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本編
9:シャロンの初夜(2)
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子種をもらってくるということはつまり、夫以外の他の男とそういう行為に及ぶということ。
アルフレッドは彼女の言葉の意味を正確に理解し、間抜けな声を上げた。
「…へ?ど、どどどどういう事?」
「あれ?高貴な身分の方でもやはり男性はご存知ないものなんですかね?そういう事専門の業者があるんです」
不妊は何も女性だけの問題ではない。
だが、子どもができない場合の多くは女性のせいになりがちだ。
シャロン曰く、そんな中々子ができない貴族女性のために子種を提供してくれる闇業者があるらしい。
「私の知ってる業者さんは、客のプライバシーは絶対に守りますし、事前に検査するので病気持ちの男性はいません。安心安全ですよ?」
シャロンは当然のように一つの選択肢としてそれを提示してくるが、アルフレッドが聞きたいのはそういうことではない。
「それ、意味わかってるのか?」
「はい」
「他の男に抱かれるという事だぞ?」
「はい。でも、配偶者が公認すれば不貞にはなりませんよね?え?違う?」
「いやいやいや、だからそういうことではなくて」
「ではどういう…」
「君は嫌じゃないのか?見ず知らずの男に抱かれるのだぞ」
「仕方がないと割り切って考えればそれほど…」
好きな相手も特にいないシャロンとしては、初対面のアルフレッドに抱かれるのも、見ず知らずの男抱かれるのも大差ない。
たが、アルフレッドは険しい顔をしていた。
「私のためにそこまでしてくれなくて良い。もっと自分を大切にしなさい」
少し怒っているような口調でそう言われたものだから、シャロンは思わず「ごめんなさい」と謝ってしまった。
「まだ結婚生活は始まったばかりだ。焦る必要はないだろう。その件に関してはゆっくり考えていこう」
「…それもそうですわね」
優しくそう言って微笑むアルフレッドに、確かに焦る必要はなかったかと納得したシャロンは「おやすみなさい」と頭を下げて部屋を出ようとした。
「ちょ、何故帰るんだ!」
「え?何故って、何もしないのであればここにいる意味ありませんよね?」
「いや、確かにそうなんだが…」
子作りしないのならこの部屋に特に用はない。しかし、アルフレッドは驚いたような顔をしてシャロンを引き止めた。
シャロンは引き止められたことに驚きを隠せない。
「何もしないが、良ければここで夜を過ごさないか?」
「ふえ?」
「その、私たちはもう少し互いのことを知った方が良いだろう?」
「はあ…」
「それに、使用人達を騙しているようで申し訳ないけど、彼らを安心させるために夜はここで一緒に寝て欲しい」
「なるほど」
確かに、この結婚を喜んでいる使用人達には仲睦まじい夫婦を演じて見せた方が良い。
シャロンは「公爵様がそれでよろしいのなら」と答えた。
「では私はどこで寝れば…」
あたりを見渡したシャロンは、フカフカのソファを見つけここで寝るとソファに近づく。
しかしアルフレッドは悩んだ挙句、彼女をベッドへと誘った。
(…まじか)
拒絶されていないどころか、同じベッドで寝ることすら許されるとは予想外だ。
目を丸くしたシャロンは、促されるまま素直に彼の隣に腰掛けた。
また、妙に張り詰めた空気が二人の間を流れる。
(気まずい)
何だか緊張してしまい、手汗がすごい。
シャロンはふと自分の胸元を見て、そういえばとても大胆な服を着ていたという事を思い出した。
こんな布の少ない服で男性の近くに座った経験などない彼女は自然と体が火照る。
アルフレッドはそんな緊張したシャロンの手を取り、優しく諭した。
「何もしないから安心しなさい」
「あ、ありがとうございます?」
良い笑顔でそう宣言するアルフレッドだが、初夜にベッドで『手を出さない』と宣言するのはどうなのだろう。
妻としてこれはどう返すべきなのか悩むシャロンは返答に疑問符をつけてしまった。
(…どうしたものか)
ベッドに寝転がったは良いものの、会話がない。
シャロンはじーっと隣で寝転ぶアルフレッドを見つめた。
『お互いのことを知るために話をしよう』と言ったのにロクに話も振ってこず、それどころか目も合わそうとしない彼は何を考えているのだろうか。
(…わからない。謎すぎるぞ、烏公爵)
どうするのが正解かわからないシャロンは、とりあえず盛り上がりそうな話を振る事にした。
「あの…、エミリア様のお話って聞いても良いですか?」
「え?」
「もし公爵様がよろしければ、エミリア様の事お聞きしたいなって」
枕を抱きしめて恐る恐る尋ねるシャロンに、アルフレッドは驚いた顔をした。
夫がずっと想っている亡き妻の話など、普通の女なら聞きたくはない筈だからだ。
「話すのは構わないが…どうして?」
「えっと、何となく?公爵様はエミリア様のお話したいんじゃないかなと…」
と、シャロンは首を傾げた。
すると、アルフレッドは何故か顔を赤らめて、枕に顔を埋めた。
「ありがとう」
「へ?どういたしまして?」
唐突のお礼に、シャロンは一瞬だけ眉間に皺を寄せた。
(わけがわからん)
お礼を言われるようなことをした覚えなどない。あくまでも間をつなげるためにエミリアの話題を振ったに過ぎないのに、何のお礼だろうか。
そんな事を考えながらシャロンはその夜、ひたすらにエミリアの話をするアルフレッドに相槌を打つという時間を過ごした。
アルフレッドは彼女の言葉の意味を正確に理解し、間抜けな声を上げた。
「…へ?ど、どどどどういう事?」
「あれ?高貴な身分の方でもやはり男性はご存知ないものなんですかね?そういう事専門の業者があるんです」
不妊は何も女性だけの問題ではない。
だが、子どもができない場合の多くは女性のせいになりがちだ。
シャロン曰く、そんな中々子ができない貴族女性のために子種を提供してくれる闇業者があるらしい。
「私の知ってる業者さんは、客のプライバシーは絶対に守りますし、事前に検査するので病気持ちの男性はいません。安心安全ですよ?」
シャロンは当然のように一つの選択肢としてそれを提示してくるが、アルフレッドが聞きたいのはそういうことではない。
「それ、意味わかってるのか?」
「はい」
「他の男に抱かれるという事だぞ?」
「はい。でも、配偶者が公認すれば不貞にはなりませんよね?え?違う?」
「いやいやいや、だからそういうことではなくて」
「ではどういう…」
「君は嫌じゃないのか?見ず知らずの男に抱かれるのだぞ」
「仕方がないと割り切って考えればそれほど…」
好きな相手も特にいないシャロンとしては、初対面のアルフレッドに抱かれるのも、見ず知らずの男抱かれるのも大差ない。
たが、アルフレッドは険しい顔をしていた。
「私のためにそこまでしてくれなくて良い。もっと自分を大切にしなさい」
少し怒っているような口調でそう言われたものだから、シャロンは思わず「ごめんなさい」と謝ってしまった。
「まだ結婚生活は始まったばかりだ。焦る必要はないだろう。その件に関してはゆっくり考えていこう」
「…それもそうですわね」
優しくそう言って微笑むアルフレッドに、確かに焦る必要はなかったかと納得したシャロンは「おやすみなさい」と頭を下げて部屋を出ようとした。
「ちょ、何故帰るんだ!」
「え?何故って、何もしないのであればここにいる意味ありませんよね?」
「いや、確かにそうなんだが…」
子作りしないのならこの部屋に特に用はない。しかし、アルフレッドは驚いたような顔をしてシャロンを引き止めた。
シャロンは引き止められたことに驚きを隠せない。
「何もしないが、良ければここで夜を過ごさないか?」
「ふえ?」
「その、私たちはもう少し互いのことを知った方が良いだろう?」
「はあ…」
「それに、使用人達を騙しているようで申し訳ないけど、彼らを安心させるために夜はここで一緒に寝て欲しい」
「なるほど」
確かに、この結婚を喜んでいる使用人達には仲睦まじい夫婦を演じて見せた方が良い。
シャロンは「公爵様がそれでよろしいのなら」と答えた。
「では私はどこで寝れば…」
あたりを見渡したシャロンは、フカフカのソファを見つけここで寝るとソファに近づく。
しかしアルフレッドは悩んだ挙句、彼女をベッドへと誘った。
(…まじか)
拒絶されていないどころか、同じベッドで寝ることすら許されるとは予想外だ。
目を丸くしたシャロンは、促されるまま素直に彼の隣に腰掛けた。
また、妙に張り詰めた空気が二人の間を流れる。
(気まずい)
何だか緊張してしまい、手汗がすごい。
シャロンはふと自分の胸元を見て、そういえばとても大胆な服を着ていたという事を思い出した。
こんな布の少ない服で男性の近くに座った経験などない彼女は自然と体が火照る。
アルフレッドはそんな緊張したシャロンの手を取り、優しく諭した。
「何もしないから安心しなさい」
「あ、ありがとうございます?」
良い笑顔でそう宣言するアルフレッドだが、初夜にベッドで『手を出さない』と宣言するのはどうなのだろう。
妻としてこれはどう返すべきなのか悩むシャロンは返答に疑問符をつけてしまった。
(…どうしたものか)
ベッドに寝転がったは良いものの、会話がない。
シャロンはじーっと隣で寝転ぶアルフレッドを見つめた。
『お互いのことを知るために話をしよう』と言ったのにロクに話も振ってこず、それどころか目も合わそうとしない彼は何を考えているのだろうか。
(…わからない。謎すぎるぞ、烏公爵)
どうするのが正解かわからないシャロンは、とりあえず盛り上がりそうな話を振る事にした。
「あの…、エミリア様のお話って聞いても良いですか?」
「え?」
「もし公爵様がよろしければ、エミリア様の事お聞きしたいなって」
枕を抱きしめて恐る恐る尋ねるシャロンに、アルフレッドは驚いた顔をした。
夫がずっと想っている亡き妻の話など、普通の女なら聞きたくはない筈だからだ。
「話すのは構わないが…どうして?」
「えっと、何となく?公爵様はエミリア様のお話したいんじゃないかなと…」
と、シャロンは首を傾げた。
すると、アルフレッドは何故か顔を赤らめて、枕に顔を埋めた。
「ありがとう」
「へ?どういたしまして?」
唐突のお礼に、シャロンは一瞬だけ眉間に皺を寄せた。
(わけがわからん)
お礼を言われるようなことをした覚えなどない。あくまでも間をつなげるためにエミリアの話題を振ったに過ぎないのに、何のお礼だろうか。
そんな事を考えながらシャロンはその夜、ひたすらにエミリアの話をするアルフレッドに相槌を打つという時間を過ごした。
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