
だが、たしかに結婚披露宴を行っていないため、シャロンはまだアルフレッドの職場の人間に挨拶もできていない。なのでアルフレッドの言うようにここは顔を出しておくべきだとも思う。
(これで伝わらなければ諦めて行くことにしよう)
シャロンはできれば行きたくないという思いを込めて、上目遣いでアルフレッドにジッと視線を送る。
「そうか、行ってくれるか!ありがとう!」
予想通り、その視線を真逆に解釈したアルフレッドは満面の笑みでありがとうと繰り返した。
シャロンはウィンターソン公爵夫人としての務めを果たす時なのだと諦めて、大人しく頷いた。
「実はエミリア以外の女性をエスコートしたくなくて社交は最低限で良いなんて言ってしまった手前、誘いづらかったんだ」
「え?」
「あ」
「社交はしなくて良いとおっしゃっていたのはそういう理由で?」
「あ、いや…ちが…」
うっかり口を滑らせてしまったアルフレッドは慌てて弁明しようとするが、時すでに遅し。
シャロンとしては社交は無い方が良いし、どんな理由でそれを提案したかなんて大した問題では無いのだが、側で控えているメイドはそうではない。
リサとシノアは怪訝な表情で主人をジッと見つめている。仲睦まじく過ごしていると思っていたのに、ここに来てまさか前妻の名が出るとは思っていなかったたのだろう。
その視線を感じてか、アルフレッドは突然立ち上がり、シャロンに手を差し伸べた。
シャロンは反射的にその手を取る。
「デ、デートをしよう!」
「へ?」
「ドレスを作りにいこう」
「は?」
「服の整理をしていたようだし、どうせなら普段着も見繕うと良い。うん、そうしよう」
「はい?」
「シノア、リサ。30分後にエントランスに集合だ」
「かしこまりました」
「お任せください!」
困惑するシャロンをよそにアルフレッドはメイドの2人に、すぐに出かける用意をするようにと指示を出した。
リサの目の色が変わる。シノアもフンと鼻を鳴らして気合い十分だ。
「え?公爵様?何を…」
「デートしよう。そうしよう。私たちは仲良し夫婦だからな。デートをしよう。うん」
明らかにその場を誤魔化すために口から出た言葉だが、アルフレッドはそのまま車を表に回してくると言って去って行ってしまった。
いくら使用人たちを安心させるためとはいえ、動揺し先まではないだろうか。如何様にも誤魔化すことができただろうに。
(絶対デートって言ったこと後悔してるわ、あれ)
最近アルフレッドの事がわかってきたシャロンは、彼を鼻で笑った。
シャロンは平静を装い、リサの入れた紅茶を口に含む。
尤も、平静を装うまでもなく他人の目に映る彼女はいつも何事にも動じない冷静沈着な女性に見えているのだが、本人はそう思っていない。
「突然ごめんね。実は頼みがあって」
申し訳なさそうにアルフレッドが取り出したのは一通の招待状だった。
シャロンはそれを手に取り、首を傾げる。
「これは?」
「王宮で行われる舞踏会の招待状だよ」
「まあ」
「頼みというのはそのことなんだ」
「…夜会に出席せよと?」
「ああ。できれば一緒に参加して欲しい。どうだろうか?」
顔を覗き込む様にしてシャロンの反応を伺うアルフレッド。彼女は安定の無表情なので、その感情を読み取ることはできない。
だが、あまり良い反応でないことは確かだった。
「だめかな?」
「あの、公爵様…。その夜会は夫婦同伴が絶対条件でしょうか?」
「いや、そういう訳ではないんだが、同僚が君を紹介しろとうるさくてね。君さえ良ければ一度紹介しておきたいんだ」
「なるほど…」
(行きたくない…)
シャロンが夜会に行きたくない理由は色々あるが、1番の理由は高確率で学院時代の同級生に遭遇するからだ。
今のシャロンは噂の『烏公爵の後妻』。どんな風に奴らが声をかけてくるかは想像に容易い。
だが、たしかに結婚披露宴を行っていないため、シャロンはまだアルフレッドの職場の人間に挨拶もできていない。なのでアルフレッドの言うようにここは顔を出しておくべきだとも思う。
(これで伝わらなければ諦めて行くことにしよう)
シャロンはできれば行きたくないという思いを込めて、上目遣いでアルフレッドにジッと視線を送る。
「そうか、行ってくれるか!ありがとう!」
予想通り、その視線を真逆に解釈したアルフレッドは満面の笑みでありがとうと繰り返した。
シャロンはウィンターソン公爵夫人としての務めを果たす時なのだと諦めて、大人しく頷いた。
「実はエミリア以外の女性をエスコートしたくなくて社交は最低限で良いなんて言ってしまった手前、誘いづらかったんだ」
「え?」
「あ」
「社交はしなくて良いとおっしゃっていたのはそういう理由で?」
「あ、いや…ちが…」
うっかり口を滑らせてしまったアルフレッドは慌てて弁明しようとするが、時すでに遅し。
シャロンとしては社交は無い方が良いし、どんな理由でそれを提案したかなんて大した問題では無いのだが、側で控えているメイドはそうではない。
リサとシノアは怪訝な表情で主人をジッと見つめている。仲睦まじく過ごしていると思っていたのに、ここに来てまさか前妻の名が出るとは思っていなかったたのだろう。
その視線を感じてか、アルフレッドは突然立ち上がり、シャロンに手を差し伸べた。
シャロンは反射的にその手を取る。
「デ、デートをしよう!」
「へ?」
「ドレスを作りにいこう」
「は?」
「服の整理をしていたようだし、どうせなら普段着も見繕うと良い。うん、そうしよう」
「はい?」
「シノア、リサ。30分後にエントランスに集合だ」
「かしこまりました」
「お任せください!」
困惑するシャロンをよそにアルフレッドはメイドの2人に、すぐに出かける用意をするようにと指示を出した。
リサの目の色が変わる。シノアもフンと鼻を鳴らして気合い十分だ。
「え?公爵様?何を…」
「デートしよう。そうしよう。私たちは仲良し夫婦だからな。デートをしよう。うん」
明らかにその場を誤魔化すために口から出た言葉だが、アルフレッドはそのまま車を表に回してくると言って去って行ってしまった。
いくら使用人たちを安心させるためとはいえ、動揺し先まではないだろうか。如何様にも誤魔化すことができただろうに。
(絶対デートって言ったこと後悔してるわ、あれ)
最近アルフレッドの事がわかってきたシャロンは、彼を鼻で笑った。
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