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二十九 アオイの部屋で
しおりを挟むアパートに着くなり、八木橋は壁に背を押し付けられ、唇を塞がれた。戸惑うも、アオイの体温の熱さに、腕を背に回してキスを受け入れる。
明かりもつけぬまま、舌を絡めあい、奪うようなキスを繰り返す。暗い室内に、衣擦れの音と濡れた音が響いた。
「は、ん……、アオ……っ」
舌が蕩けそうに熱い。何度もくちくちと口内をかき混ぜられ、頭の芯がぼぅっとしてくる。
アオイが唇を離し、耳元に囁く。
「暗くて八木橋さんの蕩け顔見えないの、残念」
「アっ…、アオイくんっ!」
カァと、顔が燃えるように熱くなる。年下なのに、アオイはこうして、からかってくる。少し、意地悪だ。
首筋の匂いを確かめるように顔を埋めるアオイに、八木橋は胸を押して抵抗する。
「アオイ、くんっ……、汗……っ」
「オレ、八木橋さんの匂い、好きですよ」
「ちょ、ちょっと」
首筋を舌でなぞられ、ビクンと肩を揺らす。
「まあ、八木橋さん、嫌そうだから。シャワー、浴びますか」
「う――、うん……」
頷きながら、ドクドクと心臓が鳴る。シャワーという単語だけで、酷く落ち着かなくなった。アオイがクスリと笑う。余裕がないのを見透かされ、恥ずかしいやら情けないやらだが、仕方がない。アオイには、勝てそうにないのだ。
「八木橋さん、準備解らないでしょ? 一緒にお風呂入ろう」
「――っ」
ゴクリ、喉をならす。それはつまり、アオイに一任すると同義で。
「あ、あのっ……」
「大丈夫。任せて。ね?」
そう言われてしまえば、頷くしかなく。八木橋はアオイに押しきられるように、シャワーへと連れて行かれた。
◆ ◆ ◆
シャワーの音が室内に響く。耳元には水音とともに、アオイの荒い呼気が聞こえてくる。ざわざわと鼓膜を擽る声に、心臓がバクバクする。
八木橋は壁に手をついて、背後からアオイに抱き締められていた。耳、首筋とキスをされ、後ろから腹や太股を撫でられる。
「ア、オイ……、く…」
「八木橋さん、綺麗な身体、してますね」
「っ、そんな、こと……」
社交辞令なのは解っているが、アオイに言われると、ムズムズする。嬉しいのだと、自分でも解って、気恥ずかしくなった。
(十三も年下の子に言われて、嬉しいいなんて……)
他人には、見せられないな。そう思う。
「八木橋さん、脚、開いて」
「っ……、は、恥ずかしいん、だけど……」
「これからもっと恥ずかしいコトするのに?」
「っ……、アオイくん」
咎めるように振り返る。アオイはクスクスと笑っていた。
「お尻、突き出して。中、キレイにするね」
「あっ……」
シャワーを当てながら、アオイの指がヒダを擽る。指先の腹で窄まりを撫でられると、妙な感覚が沸き上がる。
(っ、これ……)
気持ち良い。性器を弄くるのとは違う快楽が、確かにある。知識としては知っていたが、このような快感とは思っていなかった。感じたことのない感覚に、膝がビクッと震える。
「……中、入れるよ」
「ひっん…っ!」
ソープの滑りを使って、アオイの指が窄まりの中に侵入してくる。違和感と圧迫感に、息を吐いた。くちゅくちゅと、入り口付近を出し入れされる度に、ぞくぞくと背筋が粟立つ。異物を挿入された違和感こそあるものの、思ったよりも抵抗はない。
「あ――…、ん…」
じわじわと快感が上がってくる。指が増やされ、肉輪を拡げるように、解される。少しずつ、そこが柔らかくなっているのが解る。アオイは丁寧に、八木橋の身体を作り変えていく。
「……平気? 痛かったり、しない?」
アオイが耳元にキスをしながら囁く。背中に、アオイの肌を感じて、ゾクリとした。他人の体温が、心地良い。アオイの声に、頭がクラクラする。
「ん…、だ、いじょ……、ぶ……。気持ち、良く、なれそ……」
八木橋の返答に、アオイの指が止まった。動きを止められ、もどかしくて腰を捻る。
「あっ、ん……、アオイ、く?」
アオイがぎゅうっと、抱き締めてくる。体温が、熱い。尻に、硬いものがあたった。
「本当に、自覚なく煽るんだから……」
「あお…?」
アオイの唇が、八木橋の唇を塞ぐ。舌を絡めあい、深く口付ける。アオイの指が、再びグチュグチュと動き出す。
「んぅ、っ……、ふ……ん」
逃げる舌を捕らえられ、何度も強く吸われる。激しいキスに、意識が朦朧とする。同時に、穴を弄くられ、ビクビクと身体を震わせる。
「あ、あっ……、アオイ…ん、そんな、同時……」
「八木橋さん……、可愛い……」
食べちゃいたい。と笑いながら、アオイが唇に噛みつく。八木橋の身体がふらつくのを、アオイが支える。
アオイはシャワーを掴むと、シャワーヘッドをアナルの方に近づけた。
「傷つけたくないから、ゆっくりするね」
「あ……っ、お、湯が……」
「うん……。中、キレイにするから」
「っ……」
その意味を理解して、八木橋は何も言えずに真っ赤になった。
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