チョロイン駄目リーマン、ホストに堕つ

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
上 下
27 / 51

二十七 買い物デート?

しおりを挟む

 その翌週、清は予定どおり萬葉町へとやって来た。今日はカノと、約束の同伴デートである。買い物デートは久し振りなので、なんとなくワクワクしていた。

(楽しみだなー。カノくんに似合う服見ても良いし。あ、カノくんが使ってる香水欲しいんだよな。枕にかけて寝たいんだよね)

 清は香水の類いは使っていない。なんなら柔軟剤も使っていない。寮に備え付けの業務用石鹸や洗剤の雑な香りである。とはいえ、香水の薫りが嫌いなわけではない。特に、カノの匂いは好きだ。最近はあの薫りに抱き締められているお蔭で、匂いを嗅ぐとドキドキしてしまう。

 そんなカノの薫りを枕に振りかけたら、毎日添い寝してる気分になれるんじゃないか。というやつである。抱き枕にかけても良い。

 そんな妄想を膨らませながらカノを待っていると、人混みの中から一際眩い人物がやって来る。見慣れた金髪に、清はむにゅと頬を緩めた。

「カノくんっ」

「おー。待った?」

「全然。ハァー、やっぱカッコよ」

 溜め息を吐く清に、カノがニマリと笑う。カノは、清に褒められるのが好きなようだ。清もカノを褒めるのが好きなので丁度良い。

「で、どこか行きたいところあるの?」

 促され、歩きながら行きたい場所を伝える。こうして並んで歩くとき、清とカノはくっつきそうなくらい距離が近い。誰が見ても、デートだと思う距離だ。

「香水みたいなーって。カノくんと同じの欲しい」

「ふーん。でもアレ、ここ辺に店ないよ」

「ええっ!? そ、そっかぁ……」

 衝撃の事実に、ガッカリして項垂れる。売っている店がないとは、思ってもいなかった。

「じゃあ、今日はうち来なよ。買い置きあるから、それやるし」

「ええっ、良いの?」

「良いよ。清にプレゼントしたいしさ。まあ、他にもプレゼントしたいものがあるんだけど」

「えっ……。な、なに?」

 カノからのプレゼントなんて、嬉しいに決まっている。なんだろうかと、ソワソワしてカノを見上げる。

「まあ、お楽しみってことで。さっそく買いに行こうか?」

「うんっ♥」



   ◆   ◆   ◆



「あの、カノくん……? ここ……」

「入り口に立ってると迷惑だから。入るぞ」

「あっ、ちょっと待って!」

 カノを追いかけ、慌てて中へと入る。目に飛び込んできた光景に、清は顔をひきつらせた。

 ここは萬葉町にある、バラエティショップである。外から中が覗けないようになっている構造と、怪しい文言の看板。看板にはデカデカと『大人のおもちゃ♥』『各種アダルトグッズあります』と書かれている。入り口付近には需要が多いのか、テンガやオナホなど薬局でも買えるようなライトな商品が。少し進むとペラペラのコスプレ衣装などが置かれている。パーティーグッズとしての需要もあるようだ。

(うはー、初めて入った)

 初めて入ってみたが、思ったよりも普通だ。今まで興味はあったのだが、勇気がなくて入ったことがなかった。学生時代ならノリで入れたかも知れないが、幸か不幸か、清の地元には近くにそういう店がなかった。店内は、ドンキみたいな雰囲気がある。ごちゃごちゃしていて、なんだか面白い。エロいという感覚よりも、好奇心が先に立った。

「思ったより、普通ね?」

「そりゃ、こういうのは話題用だったりだろ。そもそも、セックスはコミュニケーションだし」

「あ、うん」

 カノがセックスをコミュニケーションだと言いきるのが、少し意外だ。性欲を発散しているわけではなかったのか。

(あれ? じゃあ、なんで俺と?)

 密かな疑問が浮かぶが、考えても解りそうにない。

 棚に置かれている商品に、カノが手を伸ばす。この辺りの商品は、バイブ類だ。

「あ、あの、カノくん?」

「清さぁ、全然、平日一人で弄ってないだろ」

「えっ?」

 カノの口調に、ビクッと肩を揺らす。

 週末あれだけヤっておいて、平日ヤりたいかと聞かれれば、清はそうではない。まして、一人でする時にアナルを弄ることはないだろう。

「週末に拡張してもさぁ、翌週には戻っちゃうんだよ。全然、オレの入らないじゃん」

「い、いや、入ってるだろっ? それに、アレ以上入らないって! 奥届いてるもん!」

 言いながら、奥を虐められる感触を思い出し、ぞくんとする。カノは執拗に、結腸口を突くので、嫌でも奥まで入っているのが解ってしまうのだ。

 反論しながら、清はふと、ここに来た目的について想いを馳せる。大人のおもちゃ屋に来て、バイブのコーナーを眺める理由が、他にあるのか。

「――もしかして、ソレ、俺に使おうとしてる?」

「逆に、誰に使うと思ってんだよ」

「――イヤイヤイヤ! おおお、おかしい! おかしいよ!」

「店で騒ぐなよ。清」

「うぐぐぅ……。いや、カノくん、ちょっと……」

(その凶悪な棒(笑)を、俺の穴に入れようと? いや、カノくんの入ってる時点で、入るとは思うけども)

 そういう問題じゃないのだ。清はゲイじゃない。アナルでセックスするのは、相手がカノだからだ。別にアナニーが好きなわけでもない。最近は気持ちいいのも知ってしまったが、好き好んで尻の穴をいじくり回したいわけではないのだ。

「コレあたり良さそう。大きさも」

「いいい、要らないよ? 俺、使わないよ?」

「アナルパールも付けるか」

「カノくんっ! 初プレゼントがソレは嫌だよ!」

 しがみついて抗議するが、カノは無視してバイブを物色する。どうやら、購入は決定事項らしい。

「だからさぁ、清のケツ拡張しねぇと、オレのが入らねえって言ってんだろ。毎回、どんだけ苦労してると思ってんだよ」

「いや、それは、そう、だけど」

 とはいえ、最初よりはスムーズに挿入できていると思う。最も、カノが大変と言うなら、申し訳ないのだが。

「それに、オレのプレゼントなら、使うよな?」

「えっ」

「もちろん、使うよな♥」

「は、はいぃ……」

 笑顔の圧力に、清は反射的に頷く。結局、カノは清にバイブ二本とアナルパール一本を買って、プレゼントしてきたのだった。



しおりを挟む
完結しました! 応援ありがとうございました!
感想 0

あなたにおすすめの小説

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

「じゃあ、別れるか」

万年青二三歳
BL
 三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。  期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。  ケンカップル好きへ捧げます。  ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

処理中です...