上 下
22 / 73
第1章  入試篇

第22話  契約変更

しおりを挟む
「畏まりました。それではそうさせて頂きます」 

 奴隷商に大金貨40枚を徐に見せ、テーブルの上に置いた。だが、ほほう!と関心をしているようではあったが、驚いている感じではなかった。

また、意外と応接室はシンプルで質実剛健と言った感じで、応接セットも安物ではないが、良い意味で上品だった。

「お若いのに大したものでございますね」

 そうは言うが、普通フォルクスの年でそれも貴族でもない者が大金貨40枚、そう大金貨なので金貨だと4000枚相当、一般人の年収のざっと40倍近くのお金をポンと払うのだから本来驚くべき内容なのだ。しかし、別段驚く様子がなかった事にフォルクスは少し違和感を覚えた。そして何故かこの奴隷商を懲らしめてやらねばというような悪意が沸かないのが不思議であった。初めから丁寧に接客されているからかなと思うようにしていた

 所有権の変更は難しい事ではなかった。初夜権を設定された、変更対象の女性の首輪に奴隷商が触れている時に、権利を譲渡される者も首輪に触れる。そして奴隷商がもう片方の手を対象の男の頭に添えて、「権利譲渡」と言い、隷属魔法の中の一種を唱えた。ただそれだけだったのだ。それはそういう魔法なのだが、フォルクスは契約変更をした時に初夜権の魔法が身に付いた事が分かった。正確には奴隷契約魔法であり、初夜権はその魔法の一部の仕組みにしか過ぎない。

 フォルクスはこれでその気になれば奴隷商に行かなくても、彼女達の所有権の変更ができる事がはっきりと頭の中で理解できた。フォルクスがコピーして覚えたからである。魔法学校で皆が使った魔法が身に着いた為、自分の能力の一つが見た魔法を覚えるコピー能力だと気が付いていた。ただ、スキルはコピー出来ないと分かっていたので、奴隷商が使うのが魔法であればひょっとして!とは思っていたのだ。

 4人の所有権の変更を行い、無事に譲渡が終わった。奴隷商と話をしているとお金の事を教えてくれた。金貨1000枚で売られるのは最高額だという。これ以上の金額設定はないのだと。また、奴隷商の手数料が5%だそうだ。つまり彼女達の場合は金貨50枚が奴隷商の手数料となり、初夜権を売りつけた村の方には金貨950枚が入っている。彼女達が学園に入る為のお金として金貨600枚が当人達の元というか、既に学校に入っている為、村に入るのは一人につき金貨350枚のみになった筈である。不合格の場合は村に送られる。

 村に入るお金は成人男性約3人分の年収に相当する。その為、そのお金が有ればなんとか村が今回危機を乗り切ると言う事だ。つまり、その金額が必要なお金だったのだと言う話になる。

 ラティスがいた村に限って言えばそうなのだ。ただシーラ達の村は3人なので、金貨1000枚程が村に入った事になる。成人男性約9人分位の年間の稼ぎ位になる。但しフォルクスの認識していた金額は小さな村での話ではなく、首都での話だ。確認すると2つの村はほぼ似た規模だ。なので、シーラ達は3人共売られる必要がなかった筈だとフォルクスは認識していた。

 また、条件の変更もするように伝えた。彼女達が18歳になるまで権利の執行を保留し、買い戻しの金額も金貨1000枚のままという事にしたので確認が入った。

「権利行使の保留ですが、これが最長でございますが宜しいのですね?一度設定しますと奴隷商でないと短くはできない上に、禁止されていますぞ」

 念を押されたが

「構わない」

毅然と返事をした。

 双方に条件の変更の同意を求められ、所有権を持った者が首輪に触りながら、「所有権譲渡」と言ってから、所有者を譲渡される者が首輪に触る。次に主が今度は女性の頭を触る。女性が条件を飲むかと言われ条件を飲むと言うと、主が女性の頭に置いていた手を所有権を持った男の頭に置く。するとその手がほんのりと光っていたのが消えていた。

 そして契約変更はなされましたと言われて終わった。やはりやり方が頭に流れてくる。これで一通り初夜権に関し、奴隷商が行える魔法について理解できた。

 奴隷商自体は国から制約を設けられ、何かしらの楔的なものを体に埋め込まれているのか、魔法としてやられているのか分からないが、今のフォルクスには悪意を持ってこの契約を一方的に結べるようになっている。極端な話、見知らぬ女性に触りながら初夜権設定と念じるか言ってしまえば、自分が所有者として初夜権を発動する事ができるようになったのだ。

 勿論そんな事はしないが、奴隷商には制約がないのかフォルクスは疑問を感じるのであった。

 そうして手続きが全て終わり応接を出ようとした時に、最後に出ようとしたフォルクスは奴隷商の主人に肩を軽く掴まれ

「おっと、そうでした。少しだけ奴隷を見ていかれてはどうですか?案内がてら一言アドバイスがございましたのでそれをお伝えいたします」

「分かりました少しだけなら」

 半ば強引に戦闘奴隷や家事用の奴隷など、まともな部類を見せられた。また、何やら契約をしている姿もみられ、奴隷契約魔法も手に入ってしまった。奴隷を眺めながら説明をしていた

「裏技的な使い方があります。時折こういう使い方をされる方がいらっしゃいますのでお教えします。権利を買い戻した場合で、手続きの最後の段階の事です。女性が首輪に別れを伝える最後の言葉を発するか念じるのをストップするのです。その状態であれば、誰も権利を使えず、貞操を守る為の道具として活用ができます。制約上十八歳までしか無理ですが、それを使う為に、予め女性側が持っている金額にて初夜権の権利を父親に設定致します。そしてその場で買い戻すというようなやり方で十八歳まで貞操を守らせる親もおります。」

 フォルクスは目を輝かせながら真剣に聞いていた。

「見たところ貴方様達は彼女達を大事にされる方だと思います。ですのでこういう使い方もあるという事を覚えておけば宜しいかと思います。
 初夜権の販売は副次的な商売にしか過ぎません。本業の方でございますが、我々はこのように各種奴隷を扱っておりますので、ご要望の際には是非一言私をお呼びくださいませ。ご贔屓させて頂きます。時間がないようですので、宜しければ後日説明をさせて頂きます。それと最後に言わせて頂きますが、初夜権とは、元々貴族の子女が婚前前に不貞を働かない為に編み出された仕組みでございます。今説明した裏技が本来の仕組みでしたが、いつの間にやら悪用され、今の仕組として使われるようになっております。話が逸れましたな。ではまたのお越しをお待ちしております」

 そうして主と別れた。フォルクスもそのやり方はなんとなく気付いてはいたのだが、確証がなかったのだ。しかし、これをする事により不意に誰かに犯され、悲観して自殺するなどという不幸な事がなくなるのだ。フォルクスはありがとうと言い、奴隷商を後にした。

 シーラがフォルクスが遅いと心配をしていた

「ねえ、遅かったけど、どうかしたの?」

「うん、シーラの胸がどれ位の大きさになると思うのかを話してたんだ」

「えっ?フォルクスのばか。エッチ!一度死んじゃぇば良いのよ」

「冗談だよ冗談。君達の胸じゃなくて、権利を買い戻した後での事さ。貞操を守るやり方を教えて貰ったのさ。それと所有権の売買以外に奴隷の販売も行っているので贔屓にってさ。まあ宣伝されただけだよ」

「ふうん、そうなんだ。奴隷ねえ?」

「まああまり興味はないけどさ」

 シーラがジト目で見るのが少し痛かったが、その時は奴隷というのはどういうものかというのをフォルクスは知らなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが

アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。 右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。 青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。 そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。 青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。 三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。 【登場人物紹介】 マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。 ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。 クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。 ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。 デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。 ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。 ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。 【お知らせ】 ◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。 ◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。 ◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。 ◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。 ◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。 ◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。 ◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。 ※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...