先輩いい加減にしてくださいっ!~意地っ張りな後輩は、エッチな先輩の魅力に負けてます~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
上 下
50 / 96
2

四十八 恋人はレモン味

しおりを挟む

「最近、大津と蓮田の様子がおかしくない? なんかギクシャクしてるというか」

「どちらかというと、蓮田がソワソワしてるように見えるけどな。大津はむしろ普通? 馴れ馴れしい?」

 吉永と向い合わせになりながら、寮内の最近の様子を語り合う。俺は生ビールで吉永はレモンサワー。会社帰りにデートを兼ねて飯を食うのが増えた。話題は仕事や寮の話ばかりで、他人が視たら先輩後輩にしか見えそうにないが。

「ケンカって感じじゃないよな。何だあれ」

「良いじゃないの。放っておけば」

 そりゃそうだが。なんか落ち着かないんだよな。

「って、おまっ、勝手にレモンかけるなよ!」

「唐揚げにはレモンだろーが」

「最初の一個はかけないで食いたいんだって!」

 いつの間にか、注文した唐揚げにレモンがかけられている。吉永のこういうところは、相変わらずだ。俺の話なんか聞きやしない。

「くそ……」

 あまりレモンがかかっていなそうな唐揚げを箸で摘まむ。何でかけちゃうかな。

「なんで? レモン嫌いだった?」

「嫌いじゃねー、け、ど……」

 文句を言おうと顔を上げた先に、不適に笑う吉永の顔があった。スマイルカットされたレモンを口に咥えて、妖艶な表情を浮かべる。わざとらしくレモンを舐める顔に、ドクンと心臓が鳴る。

「っ――」

 不意打ちを食らって、ずくんと股間が疼いた。血液がぎゅっと集まって、ズキズキと痛くなる。

 反射的に前屈みになって踞る俺に、吉永がニヤニヤと笑った。

「どうした? 航平」

「……酸っぱそうで……」

 誤魔化しながら、テーブル額を打ち付ける。

 このやろう。わざとやってやがる。それに踊らされる自分にも腹が立つ。

(マジで、いい加減にしろっ……!)

 今に見てろ。挑発したことを後悔させてやる。

(絶対、鳴かすっ……!)



   ◆   ◆   ◆



「ありがとうございましたー」

 会計を済ませ、店員の挨拶に見送られて外に出る。夜の空気は冴え冴えとして、冷たかった。

「ふー、満足、満足」

「……」

 晩酌に満足気な吉永の横で、俺はむすっと唇を結ぶ。料理や酒はよかったけれど、吉永のせいで欲求不満だ。中途半端に挑発されて、そのまま放置では堪ったものじゃない。

「コンビニでも寄るかー?」

 スマートフォンの時計を見ながら言う吉永の横顔を見る。まだ門限までは余裕がある。

「なあ、コンビニ寄って――」

 振り返る吉永の手首を掴み、引き寄せる。吉永が驚いた顔で息を呑んだ。

 そのまま腕の中に捕らえ、顎をつかみ、唇に吸い付いた。ビクッと小さく震える肩を抱き締め、舌を挿入する。吉永の手が胸を叩こうとして、シャツを掴んだ。

「んぅ、っ……」

 住宅地が近い路上は、街灯が少なく薄暗い。店の看板の明かりばかりが、煌々と光っていた。

「っ、は……航平……、っ」

 唇の隙間から、吉永が声を漏らす。その声の甘さに胸が疼いた。このままめちゃくちゃにしてやりたい衝動を押さえつけ、腰に手を回す。腰から尻にかけて撫でてやると、ビクンと身体が跳ねる。吉永の額が闇夜でも解るくらい赤く染まった。

「っ……ぁん、待っ……」

 抗議の声を、唇で塞ぐ。舌を軽く噛んで、舌先を擽る。唾液が顎を伝う。

 ちゅ、ちゅくっと音を立ててキスを繰り返す。吉永の膝がガクンと揺らいだ。

「おっと」

 ふらつく身体を支えて、立たせてやる。とろんとした顔で俺を見る吉永に、ニマリと笑った。

「なんだ、レモンの味、しねえな」

「――っ」

 先程の意趣返しだと気づいたのか、吉永が睨んでくる。悪いが、真っ赤な顔で睨まれても、可愛いだけだ。

「航平っ……!」

「はやいとこ帰ろうぜ。あ、コンビニ寄りたいんだっけ?」

 揶揄するようにそう言うと、吉永がじとっと睨み付けてくる。吉永はビクッ、ビクと小刻みに身体を震わせ、自身の身体を掻き抱いた。上気した頬と、濡れた唇。発情した姿は目に毒だ。

(こっちも、我慢が辛いな)

 からかってやるためとは言え、お預けがツラい。早いところ寮に帰って、吉永を隅々まで堪能したいものだ。

「……」

 ムスッとした顔をして、吉永が俺の腕を引っ張った。

「うぉわっ」

 思いの外、強い力で引っ張られ、そのまま連れられる。吉永は無言のまま、住宅街の細い路地を進んでいく。

「っ、おい、何処に――」

 何処に連れていく気なのか。寮の方向でもないし、コンビニでもない。暗い道を、ずんずんと進んでいく。

「おい、返事くらい――」

 吉永の肩をつかもうと、手を伸ばしかけて、目的地が目に入った。

 街灯が一つだけの、小さな公園。あるのは仮設トイレと滑り台、鉄棒だけだ。外周をぐるりとフェンスが囲い、その回りに沿うように、生け垣が作られていた。

「……え? ちょっと、吉永?」

 まさか。いや。外だぞ。

 まさかと思うが、吉永はそのつもりのようで、俺を公園の中に引っ張り込むと、街路樹に押し付けた。

「――」

 公園内はかなり暗い。だが、住宅街で誰が来るかわからない。ついでに言えば、外である。俺の人生において、屋外で致したことは一度もない。

「お、おい。吉永。寮に帰った方が、良くないか……?」

 動揺しながら、吉永を見る。吉永は荒い呼気を吐き出しながら、潤んだ顔で俺を見つめた。

 はぁ、はぁと漏れる息が、やけに色っぽい。グッと込み上げるものを堪えながら、吉永を宥めようと肩に手をおく。

「よ、吉永。落ち着け――」

「お前の、せいだろうがっ……」

 そう言って吉永は、俺の唇に噛みついた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...