9 / 96
1
九 マッサージをしに来たんだが
しおりを挟む「来たぞー」
勝手知ったるで扉を開き、部屋の中に入る。夕暮れ寮で暮らすヤツは、大抵、鍵なんか掛けない。まあ、全員ではないだろうが。部屋に入ると吉永はベッドの上に寝転がって、スマートフォンを見ていた。視線も合わせずに「おー」と返事をする姿を見ると、何だか帰りたくなる。
「そういやドラマ続き観てねーじゃん。キャシーとジョンはどうなるんだって」
「あー」
吉永は今思い出したという雰囲気で顔を上げた。既に興味などなさそうな雰囲気である。
「あれな、キャシーの同僚でキャシーに気があるトミーが居たじゃん」
「あ? ああ、あのイケメンな」
「アイツ、ジョンの運転する車に轢かれて意識不明になんの。そこでシーズン1終わるんだけどさ」
「え。マジかよ。ってか、お前もう観ちゃったの?」
ネタバレすんな。
「いや、ウィキで。で、視聴率取れなくてシーズン2制作中止なんだわ。ダメだアレ」
「最悪」
ちゃんと最後までないのかよ。しかもお前、ウィキで情報見たのかよ。
すっかり観る気が萎えて、ベッドに腰かける。その情報は聞きたくなかったが、ラストまで観て続きがないと知るよりはマシだったか……。キャシー……。
「今度は違うの観ようぜ」
「ああ、そうする……」
すっかり萎えているところに、吉永がトントンと俺の手を叩く。
「ほら、マッサージ」
「はいはい」
仕方がない。
うつぶせに寝る吉永の上に覆いかぶさるようにして、腰に手を当てる。
「この辺?」
「んっ。その辺」
体重をかけながら指を押し込む。
「あ……、あー、良いわ、それ……」
「ジジイかよ」
「うるさいな。お前のせいだろ?」
「知らねえな」
指を押し込む度に、「あっ」とか「んっ」とか吉永が声を出すので、少しだけ変な気分になってくる。あくまでマッサージだ。細い腰とか気になるが。なんかいい匂いするような気がするが。
「……もしかして、シャワー浴びた?」
「あ? ん、サッとな……、ん、んっ……」
「……」
風呂上りか。どうりで、何だか肌が桃色だし、良い匂いは石鹸の匂いか。
(体温、高い気がするし)
布越しに触れる身体が、熱い。昨夜の情事を思いださせるには、十分な状況だった。
「あっ……、ん……」
ドキリ、心臓が鳴る。明らかに、声音が甘い。吉永の顔を見る。シーツに埋めていて、表情は解らない。けれど、耳が赤い。
「っ……、ん……」
ヤバイ。とっさに、マッサージをする手を止める。吉永が、振り返った。
「航平?」
「っ……」
潤んだ瞳に、心臓がぐっと抉られる。こんなことで、煽られてどうする。吉永は、ただの先輩だっただろうが。
決して、性の対象ではなかったはずだ。
(くそ……)
動揺をごまかすように、視線を逸らす。腰から、尻。太腿――。と、視線をずらして、ふと、ベッドの上に転がるコードに気が付いた。ピンク色のコードだ。その先に、スイッチらしい装置がある。
「……?」
目線で、コードの先を追う。吉永の身体に沿うようにコードが伸びている。そのコードは、腰のあたりで服に潜り込んでいた。
(え)
恐る恐る、コードを手に取る。服の中――スエットの中に、伸びている。
ドクドクと、心臓が鳴る。下腹部に、血液が集まる。
吉永が、俺の方を見た。口元に笑み。
「どこに入ってると思う?」
「――」
淫靡な囁きに、頭が沸騰しそうだ。
恐る恐る、スエットをずらす。白い尻が、剥き出しになる。
「……履いて」
「ないよ」
ゴクリ、喉を鳴らす。ピンク色のコードが、尻の割れ目にそって奥まで延びている。ぷるんと、尻を剥き出しにする。コードは、なめらかな双丘の奥――ひくひくと震える穴の奥へと、呑み込まれていた。
「っ……、吉永……これ」
吉永がニヤニヤ笑っているのは解っていた。掌で転がされているのも。揶揄われているのも。
(スイッチ、オンだ……)
よく見れば、スイッチが入っている。ずっとこの状態だったのだろう。そう思うと、余計に興奮して、ドクドクと脈が速くなる。唇が乾いている気がして、舌で舐める。股間が痛い。
「どんなのが入ってるか、見たい?」
吉永はそう言いながら、挑発するように腰を揺らす。コードを呑み込んだアナルから目を離せない。ゆらゆらと揺れる腰に合わせるように、視線が動く。
「見たいんだ?」
「っ……。見せたい、んだろ。……自分で、出してみろよ」
「んっ……、負けず嫌い。見たい、くせに……」
「良いから。手、使うなよ」
「あは。そういうこと、言っちゃう」
そう言いながら、吉永は見せつけるように尻を突き出した。
「んっ……」
ぐっと、アナルが収縮する。吉永の腹に力が入るのがわかった。
「んん……、ぁ、ん……」
吉永の顔が、真っ赤だ。俺に見られて、恥ずかしいのだろう。同時に、酷く興奮しているらしく、吉永の性器が勃起し、先端からトロリと精液をこぼす。
息を切らせながら、アナルに力を込める。コードが揺れる。奥から、ヴヴヴと音が響く。
「頭、見えて来た……」
「あ、あっ……」
吉永は気持ち良いのか、蕩けるような表情を浮かべた。
ピンク色のオモチャが、顔を覗かせる。アナルを拡げ、オモチャが這い出る。
「ん――っ……!」
ビクビクと、吉永の足が震えた。ローターが震えながら、シーツの上に落下する。穴はまだ収縮して、蠢いているようだ。
「あ……、あ……っ、ん」
涙目で息を切らせる吉永に、ゾクゾクと背筋が震える。
「エロ……」
思わず呟いた言葉に、吉永が妖艶に笑みを浮かべた。
12
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう
乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。
周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。
初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。
(これが恋っていうものなのか?)
人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。
ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。
※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる