上 下
30 / 40

三十 オモチャで

しおりを挟む


 グラスが空になったと同時に、会話が途切れた。カノは空のグラスを手持ち無沙汰に揺らしながら、静かに黙っている。その様子が絵になるな、と想いながら、清はカノを見つめていた。

 沈黙を破ったのは、風呂が沸いたのを告げる電子音だった。

「あ」

 思わず振り返って浴室の方を見る清に、カノが妖艶な笑みを浮かべて清の手をとる。

「一緒に、入ろうか」

「――う、ん……」

 甘い誘いに、抗えず、頷く。もっとも、清がカノを拒絶することなど、どんな時でも起こり得ないのだが。



   ◆   ◆   ◆



「カノくん、ちょっと、狭くない?」

「それが良いんだろ」

 首筋にチュとキスをして、カノが囁く。

 狭い浴槽にぎゅっと抱き合いながら浸かって、清は恥ずかしいやら、興奮するやら、非常に落ち着かない。狭いせいでカノにしがみつくようにしているので、結果としては膝に乗る形になっている。

「あ、ん……、カノく……っ」

 緩い愛撫に、ピクピクと反応する。カノの唇が鎖骨や胸を滑る度に、甘い声が漏れて出た。

 ゴリとしたものを尻に感じて、清はビクッと肩を揺らす。

「カ、カノくん……っ、あ、当たってるんだけど……っ」

「仕方ねえだろ。この体勢じゃ。それに、清も勃ってる」

 カノの手が、清の先端部分を指で弄くる。「ひぅ♥」と甘い声を漏らす清に、カノが笑った。

「このまま挿れちゃう?」

「ヤ、ヤダ……っ」

「騎乗位やってねえじゃん?」

「無理無理! カノくんのでかいんだから!」

 カノのものを下から突き上げられたら、大変なことになるのは目に見えている。絶対に身動きが取れなくなる。

「まあ、それはそのうちで良いか。拡張前だし」

「なんか怖いこと言ってるしっ……ん♥」

 口に乳首を含んで、ちゅうと吸われる。胸が感じるようになるとは、思っても見なかった。今じゃ、服が擦れるのも、ちょっと気持ち良くなってしまう。

「あ、ん……っ♥ ソコ……、そんなにっ……♥」

「可愛い乳首。……清、いつもより、酔ってる?」

「あ、あっ♥ ん……、少し……」

 湯船に浸かったせいか、いつもより酒が回っている。カノは「そうか」と言って清の腰に腕を回すと、ヒョイと抱えあげた。

「わっ!?」

 そのままタオルにくるまれ、ベッドの方へ連れていかれる。ベッドに横たえるとすぐに、カノが口づけしてきた。

「あ――ん……」

「長湯、しない方が良いだろ?」

「ん……」

 タオルを取り払って、湿った肌を撫でていく。カノの手は、清の気持ちいいところを、的確に触れていく。

「あ……、カノ……」

「清、脚、開いて」

 ローションを手にしながら言うカノに、清は恐る恐る脚を開く。何度やっても、慣れない。死ぬほど恥ずかしい。女のように脚を開くことも、穴に触れられることも。

 ぬぷっと、ローションの滑りを借りて、カノの長い指が入ってくる。何度も受け入れたそこは、さしたる抵抗もなく、中へと導いて行く。指がグチュグチュと内部を擦り、腸壁を引っ掻く。甘く、切ない痺れに、清は腰を揺らした。

「あ――、ん……っ」

「清も、慣れたよな」

「っ、ん……、カノくんの、せいだよ」

「ホント、最初の頃よりエロくなっちゃって……」

 言いながら指を増やされ、「あぅ♥」と声を上げる。前立腺を押し潰すように刺激され、ビクビクと膝を揺らした。

 清の恥態に、カノがハァと息を漏らす。こういうときのカノは、『チンコが苛ついている』ので、大分興奮状態のはずだ。

「あー、あ、あ♥ カノくんっ……♥ カノくんっ」

「指だけでイいきそうじゃん」

「あ、あ……っ♥ イく、イっちゃうっ……♥ 気持ちいい、それっ……♥」

 イきそうだというのに、カノは何故か、ずるんと指を引き抜いてしまった。咄嗟に、口から「あ……」と残念そうな声が漏れる。

「あ……、あ…」

「不満そうな顔して」

 クスリと笑うカノに、拗ねた顔をしてみれば、カノはムギュと清の鼻を詰まんで来た。

「んむっ!」

「可愛い顔、すんな」

「なんだよ、もう!」

 フンと鼻を鳴らし、唇を結ぶ。意地悪なカノだが、いつもならすぐに、挿れてくれるはずだ。清はカノを迎え入れようと、腰を軽く上げる。

「カノくん、早く……」

「煽るなよ」

 そういうカノの目元は、興奮で朱に染まっていた。はやく、その猛ったもので貫いて欲しい。カノが欲しくて、身体が疼いている。

 なのに、カノが手にしたものに、清は顔を強ばらせた。

「うげ」

「うげ、じゃねーよ。せっかく買ったんだから」

「え、ヤダって! カノくんのが良いっ!」

「それは嬉しいけどさ」

 逃げようとベッドから降りようとした清の腕を、カノが捕らえた。そのまま、何か金属製のもので、腕を拘束される。

「え? は?」

 カシャンという乾いた音に、視線を向けた。銀色の武骨な手錠が、手首に繋がっている。

「清ってば、逃げそうだったから。さっき一緒に買っておいた」

「げっ」

 しっかり腕を拘束され、動きづらくなる。両腕が使えないだけで、かなり不自由だ。

「清は、オモチャで感じるのが怖いんだろ?」

「っ、当たり前、だっ! 俺は、カノくんしかっ……」

 ピト、とアナルにバイブの先端を押し付けられる。ぬちゅ♥ と粘液に触れる感触に、快感からゾワと皮膚が粟立つ。

「っん♥」

「オレが選んだ、オレの分身みたいなもんだろ? ホラ」

「あ、あっ……♥ 入っ……♥」

 ぬぷぷ、と、肉を割りさいて、バイブが入ってくる。先端は太くなっており、途中の部分は節がいくつもあって、グロテスクな見た目をしていた。それが、ゆっくりと挿入されていく。

「あ、あ……、カノくん、カノくんっ」

 カノ以外にイかされたくない。そう思っていたのに、カノの分身だと言われ、その気持ちが揺らぐ。

 バイブはシリコン製だからか、思ったよりも硬くなく、穴によく馴染んだ。所々にある突起や括れが、これが快楽を得るための道具なのだと、思い知らせてくる。

「ひぅ♥ ん……っ!」

 ずぷん♥ 嫌がっていた癖に、身体は快楽に抗えず。清はあっさりと、それを奥まで呑み込んでしまった。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

【完結】もっと、孕ませて

ナツキ
BL
3Pのえちえち話です。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...