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10 星嶋でなければ
しおりを挟む「恐っ! 高いっ! 恐いっ!」
180はある男にお姫様抱っこされるのが恐いと、初めて知った。思ったよりもロマンチックじゃない。思わず星嶋にしがみつく。
「うるせーな、耳元で叫ぶな。あと、近所迷惑だろうがっ」
「お、降ろせって」
「歩けねーだろ」
フンと鼻を鳴らす星嶋に、悔しくなったが言い返せない。実際、生まれたての小鹿である。星嶋のせいだが。
とは言え、時刻はもう二十三時を過ぎており、近所迷惑なのは間違いない。談話室などの共有スペースの明かりは消され、廊下にも誰もいない。お陰で誰にも見られずに済んでいる。
(くそぅ……)
大人しく黙って、振り落とされないように星嶋の首に腕を回す。万が一落としたら、道連れにしてやる。
星嶋は一瞬おれを見たが、すぐに目を逸らした。ムスッと顔をしかめたまま、真っ直ぐ前を見る星嶋を眺める。非常に不本意な話だが、案外好きなタイプだ。精悍で男らしいが、犬のような可愛さがある。
(体格も良いし……、モテるだろうな)
男に。
女にモテるかは、おれは知らない。未知の世界過ぎて解らない。まあ、亜嵐くんがモテるんだから、星嶋もモテるのだろうと思う。亜嵐くんも男前でカッコいいが、茶目っ気のある愛らしさがあるタイプだ。要するに、好みのタイプなのである。
最も、星嶋は口は悪いし、すぐ怒るし、威圧的なので亜嵐くんとは全く違う。あくまでも容姿の話だ。
そんなことを考えていると、いつの間にか部屋に着いた。降ろして貰おうとしたが、星嶋は眉間にシワを寄せたまま「鍵」とぶっきらぼうに言う。
(恐いんだけど)
嫌だこの人。また怒ってる。
何に怒ったのだろう。重いって言うなら、最初から抱っこしないで欲しい。別に頼んでないんだし。
口にしたらまた睨まれそうなので、黙って鍵を取り出す。星嶋が鍵を受け取り、扉を開けた。
「ど、どうも……」
頼んではいないが、一応お礼を言わないと恐いので、言っておく。だが、星嶋は玄関先では降ろさず、部屋の明かりを点けて中へと入った。そのまま、おれをベッドの上に座らせる。
星嶋でなければ、完璧なエスコートだ。その上、履いていた靴を脱がせてくれる。星嶋でなければ。
(脳内で亜嵐くんに置き換えよう。ああ、亜嵐くん、おれのためにそこまでしなくてもっ!)
「っ、あ、ありがとう……」
顔が熱い。亜嵐くんを想像したかったが、やはり目の前にいるのは星嶋だった。
「……いや」
星嶋はそれだけ言って、玄関におれの靴を置く。そのまま帰るかと思ったが、星嶋は戻ってきておれの手を取った。王子様みたいな仕草に、ドキリとする。
「じゃあ、指輪返せよ」
「っ」
そうだ。目的は指輪じゃないか。慌ててて手を引っ込め、隠すように手を抱き身構える。
と、腰を捻ったせいか、穴からなにかトロリとしたものが零れ、ビクッと身体を震わせる。
「んっ……!」
ナカから出る感触に、ゾワと背筋が粟立った。
「なっ、なんだよ。変な声出してっ……」
星嶋が焦ったように顔を赤くする。
「ち、違くて……。ナカからお前のが出てきて……」
これ、どうしたら良いんだろう。ティッシュとかで拭けば良いんだろうか。経験なくて何も解らん。
ひとまず、濡れた下着が気持ち悪い。ナカ、まだ入ってる感じがする。
「――」
星嶋が黙る。無言で、どこかを見ていた。その瞳に、熱を感じて、ドキリとする。
「星――」
肩を掴まれ、ベッドに押し付けられた。星嶋が覆い被さる。
「え――」
星嶋の手が、おれのズボンに伸びた。あっという間に下着ごと脱がされ、ハッとして顔を熱くする。
「なにすっ……」
膝を割られ、ビクッと身体を震わせた。
「あの……?」
恐る恐る、声をかける。星嶋の顔に、理性があるように見えなかった。
(もしかしたら、拭いてくれるのかも――)
と、期待してみたが、そうではないとすぐに解る。星嶋は自分のズボンをずらして、まだ猛っていない自身を手で扱き、おれのアナルに押し当てる。
「ち、ちょっ」
静止も聞かず、星嶋の太いものが再びおれを貫いた。
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