気弱な暴君~ヤンキー新入社員、憧れの暴走族の元総長にエッチなお仕置きされてます~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
上 下
48 / 63

四十七 怖くなった

しおりを挟む

(よ、良かった……)

 岩崎が居なくなったあと、鮎川は一人自慰行為をした。無事に勃起し、ついでに射精出来たことに、ホッとする。

「インポじゃないっ……!」

 不能になったのかと、一瞬焦ってしまったが、そんなことはなかったらしい。アダルト動画サイトのサンプル動画で抜くのは久し振りで、なんだかマヌケな気分になったが、とにかく勃起すれば問題ないのだ。

(問題は)

 岩崎に対して、勃たなかったことだ。

 後始末を終え、気だるい身体をベッドに横たえる。このベッドで、何度、岩崎を抱いたか解らない。生意気な口が、甘い声を上げるのが堪らない。可愛げのない態度が、可愛らしい顔で悶える姿が、愛おしい。想像の中なら、岩崎をいくらでもイかせてやれそうだった。

(……まあ、調子が悪かったんだろ)

 明日にはきっと、うまくやれるはずだ。岩崎はきっと、明日も来るだろうから。

「今日のぶんも、可愛がってやんないと……」

 そう呟いて、鮎川は静かに目蓋を閉じた。



   ◆   ◆   ◆



「……」

 岩崎の表情が硬い。鮎川は顔を青くして、ベッドの上に突っ伏した。

(何でだ)

 結論から言うと、勃たなかった。岩崎を抱きたいという気持ちは湧いているのに、いざ触れるとブレーキがかかる。

「俺、なんかした?」

「っ。ぼ、僕の問題だっ……」

 岩崎にまで気を遣わせてしまっていることに、余計に落ち込む。項垂れる鮎川にため息を吐いて、岩崎は半脱ぎになっていたカットソーを直した。

「昨日、オナニーしたときは、大丈夫だったんだ……」

「……なにそれ」

「だから、一時的な――」

 むぎゅ、と岩崎が鮎川の性器を服の上から握る。

「うわっ、おい」

「なんでフニャフニャなんだよ。マジでインポじゃねーの?」

「くっ。もう良いから」

「……良くない」

 むすっと顔をしかめ、岩崎は手を離した。

「……なんか、ゴメン」

「……」

 岩崎のほうはその気になっていたのだから、謝るべきだろう。二度も、傷つけてしまった。

「……なあ、なんで? どう考えても、原因、俺じゃん」

「そんなことは――」

 否定しようとして、岩崎がじっと見つめるのに、口を閉じた。

 自分でも、薄々気がついていた。岩崎に対して、ブレーキが掛かるのだ。

(いつから)

 最後に抱いたのはいつだったか。そんなに前じゃないはずだ。ちょっと前まで、むしろ衝動は押さえられないほどだった。

 誘うのは鮎川ばかりで、岩崎は拒絶したことはなかったが、自分から誘うことはなかった。

 ズキ。今は自分のほうが駄目なのに、勝手に傷つく。岩崎が鮎川を欲しているのか、本当のところは解らない。今だって、素知らぬ顔をしている。

(……最近、変わったことといえば)

 岡崎に、会ったことだろうか。岡崎と知り合いと思わなくて、ずっと過去の話をするなと言っていた弊害が、一気に起こった気がした。

 そもそも、岩崎について誤解していた。鮎川にはかつて 暴走族『死者の行列ワイルドハント』の総長だった頃、ひっきりなしに決闘を挑むものが群がってきていた。どちらが速いか。それを決める戦いに、単に楽しくて走っていた鮎川はウンザリしていた。

 チームを解散させたあとも、その誘いは止まなかった。バイクを止めても、迷惑な相手は減らなかった。

 やがて夕日コーポレーションに入社し、サラリーマンが板について、黒髪も馴染んだ頃、ようやくその誘いはなくなった。

 岩崎は、久し振りに現れた、その手の人間だと思い込んでいた。

(良く考えれば、解ることだった――)

 岩崎がまだ二十二歳だと知っていたのに。八年前は十四歳だと、解っていたはずなのに。

(ああ、そうか……)

 鮎川は、つまらなさそうな顔でスマートフォンを弄っている岩崎を見た。

(崇弥、だったから、だ)

 何故ブレーキがかかるのかに思い当たり、ハッとする。

 多分、家の事情で、一人でいた子。遅い時間にコンビニにいる岩崎を、治安が悪いからという理由で、メンバーみんなで構っていた。

 可愛い弟分だった。鮎川には弟がいるが、実の弟よりずっと可愛かった。いつも後をくっつき回って、タバコの臭いが臭いと言うのに、くっついて離れなかった。

 守ってやっている、つもりだった。

(僕、大切にしてた子を、犯したんだな)

 自分が、酷く恐ろしい人間に思えて、手が震えた。大切にしていたのに、自分勝手な振る舞いが、なにを引き起こすか考えもしないで。

 いつだって短気で、バカな結果を引き起こす。変わったと思っていたのに、本質はちっとも変わらない。

 バイクの時と同じだ。

「―――」

(僕は、岩崎に触れるのが、怖くなったのか)

 震える手を握り締めて、鮎川はぎゅっと瞳を閉じた。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...