17 / 46
17 バーベキューをするらしい
しおりを挟む「と言うわけで、買い出しは押鴨と渡瀬、榎井の三人で頼むぞ」
「解りましたー」
寮長の藤宮が資料を渡しながらそう告げた。横で雛森がチェックリストにチェックを入れていく。週末に行われる、バーベキューの準備のため、こうして打ち合わせを行っているのだ。共有スペースに集まったのは七人ほどで、さほど広くない場所なのでやや窮屈だ。身体の大きい良輔や星嶋などは、身体を縮ませていた。
「倉庫からテーブルと機材を出すのは、星嶋と鮎川、高橋B担当で」
「了解」
仕事をテキパキと振って、藤宮がコピーした紙を配っていく。買い物リストやら、準備に必要なものを纏めたらしい。ちなみに高橋は二人いるので、A・Bで呼ばれている。小柄な方がA、デカイ方がBだ。
「買い出し、ぺリアで良いよな? 俺、車出すわ」
当日は社用車を使わせて貰うよう申請しておこう。駅前のぺリアなら、大体のものが揃うはずだ。
「紙コップと皿はドラッグストアの方が安いかも知れんぞ」
榎井の言葉に、「確かに」と頷く。駅前通りにドラッグストアも有ったはずだ。酒ももしかしたらそっちが安いかもしれない。
「それなら、先にドラッグストア行ってからの方が良いかもな」
「これ、リストに割り箸入ってないな」
「どれ?」
良輔が指差すのに、リストを確認する。確かに、漏れている。
「もう一回、リスト確認しようぜ」
「だな」
赤ペンでリストに割り箸を追加し、三人で内容を確認する。
「氷、こんなに必要か?」
「ビールには入れないしな。まあ、多いくらいでも良いだろうけど。余ったら寮の冷蔵庫に突っ込んで置けば」
「クーラーボックス欲しいな。確か倉庫にあったよな?」
「この後、確認しよう」
ソファーに座ってあれこれと確認していた俺たちに、藤宮が覗き込んでくる。
「おー。お前らしっかりしてるから、助かるよ」
「藤宮先輩、何担当するんです?」
「焼きそば。作る方」
「そりゃ楽しみだ」
社交辞令を言いつつ、声をかけてきた目的を促す。
「ところで、何かあります?」
「ああ。301号に入居するから。榎井、仲良くな」
「え」
301号といえば、榎井の隣である。榎井の部屋は302号室だ。星嶋とも同じフロアである。
一月ほど空いていたのだが、新しい人員が入ってくるらしい。
「珍しいタイミングですね」
良輔が首を傾げる。異動のある時期に入れ替りが多いものだ。前の住人は結婚して退寮していった。ここを出る奴は大抵、同棲か結婚だ。あるいは転勤。
「何だか、アパートが取り壊しだそうだ。一時的かもしれないが。この時期だから近隣のアパートも開いてなかったらしくてな、それで声を掛けたんだ。お前らも知ってるヤツだよ。隠岐聡だ」
「ゲッ」
榎井が顔をしかめた。
隠岐聡は、俺たち四人と同じ同期の男だ。パリピ、陽キャという風情の男で、榎井とは本質的に合わないらしい。合わないのに榎井と同じ設計部署なので、余程、縁があるのだろう。諦めろ。
「同期が増えるなら、仲間に入れないとなあ」
「そうだな。仲間外れはちょっと」
「渡瀬、押鴨。お前ら俺がアイツ苦手なの知ってて……」
榎井は心底、嫌そうだ。この世の終わりみたいな顔をしている。
「まあまあ。俺だってアイツは嫌いよ?」
「そうだったの? 渡瀬」
「だってアイツ、顔は可愛いじゃん。顔が良いヤツ嫌いなんだよ」
「お前……」
良輔が呆れた顔をする。
「え、じゃあ俺、嫌われてたか?」
「真顔で何言ってんだ。メガネ。お前の本体メガネだろ」
本気なのかネタなのか解らないが、少なくとも俺は榎井の素顔を見たことがない。見なくて良いけど。
「渡瀬だって可愛いだろ……」
「良輔、目が悪かったんだな」
「黙れよメガネ?」
せっかく良輔が可愛いと言ってくれいているのに。良輔の場合は社交辞令ではなく、マジなのだろう。良いヤツだ。
「まあ、マジの話、一回くらいは誘わないとまずいだろ。向こうが参加するかは知らないけど」
「ウググググ……」
榎井はまだ気に入らない様子だったが、言っていることは理解しているようで、それ以上は何も言わなかった。
「取り敢えず、まずはバーベキューだろ」
「そうだな。榎井は動画ばっかり観て寝坊するなよ」
「へい」
やる気の無さそうな榎井返事に、俺と良輔は顔を見合わせて肩を竦めた。
1
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
美少年(腐)の僕は、イケメンかつ絶倫巨根を所望する
つむぎみか
BL
ーーーユーリは美少年だった。
しかしその中身は、無類のイケメン好き かつ 犯され願望があるド変態(腐)である。幼少期に同じく腐女子の姉と結んだ同盟により、王道学園※十八禁を目指し奮闘するものの、なかなか挿入まで至らない悶々とした日々を過ごしていた。
「あーもうっ、はやくイケメンで絶倫の巨根に、お尻の孔をぐちゅぐちゅになるまで犯されたーーい!」
ユーリの願いが叶う日は来るのだろうか?乞うご期待!
見た目は超絶美少年な主人公が、欲求不満な身体を持て余しつつ、選りすぐりのイケメンをハニトラで誘惑しようと奮闘します!
(ビッチな彼には複数のターゲットがいますが、本編中に本番があるのは一人のみです/番外編予定あり)
※予告なしにR18表現が入ります。
※表紙絵はTwitterで遊んだ時のものです。今のところ本編で表紙の格好はしていません!笑
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる