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26 曖昧な関係
しおりを挟む(髪がカピカピ)
髪に着いた精液が乾いて、カピカピしている。前髪を気にしていたおれの肩を抱いて、芳がベッドに引きずり込む。
「ちょっと」
「まだ早いだろ」
皮膚の匂いを吸われ、恥ずかしくて身を捩る。だが、芳はピッタリと身体をくっつけ、離してくれない。
「芳、ダメだって……」
「なんで? いくらでもその気になるから?」
「解ってるなら聞かないで」
ぺし、と額を叩いてやったのに、芳は機嫌良さそうに笑っていた。
「あんた、可愛いな。身体も素直だし」
「うるさいなぁ。また淫乱とか言うんでしょ」
「良いだろ。ここじゃ、俺しか知らねえんだし」
「……」
そんなの、世界中さがしても芳しか知らないよ。おれってば、芳の前ではエッチになっちゃうけど、本当は違うんだから。
返事をしないままでいると、バサッと布団をずらし芳が覆い被さって来た。頬にキスされ、ピクンと肩を揺らす。
「ん、芳っ……」
「その気にさせてやろうと思って」
「あっ、ばか」
乳首を弄くられ、ビクッと肩が跳ねる。両の乳首を同時に指で責められ、甘い声があがった。
「あっ、んぁ」
「指と口、どっちが良いんだよ」
どちらが良いかと聞かれれば、どちらも良いのだが。とろんと溶けた顔で、芳を見る。
「ん……、舐めて……」
呟きに、芳が荒々しく胸に吸い付いた。じゅうっと強く吸われ、「いぁっ」と声をあげる。舌で舐られ、もう片方を指が刺激する。
乳首を弄られているだけなのに、ゾクゾクしてしまう。快感が腰を突き抜け、モゾモゾと脚を動かした。
「悠成……、どうして欲しいか言って」
「っ……。い、いじわる……」
「良いから」
何で、言わせるんだよ。自分だってしたいクセに。
芳の視線に促され、震える唇でねだった。
「芳の……、挿れて……気持ち良く、して……」
おれの願いに、芳は満足そうに笑って、ご褒美みたいにキスをしてくれた。
◆ ◆ ◆
二十七年も童貞処女だったのに、最近、芳とエッチばかりしている。最近では『部屋行って良い?』とメッセージがくれば、お誘いと言うことだ。自分でも『今日は暇?』なんて送っているので、本当にどうしようもない。
芳との関係は、そうするのが当たり前みたいに自然で、おれは流れに身を任せたままだ。本当は大切なことを聞いていない気がするけど、関係が終わりそうで聞くことは出来ない。
彼女作らないの? とか、絶対に。
(聞けない、よなっ……)
書類を束ねながら、うーんと唸る。仕事をしながら考えることではないが、つい思い出すのは芳のことばかりだ。あと亜嵐くんのことね。
何というか、『彼女作らないの?』とか、空気が読めなさすぎる。少なくともおれが言うことじゃないだろう。そりゃあ、気になる。彼女が出来たら、イコール関係終了ってことだろうし、芳に彼女が出来ること自体、モヤモヤする。
けど、いずれは来る未来なのだ。今は傷心中で、彼女を作るつもりがないのだろう。けど、芳はゲイじゃない。いずれは彼女を作って、結婚して、子供も作る。芳はそういう、『普通の人』だ。
(彼女が出来たら、紹介しないで貰えるとありがたいな)
仲良くなったけど、芳の彼女だなんて、どんな顔すれば良いか解らないし、仲良くできるわけがない。だから、そっとフェードアウトして欲しい。芳がどうする気なのか知らないけど。
ハァと溜め息を吐いたところに、高橋竜樹が声を掛けて来た。コーヒー片手にうろうろしているが、こいつはいつも休憩中なんだろうか。
「どした? 悩み?」
「いや。そういう訳じゃない」
悩みといえば悩みだけど、悩みというほどのことでもないんだよな。何しろ、今現在、問題になってないから。未来に起こる問題だけど、今は起きて居ないしそのことを思い悩んでも仕方がない。気になるのは事実だけど、それで悶々とするのはおれの性格にはあっていない。陰キャではあるが、ポジティブではあるのだ。
「暇そうだな?」
「そうでもないよ~。現実逃避。設計変更だってさ。マジでツラ。今から調達に部品確認しに行くんだけど、おっかないんだよね~、お前最近仲良いじゃん、星嶋くん」
「芳?」
「そーそー。彼、怖くない?」
「怖い」
見た目怖いよね。おれも最初怖かったし、怒りっぽいり。最近はそういう感じより甘い雰囲気の方が多いから、怖いなんて思わないけど。竜樹は心底嫌そうな顔をしているので、まあ、怖いのだろう。
「芳のところ行くの? おれも行こうか?」
「マジで? 助かる~」
まあ、制服姿の芳を拝みたいだけなんだけど。
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