31 / 31
三十一 いつの日かの夢
しおりを挟む「模擬店の権利、手に入れました~!」
昼休み、嬉しそうに報告しながら教室に入ってきたのは文化祭委員の松本さん。なにげに彼女ともまた同じクラスで…松本さん、去年も文化祭委員やってたよな。
模擬店は出店数に上限があるから、希望が多いと抽選になってしまう。その抽選を見事当ててきてくれたようだ。
次に文化祭準備にと充てられている時間で決まるよう、何を扱うのか、コンセプトはどうするか、案を出しておいてほしいと。
「光琉はなにかある?」
「シフトが一緒の時間で、日向が接客しないなら何でもいいよ」
「俺、接客しちゃダメなの?」
「ダメ」
これは…いつもの心配性か?
「でも俺も光琉に接客してほしくない」
光琉目当てで来るお客さん、絶対多いと思うし。女子とかオメガとか…心配だし。
「うん。俺もしない。一緒に調理担当したいね」
「それいいな! 前に一緒に作って楽しかった…から///」
やばっ。なんでこんな時に思い出すんだよ。
「日向、顔赤いけど、何考えてるの?」
「なっ!? 別にっ! 何も思い出してないしっ!」
「思い出し…? ふっ。日向のエッチ」
「んなっ!」
だから、一緒に料理した日に初めて最後までしたとか、そんな事思い出してなんかないってば。
あの日と前回の発情期でしかしてないからって…発情期中より記憶が残ってるからって、思い出したりしてないからな!
「ひーなた、拗ねないで?」
「拗ねてないし」
「可愛い。ねぇ、ちゅーしていい?」
「っ!! ダメに決まってるだろっ」
結局何の案もないまま昼休みを終えるチャイムが鳴ってしまった。
「無駄でしょうが一応お願いしておきますね。そういうのは2人きりでやってください」
「「どういうの?」」
「………もういいです」
諦めて席に戻っていった稜ちゃん。蓮も程々にねって言ってくるし…いやいや、今日は咎められるようなことしてないぞ? 俺も光琉もそれぞれ自分の席に座ってるし、キスだってちゃんと断ったし。
「あー、俺も彼女ほしい」
「なに日比野寂しいの? 俺が相手してやろうか?」
「おっ! 宇都宮、俺の彼女になる?」
「なんで俺が彼女なんだよ。日比野が彼女な」
なんて一樹と宇都宮はじゃれているけど、さっさと席に戻れよな。
*
「では飲み物はパック飲料とペットボトルで用意して、ケーキはスポンジケーキに生クリームを添える、これで決定にします」
スポンジケーキは予め用意しておき、数種類の生クリームのうちから注文が入った物を添える。これなら俺でも問題なくできそうだ。
「では次に担当を割り振ります! 希望がある人~」
「俺と日向は調理担当で」
早々に希望を伝えた光琉。
「えっ!? 香坂くんはできたら接客に回ってほしいんだけど…」
やっぱりそうだよな。光琉と宇都宮、稜ちゃんと蓮は集客が見込めるし、接客に回ってほしいって思うよな。
「岩清水くんは絶対に接客に回さないようにするし、シフトだって香坂くんと一緒にするから……お願いできないかな?」
「日向が俺に接客してほしくないって言ってるから、無理」
ちょっと待て。俺ってそんなに接客向いてないのか!? 失礼じゃね?
「俺だって接客くらいできるし…」
「日向、ダメだよ? 一緒に調理担当するって約束したでしょ?」
小さい声で呟いただけなのに、光琉には声が届いていたようで、俺の手を取り、真剣な顔でそう言ってきた。
「そうだけどさ…」
「一緒に調理しようね?」
「……うん」
俺だってそれが一番いいけど…光琉を接客に回したくないって、俺のわがままを聞いてもらっていいのかな?
「あの~香坂くん? 接客に回っては…?」
「無理」
「あ、はい」
絶対にやらないとの姿勢を崩さない光琉に、松本さんも諦めてくれたようだ。
ほんっとごめんな。でも俺は安心した。
話し合いの結果、俺、光琉、蓮、稜ちゃんは調理担当で、一樹と宇都宮は接客担当になった。松本さんは4人を順番に接客のシフトに入れたかったようだけど、それも諦め、俺達みんな同じシフト時間にしてくれるそう。
やったね!
「文化祭を楽しむ権利は俺達にもあるからね」
「それもそうだな」
みんなだって文化祭を回る友達と同じ時間にシフト希望を出すんだし、俺達が希望を出しちゃいけない理由なんてないしな。
「俺は日向と一緒なら4人はどっちでも良いんだけどな」
「あのさ…どっちかはみんなで、どっちかは……2人で回りたい…」
「っ!! 俺も! 日向~」
俺から文化祭デートを誘った事が嬉しかったようで、一応授業中なのに光琉の膝の上に横抱きにされてしまった。
「しないからな」
「いいじゃん」
「ダメ」
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
「ダメって言っただろ」
「口にはしてないよ?」
「…………もう、好きにすれば」
光琉に甘すぎだって? うん、それは俺が一番分かってる。
昼休み、嬉しそうに報告しながら教室に入ってきたのは文化祭委員の松本さん。なにげに彼女ともまた同じクラスで…松本さん、去年も文化祭委員やってたよな。
模擬店は出店数に上限があるから、希望が多いと抽選になってしまう。その抽選を見事当ててきてくれたようだ。
次に文化祭準備にと充てられている時間で決まるよう、何を扱うのか、コンセプトはどうするか、案を出しておいてほしいと。
「光琉はなにかある?」
「シフトが一緒の時間で、日向が接客しないなら何でもいいよ」
「俺、接客しちゃダメなの?」
「ダメ」
これは…いつもの心配性か?
「でも俺も光琉に接客してほしくない」
光琉目当てで来るお客さん、絶対多いと思うし。女子とかオメガとか…心配だし。
「うん。俺もしない。一緒に調理担当したいね」
「それいいな! 前に一緒に作って楽しかった…から///」
やばっ。なんでこんな時に思い出すんだよ。
「日向、顔赤いけど、何考えてるの?」
「なっ!? 別にっ! 何も思い出してないしっ!」
「思い出し…? ふっ。日向のエッチ」
「んなっ!」
だから、一緒に料理した日に初めて最後までしたとか、そんな事思い出してなんかないってば。
あの日と前回の発情期でしかしてないからって…発情期中より記憶が残ってるからって、思い出したりしてないからな!
「ひーなた、拗ねないで?」
「拗ねてないし」
「可愛い。ねぇ、ちゅーしていい?」
「っ!! ダメに決まってるだろっ」
結局何の案もないまま昼休みを終えるチャイムが鳴ってしまった。
「無駄でしょうが一応お願いしておきますね。そういうのは2人きりでやってください」
「「どういうの?」」
「………もういいです」
諦めて席に戻っていった稜ちゃん。蓮も程々にねって言ってくるし…いやいや、今日は咎められるようなことしてないぞ? 俺も光琉もそれぞれ自分の席に座ってるし、キスだってちゃんと断ったし。
「あー、俺も彼女ほしい」
「なに日比野寂しいの? 俺が相手してやろうか?」
「おっ! 宇都宮、俺の彼女になる?」
「なんで俺が彼女なんだよ。日比野が彼女な」
なんて一樹と宇都宮はじゃれているけど、さっさと席に戻れよな。
*
「では飲み物はパック飲料とペットボトルで用意して、ケーキはスポンジケーキに生クリームを添える、これで決定にします」
スポンジケーキは予め用意しておき、数種類の生クリームのうちから注文が入った物を添える。これなら俺でも問題なくできそうだ。
「では次に担当を割り振ります! 希望がある人~」
「俺と日向は調理担当で」
早々に希望を伝えた光琉。
「えっ!? 香坂くんはできたら接客に回ってほしいんだけど…」
やっぱりそうだよな。光琉と宇都宮、稜ちゃんと蓮は集客が見込めるし、接客に回ってほしいって思うよな。
「岩清水くんは絶対に接客に回さないようにするし、シフトだって香坂くんと一緒にするから……お願いできないかな?」
「日向が俺に接客してほしくないって言ってるから、無理」
ちょっと待て。俺ってそんなに接客向いてないのか!? 失礼じゃね?
「俺だって接客くらいできるし…」
「日向、ダメだよ? 一緒に調理担当するって約束したでしょ?」
小さい声で呟いただけなのに、光琉には声が届いていたようで、俺の手を取り、真剣な顔でそう言ってきた。
「そうだけどさ…」
「一緒に調理しようね?」
「……うん」
俺だってそれが一番いいけど…光琉を接客に回したくないって、俺のわがままを聞いてもらっていいのかな?
「あの~香坂くん? 接客に回っては…?」
「無理」
「あ、はい」
絶対にやらないとの姿勢を崩さない光琉に、松本さんも諦めてくれたようだ。
ほんっとごめんな。でも俺は安心した。
話し合いの結果、俺、光琉、蓮、稜ちゃんは調理担当で、一樹と宇都宮は接客担当になった。松本さんは4人を順番に接客のシフトに入れたかったようだけど、それも諦め、俺達みんな同じシフト時間にしてくれるそう。
やったね!
「文化祭を楽しむ権利は俺達にもあるからね」
「それもそうだな」
みんなだって文化祭を回る友達と同じ時間にシフト希望を出すんだし、俺達が希望を出しちゃいけない理由なんてないしな。
「俺は日向と一緒なら4人はどっちでも良いんだけどな」
「あのさ…どっちかはみんなで、どっちかは……2人で回りたい…」
「っ!! 俺も! 日向~」
俺から文化祭デートを誘った事が嬉しかったようで、一応授業中なのに光琉の膝の上に横抱きにされてしまった。
「しないからな」
「いいじゃん」
「ダメ」
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
「ダメって言っただろ」
「口にはしてないよ?」
「…………もう、好きにすれば」
光琉に甘すぎだって? うん、それは俺が一番分かってる。
71
お気に入りに追加
88
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
1/31
この男は独り言呑気に、ケーキを食っていた。
独り言呑気に→独り呑気に
ではないでしょうか?
掲載不要です🙏😊
ありがとうございます。
助かります!
14/31
「すぐそこなんです」
そう言って、青いがすぐ傍の
青いが→アオイが
では?
掲載不要です。
ありがとうございます。
助かります!
こんにちは!初コメ失礼します!
設定も文体も内容もストライクで、更新されるたびにドキドキしながら読ませていただいております…!!
八木橋さんが歳故に一歩引こうとしているしてる気持ちもアオイくんの若さも、文体がさっぱりと読みやすいおかげでスッキリ入ってきます…とても好きです!!
暑い日が続きますがお身体に気をつけてください!更新、首を長くして待っています!🤤
感想ありがとうございます。m(_ _m)
気に入って頂けて嬉しいです!
励みになります!(∩´∀`)∩