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20 なし崩しでない行為

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 やって来たのは、駅近くにあるホテルだった。駅のほうにホテル街があるのをおれは初めて知った。パブとかキャバクラがあるのはなんとなく知っていたが、来たことはない。飲み会は二次会は行かないタイプである。

「はぁー」

 ラブホテルって、こういう感じなんだ。アメニティとかも色々置かれている。イメージにある、少し薄暗くてイヤらしい雰囲気はなく、こざっぱりしたホテルだった。

「何だよ?」

「いや、思ったよりフツー?」

 おれの返事に、星嶋は傍に寄って腰に手を回しながら瞼に唇を寄せた。

「変わったとこのが良かった?」

(そういうのもあるの?)

 ビジネスホテルみたいなホテルばかりじゃないのか。ピンク色したやつとかあるのかな。

「まあ、興味は……んっ」

 ちゅ、と耳にキスされ、ぞくんと身体が震えた。

「じゃ、今度な」

「今度っ、あっ」

 今度って? と聞こうとしたが、ベッドに押し倒され言葉が掻き消える。星嶋が上に覆い被さった。

「シャワー、後で良いよな」

 そう言って首筋に顔を埋め、キスを落とす。星嶋の手のひらが服の裾から入り込み、平たい胸を撫でた。

「あっ、ん」

 指先がくにくにと乳首を摘まむ。そこを弄られるのは、慣れない。けれど甘い痺れがウズウズと沸き上がってくる。

「感じやすいな、あんた」

「うう、うるさいっ」

 恥ずかしくて顔が熱くなる。そんなこと、言わなくても良いのに。意地悪だ。

「怒るなよ。俺は楽しいし」

「ば、ばかにしてるだろ」

「してねーよ。淫乱だなーとは、思うけど」

 ホラみろ! バカにしてる!

「いっ……淫乱じゃないもん(多分)」

 自信なさげに目を逸らしたおれに、星嶋がククと笑う。笑わないでよ。本当に、意地悪だ。

「抱くのには、エロい方がなにかと楽しいだろ」

「そういうもの……?」

 ハァと息を吐きながら、甘い愛撫に身悶える。シャツを脱がされ、肌が露になった。

「そりゃあ、あんたみたいに解りやすいと、やってるこっちも嬉しいし」

 嬉しいと言われ、きゅんと心臓が鳴った。そんなこと言われたら、こっちも嬉しくなってしまう。心臓が変にドキドキして、悟られたくなくて目を逸らした。

「ふ、ふーん」

「まあ、そういう訳で、遠慮せずに乱れてみろよ。ここは寮の部屋と違って、声出しても平気だろ」

 そういいながら、星嶋の唇がちゅうっと乳首を吸い上げた。舌先が先端をくすぐり、乳輪を輪を描くように舐める。執拗な責めに、甘い声が唇から漏れ出る。

「ふぁ、んっ……! あっ、あ……」

 ビクッ、ビクッと、身体が跳ねる。声を出して良いと言われると、余計に恥ずかしい。自分の声じゃないような甘い声に、耳がおかしくなりそうだ。

「ほしっ、まっ……! しつこっ……」

 ねちっこく弄られ、乳首が赤く熟れる。濡れた先端はじんじんして、甘く痺れた。

「すげえ、イヤらしい顔してんな」

 ハァ、と息を吐き出し、星嶋が顔を覗き込んだ。涙目で睨むと、星嶋は喉の奥で笑う。

「腰、浮かせて」

「……ん」

 言われるままに腰を浮かせると、下着ごとズボンを脱がされた。すっかり脱がされ、裸の姿を見られてしまう。心もとなさに視線をさ迷わせ、そういえば明かりを消していないと気が付いた。

「ね……、明かり……」

「そんな明るくねえだろ」

 もう少し暗く出来そうだったが、星嶋に阻止されてしまった。ホテルのオレンジっぽいランプはすごく明るいというわけじゃないけど、暗くて見えないわけではない。何もかも見られているようで、恥ずかしい。顔を赤くして、シーツを掴んだが隠せそうになかった。

「上遠野、それ取って」

「え? これ?」

「それ、パックの」

 手探りで星嶋が指した、ヘッドボードのほうに手を伸ばす。箱の中にアメニティらしいパックが入っていた。液体が入っているような、そんな感じだ。星嶋はそれを受け取ると封を開け、中身を手に取る。とろりとした液体が入ってた。

「足、開いて」

「え」

 驚いている間に、星嶋が足の間に身体を滑らせ、脚を開かせる。それから、先ほどの液体を手になじませ、尻の窄まりに指を這わせた。

「んっ」

 つぷ、と指先が粘液の滑りを借りて侵入してくる。にゅぷんと入り込んだ指をナカを拡げるように動かし、小刻みに動かす。入り口を擦られる気持ちよさに、自然に声が漏れ出た。

「んぁ、んっ……、ふっ……んっ……」

 じゅぷじゅぷと繰り返し挿入され、指を増やされる。中を覗くように左右に開かれ、腸壁を擦るように抉られる。ローションの滑りを借りた指は生き物のように蠢いて、アナルを徐々に拡張していった。

「っ……っと」

 やがてずるっと指を引き抜き、星嶋はズボンの前を寛げると、自分の性器を取り出した。星嶋の性器もすでに痛いほど勃起して、先端から蜜を垂らしている。

「なぁ、ナマでして良い?」

「え?」

「ゴム、着けないとイヤ?」

 確認され、ごくんと喉を鳴らす。これまでのセックスは、全部ナマでしていた。突発だったし、おれが持っていないからだ。だがここには、備え付けのコンドームがある。

(正直、わからん)

 着けてのセックスの方が未経験なので、正直なところ解らなかった。今のところ不都合はなかったので、構わないと言えば構わない。

(星嶋は、ナマでしたいんだよ、な)

 そのことが妙に生々しく思えて、ドキドキする。

「……ん、良い、よ」

 短くそういい、瞼を伏せた。どんな顔でそんなことを言って良いのか、解らない。星嶋の喉が動く。ごくり、と野生の獣が獲物を前にしたときのような顔で、おれを見る。

 先端が、ぴとっと押し付けられた。アナルがその尖端に吸い付くようにぬぷっと肉を食らう。

「――んぅ、ぁ」

 肉を割って、性器が押し込まれる。星嶋にナマと言われたせいか、いつもより敏感に存在を感じて、ビクッビクッと肩を揺らす。

「っ――、く」

 星嶋が短く息を吐く。おれは脚を開いて、星嶋の肉棒に食らいつく。

 腕を伸ばし、星嶋の肩を掴んだ。

「あ、あっ――」

 こんな風に誘い込むおれを、星嶋にはどう見えているんだろうか。やはり、「淫乱」に見えているんだろうか。心外だけど、あまり強く否定出来ない気がした。





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