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五十二 情報解禁
しおりを挟む「うん。今回の『ユムノス』の曲は全部良いね」
アルバムを確認しながら頷く俺に、風馬が笑う。
「今度カラオケ行きます? 岩崎たちも誘って」
「良いね。岩崎とか鮎川さんとかってどんな歌、歌うんだろ」
「想像つかないですね~」
岩崎とかはヤンキーだし、やっぱりそれっぽい曲だろうか? 鮎川さんは接待とか良く行くから、案外レパートリーが多いかも知れない。ちなみに俺はアニメはあまり観ないのでオタクらしい楽曲はほぼ知らない。流行りのポップスをいくつか知っている程度のヤツである。
「今まで『ユムノス』の曲は避けて来たんですけどね……。歌えば結構、歌えると思います」
「別に好きな曲歌えば良いと思うけどね?」
「実は一番聞きこんでるんですよね……」
微妙な反応をする風馬に、つい笑ってしまう。亜嵐の活動を何だかんだ応援している風馬は、一通り目を通してきているらしく、楽曲もすべて知っているようだ。実はお前もブラコンだろ。
「そう言えば今日、情報解禁日って言ってましたよ」
「あ、そうなの? ドラマかな」
あれから、亜嵐と色々と話したらしく、風馬と亜嵐の関係は元に――元以上に、なったようだ。電話口でボロボロ泣いていたのは知っているが、恥ずかしそうなので言わないで置いた。以前よりもメッセージや電話のやり取りをしているようで、正直妬けちゃうよ? 俺ともメッセージやりとりして良いのよ? 隣に座ってるけどね。
「ネットに載ってるかね」
『ユムノス』ファンたちが書き込みをしているかも知れないと思い、スマートフォンを立ち上げSNSのアプリを起動させる。栗原亜嵐の名前で検索をしようとして、トレンドに『実写化』の文字が踊っているのに目をやった。
「ん? もしかして、これか?」
「何ですか?」
風馬がヒョイと横から覗き込む。タイムラインが、阿鼻叫喚と狂喜乱舞の二通りの感情で溢れかえっていた。
『実写化!? 鳥町の栗原亜嵐とか最高過ぎる!』
『栗原亜嵐イメージ合い過ぎるwww』
『実写化かー……。嫌な思い出が……』
『栗原亜嵐×外海涼平!? 最高かよ……』
『どこまでやるの!? 『コン持ち』けっこうえっちだよねええええ!!?』
「えっ」
「え」
実写化!? 『コン持ち』の実写化だとっ!?
慌てて作者である、まるは先生のツイートリーを観に行く。すると、公式SNSのリツイートとともに、まるは先生のコメントが書かれていた。
『皆様の応援のおかげで、『コン持ち』まさかの実写化です! 賛否あるとは思いますが、キャストさまスタッフさまのおかげで素晴らしい仕上がりになっています! 是非生身で動く鳥町と和久を観てください!』
待って。情報が追い付かない。
「ちょっ……! これっ……!」
「落ち着いて一太さん。いやー、まさか『合コンでイケメンにお持ち帰りされちゃいました』の実写化だったとは」
「ちょとおおぉおお! 栗原亜嵐の鳥町とか本物過ぎるうううっ!!」
「外海涼平解るなー。ちょっと一太さん似てるんですよね、雰囲気が」
いやいやいや。全然似てませんがな。
しかしっ! 実写化ですよっ! 奥さん!
BLに限らず実写は賛否あるけどさあ! あれって、本気で人気ないとまず実写化されないからね! ドラマCDとかアニメ化より、ずっと人気がないと出来ないから! 人気作の証拠だよ!!!
「めっちゃ嬉しいっ!!!!」
「実写映画化みたいですね」
映画か! それも良い!
「スクリーンで鳥町と和久のキスシーン見られるっ!?」
「キスシーンは絶対にあるでしょうね。ベッドシーンは何処までやるのか知らないですけど」
ああ、そうか。コレの仕事で話を聞きたいって言ってたのか。鳥町と和久ってサラリーマンだし。栗原亜嵐の今までの作品は高校生役とか大学生役が多かった。
(確かに、亜嵐くんも雰囲気が似てるって言ってたな……。外海涼平に失礼だろって)
しかしBL映画の視聴って結構ハードル高い気もするな? いやいや、そんなの気にしてたら腐男子出来ませんよ。絶対に映画館で観るっ!
「一緒に、観に行きましょうか」
「……風馬的にそれはありなの?」
「何がです?」
「兄のキスシーンを……」
「あはは。恥ずかしがるのは俺じゃなくて亜嵐でしょ」
「確かに」
それな。
そんな話をしていると、スマートフォンに通知が来る。風馬のスマートフォンも同時に鳴った。亜嵐くんからだ。
『発表見てくれた? 良かったら観てね~!
難しい題材だから色々助かりました!』
「お。噂をすれば」
「まさかドラマはドラマでも、ボーイズラブとは思いませんでしたね。最近は聴きますけど……」
「うわああ、公開日いつだろう!? 凄い楽しみ!」
「……」
公式サイトにアクセスし、情報をさっそく確認する。キービジュアルの写真が良い……! SNSフォローして、ああそうだ。原作もう一回読み直さなきゃ!
「一太さーん?」
ぐいと身体を引っ張られ、風馬の方に引き倒される。
「うわ」
「まだまだ先の話でしょ? 俺のことも構ってよ」
「あらら。ヤキモチ?」
「そうですよ」
風馬が顔を近づける。俺は笑いながら、風馬の首に腕を回した。
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