上 下
16 / 40

十六話 勘違いじゃなかったようです

しおりを挟む
「ここが、カノくんの家……っ」

 マンションを見上げ、感動して震える清の背をカノが押す。促されるままに部屋に入る。部屋の中は、良い匂いがした。いつもカノが着けている香水の匂いだろうか。室内は物が多い。ほとんどは服だ。クローゼットに入りきらなかった服が、その辺に掛かっている。物は多いが、整理はされている。初めて入る部屋の雰囲気に、清は緊張してソワソワした。

「すごい香水の数……。これいつも着けてる奴――?」

 棚の上に、大小様々な香水ボトルが置かれていた。どれがカノの香水なのか、問いかけようとした時だった。ぐい、と背後から抱きしめられ、頭を掴まれる。そのまま、カノが唇に噛みついた。

「っ、んっ!?」

 既に何度目というキスをされ、動揺よりも「何で!?」という気持ちが強く、驚いて目を見開く。カノは舌先で清の唇をこじ開けると、ぬるりと舌を口の中に忍ばせて来た。

「あ――、ん、ふっ…」

 鼻腔から息が漏れる。カノの舌が口の中を掻き回す。粘液を混ぜ合う感触に、ゾクゾクと身体が震えた。

(あ――ヤバい……)

 カノの匂いのする部屋で、誰の目も気にならない場所でのキスに、身体が熱くなる。マズイと、カノの胸を押す。だが、キスは激しくなる一方だった。

「あ、んぅ……カノっ…、んっ」

 捩じ込まれた舌に翻弄される。こんな激しいキスを、清はしたことがない。唾液が頬をつたい、顎まで落ちる。

 呼吸が荒くなる。身体が燃えるように熱い。脳が、溶けそうだ。

「あ、はっ……、は――、ん……」

 ちゅぱ、と音をたて、ようやく唇が離れた。離れたあとも、唇がじんわりと痺れている。

「あ――……♥」

「気持ち良くなっちゃった?」

「っ!」

 指摘され、真っ赤になる。羞恥心からカノの傍から離れようとしたのに、カノがそれを許さなかった。

「わっ、は、離してっ」

「ダメ」

「っ、今、ちょっとヤバいからっ……」

 キスのせいで、少し勃ってしまった。カノのせいではあるが、知られるのは尊厳が危うい。

「清」

「うっ……、カノくん、ダメ……、だってぇ……っ♥」

 カノの唇が、耳朶を食む。なぞるように舐められ、ゾクゾクと背筋が粟立った。

「あ、っ……」

 カクン、膝から力が抜ける。それをカノがヒョイと抱え、お姫様抱っこしてしまった。

「うひっ」

(え、俺、そんな軽くないのに)

 清は細身だが、背は平均ほどはあるし、男だけあってそれなりに重い。それを軽々抱えあげるカノに、驚きと同時にときめいてしまう。

(あれ、でも、なんで)

 何故抱えられたか解らず、カノを見る。カノが何か企んでいるような顔で清を見ていた。

「カ、カノくん……? その、家飲みするって」

「お風呂、入ろうか」

「へ」

「洗ってやるよ」

 キラキラした笑顔でそう言われ、清は意味が解らず頭がぐるぐるしてしまった。

「へ、ちょ、カノくんっ!?」

「はいはい、暴れんな」

 脚で器用にシャワーの扉を明け、室内に入る。清が戸惑っているうちに、あっという間に服を脱がされてしまった。

「あっ、ちょ、尊厳がっ」

 清は半勃ちの性器を隠すように、前屈みになる。すると、目の前でカノがシャツを脱ぎ始めた。

(――っ)

 カノの肉体に、ドキリと心臓が脈打つ。細身なのに、盛り上がった胸と、六つにはっきり別れた腹。肋の浮いた自分とは、まるで違う。

(身体までかっけえ……)

 思わず見惚れていると、すっかり裸になったカノに腕を掴まれ、シャワーの前に押し出される。

「わっ、ちょちょ」

「シャワー出すぞ。最初冷たいから」

「ひっ! 冷たっ!」

 シャワーの冷たさに、ビクッと震える。だんだんお湯になるシャワーにホッとする。と、背中に肌の感触を感じて、ビクンと肩が揺れた。

「あ――」

 カノがソープを手にして、清の身体に触れる。背後から胸の辺りを泡で滑らせて、丁寧に洗われて行く。

「カノ…く、自分でっ……!」

「なに隠してんだよ」

「っ……、いや、そのっ……」

「小さくても笑わねえよ? 大抵はオレより小さいし」

「は――」

 カノのその言葉に、チラリと振り返る。カノは堂々と、隠しもしていなかった。股間部分に目をやると、冗談みたいなサイズのモノが、ぶら下がっている。

「エグッ!? は!? エロ漫画かよ!? スプレー缶くらいない!?」

 思わずじっと見てしまう清に、カノがケラケラと笑った。凶悪といっていいサイズだ。グロテスクでもある。だが、清も男の子なので、デカいというものには好奇心が湧きたった。平時でこれなら、勃起したらどうなることか。恐ろしくもある。

「デカいだろ?」

「デカすぎだって!」

「清のと、比べてみる?」

「ふえ」

 ぐい、と腰を掴まれ、身体を正面に向けられる。向かい合わせになる身体に、カァと顔が熱くなった。

「ちょ、見んな……っ」

「オレのも見ただろ」

「っ」

(あ)

 見られた。見られた。見られた。

 カァ~~~。全身ぶわっと赤くなって、羞恥心がこみ上げる。勃っているのを、見られてしまった。

 カノはそんなことは気にも留めず、下腹部を引き寄せ、互いの性器をピタリとくっつけ合う。

「ひ、んっ……♥」

「ホラ。……こうやって見ると、清の可愛いな」

「っ……、カノ、くんのが、デカすぎなんだって……っ」

 互いの性器が、僅かに擦れる。敏感な部分が触れ合って、ビクビクと腰が揺れた。

「バカにしてるわけじゃねえよ? ほら、一緒に擦ったら……」

「あっ、あ、カノっ……、ん」

 先走りが溢れ、ぐちぐちと音を立てる。カノは腰を揺らしながら、泡のついた手で清の胸を撫でた。ぬるりとしたソープが肌を滑る感触に、ぴくぴくと皮膚が跳ねる。爪の先が、乳首を引っ搔いた。

「あ――、あ、カノ、待っ……」

 ヤバイ。何か、マズい気がする。そう思い、カノの胸を押し返す。ドクドクと、心臓が鳴る。ガンガンと、警鐘が鳴り響く。

「っ、カ、カノく……っ……、そのっ」

「あ? なんだよ」

「っ……、お、俺の自意識過剰かも、知れないけどっ……、なんか、変な空気に、なってるっ?」

 ぐーっとカノの胸を押し返すが、力では勝てそうになかった。何だか、気のせいかも知れないが、貞操の危機のような気がしている。カノが自分に、そんな空気になるなど、あり得ないと思いつつ、状況だけ見ればそうとしか見えず。

「は? 何言ってんのお前」

「あっ、だよね! 俺の勘違い――」

「キスまでした男の部屋にあがっておいて、何言ってんの」

「――」

(あれーっ? やっぱり!?)

 ビクッと、清は身体を震わせた。押し返す力を強めたが、一向に逃げられそうにない。その上、下半身をがっしりと抑え込まれてしまった。

「ちょ、ちょっと、ストップ!?」

「今更何言ってんだ。オレのこと、好きな癖に」

 そう言って、カノが唇を塞ぐ。んむ、と息を切らし、清は首を振った。

「すすす、好きだけどっ! でも俺、女の子としかやったことない――」

「は。そんなこと。オレもそうだし、お互い様」

「っえ!?」

 驚いて、声を上げる。こんなことをするくらいだし、男性経験もあるのだと思い込んでいた。

「な、なんでっ……!?」

 理由が解らず、混乱する。カノが清の頭を掴んで、じっと見つめて来た。その瞳に、確かに欲望を感じて、ぞわりと背筋が粟立つ。

「清の泣いたり困ったりしてる顔、なんかスゲー、チンコがイラつくんだわ」

「ぇ」

「だから。抱く」

 はっきりと宣言され、清は真っ赤になった。その上、何だかろくでもないことを言われた気がする。

「い、い、いや、だって……カノくんのチンコ、スプレー缶じゃんっ!!」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

SODOM7日間─異世界性奴隷快楽調教─

槇木 五泉(Maki Izumi)
BL
冴えないサラリーマンが、異世界最高の愛玩奴隷として幸せを掴む話。 第11回BL小説大賞51位を頂きました!! お礼の「番外編」スタートいたしました。今しばらくお付き合いくださいませ。(本編シナリオは完結済みです) 上司に無視され、後輩たちにいじめられながら、毎日終電までのブラック労働に明け暮れる気弱な会社員・真治32歳。とある寒い夜、思い余ってプラットホームから回送電車に飛び込んだ真治は、大昔に人間界から切り離された堕落と退廃の街、ソドムへと転送されてしまう。 魔族が支配し、全ての人間は魔族に管理される奴隷であるというソドムの街で偶然にも真治を拾ったのは、絶世の美貌を持つ淫魔の青年・ザラキアだった。 異世界からの貴重な迷い人(ワンダラー)である真治は、最高位性奴隷調教師のザラキアに淫乱の素質を見出され、ソドム最高の『最高級愛玩奴隷・シンジ』になるため、調教されることになる。 7日間で性感帯の全てを開発され、立派な性奴隷(セクシズ)として生まれ変わることになった冴えないサラリーマンは、果たしてこの退廃した異世界で、最高の地位と愛と幸福を掴めるのか…? 美貌攻め×平凡受け。調教・異種姦・前立腺責め・尿道責め・ドライオーガズム多イキ等で最後は溺愛イチャラブ含むハピエン。(ラストにほんの軽度の流血描写あり。) 【キャラ設定】 ●シンジ 165/56/32 人間。お人好しで出世コースから外れ、童顔と気弱な性格から、後輩からも「新人さん」と陰口を叩かれている。押し付けられた仕事を断れないせいで社畜労働に明け暮れ、思い余って回送電車に身を投げたところソドムに異世界転移した。彼女ナシ童貞。 ●ザラキア 195/80/外見年齢25才程度 淫魔。褐色肌で、横に突き出た15センチ位の長い耳と、山羊のようゆるくにカーブした象牙色の角を持ち、藍色の眼に藍色の長髪を後ろで一つに縛っている。絶世の美貌の持ち主。ソドムの街で一番の奴隷調教師。飴と鞭を使い分ける、陽気な性格。

敗北騎士団絶頂地獄に堕ちる

彩月野生
BL
傭兵達と組んだオーク、ゴブリン共になぶられ、快楽を叩き込まれ、堕落する騎士達。 Pixivフォロワー様1500人突破お礼作品。 完結後は同人誌にします。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

βの僕、激強αのせいでΩにされた話

ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。 αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。 β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。 他の小説サイトにも登録してます。

【R18】奴隷に堕ちた騎士

蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。 ※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。 誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。 ※無事に完結しました!

処理中です...