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第16話 早とちり

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 食堂に二人で行き、空いている席に向かっていたが、コウの背後からおっさん声の者から声を掛けられた。

「そこの別嬪さん達!」

 と声を掛けられたが、早速来たなとコウが警戒した。

「おっ?お客様、元気になられたのですね!空いている席にどうぞ」

 コウは帯剣しており、美貌の女剣士に見える。警戒したコウを見てフレンダはくすくすと笑っており、コウは小声で笑うなよ!と抗議していた。初めて見るフレンダの笑顔はコウをどきりとさせる程魅力的だった。

 朝の出発前の時間であり、宿の客も夜とは違い酒も入っていない。その為か美人の二人だなと話題には登るが、絡んで来る者もいなかった。

 宿代はフレンダが払っていてくれたが、この世界の宿は殆どが朝食は宿代に含まれている。

 朝食はスープ、パン、野菜のサラダが一般的で、可もなく不可もなくといった内容だとフレンダが言っていた。標準的な朝食としてコウは覚えるが、パンは固くあまり味がしなかった。今の日本のスーパーで売られているパンでも最高級のパンとして高値で取引されると思われる程、味や食感が違い過ぎた。フレンダや周りの者を見ると、なるほどと思った。スープは硬いパンに吸わせ、柔らかくして食べるものであり、直接齧ったコウを見てフレンダが不思議そうな顔をしていたのだが、そういう事かと納得していた。早々にスープを飲んでしまったから、フレンダのスープにパンを漬けさせて貰っていた。

 宿の主に今からギルドに行き、町を出る前にまた宿に寄るからと話し、お金を払い弁当を作って貰う事にした。また、今からギルドに行くと言うと、この時間は馬車で行くと馬車を停める所が少ない為に苦労する事になると言われ、今は徒歩で行き、弁当を受け取ってから馬車を出すように勧められた。

 二人にとってあまり分かっていない町の為、店主の勧めに従う事にし、徒歩でギルドに向かう事にした。

 食事が終わってからまだ少し時間が早い為、一度部屋に戻り荷物をまとめていた。その時にフレンダが何かの書簡を落とした。コウはそれを拾った時にちらっと見えたが、何かの模様にしか見えなかった。

「何か書類が落ちたぞ。大事な書類じゃないのか?」

 コウが一言言うと、フレンダは黙って受け取った。

 書類といっても、羊皮紙のような紙であり、パルプを使った今の日本の紙とは雲泥の差の紙だ。おそらく紙は貴重品なのだろうと感じた。

 それを持って立ち竦んでいたので、コウは質問をした。

「どうした?何かあったのか?」

「うん。この旅に出る事になった時に渡された私への命令書よ。命令が書かれた手紙なの」

 この旅の目的と指示が書いてある手紙だと言う。

 念の為、フレンダがどういう指示を受けていたのかを知る方が良いと感じ、確認したい旨を話し、手紙を読んで貰うようにお願いをする事にした。

「嫌じゃなかったら読んでくれないか?今ちらっと見えたが、やはり読めないんだよな。何かさ、フレンダが何を命ぜられているのかちゃんと把握しないといけない気がするんだよ。向こうに行った時に知らないと対処するのが難しい気がするんだ」

 フレンダは確かにと同意し、読んでくれる事になった。

 フレンダから聞いていた事が書いてあった。予言師が召喚されるのが今回は男の可能性が高いと。召喚ミスなのか、聖女ではなく、勇者召喚をする可能性がある事を告げた為だ。子をなす事が可能な相手であれば申し訳ないが、その者の子を身籠って欲しいという旨が書いてあった。フレンダから聞いている内容そのものだ。

 しかし、フレンダが読み終わったのだが、違和感があった。そう、指示書や手紙などであれば締めくくりの言葉がある筈だが、フレンダからは聞いていない。手紙の文字数と、読み上げられた文字数に違和感があった。フレンダは悔しそうな顔をしていた。

「その先も何か書いてあるんだろ?そこも読んでくれ!なんか引っ掛かるんだ」

 ブレンダはきょとんとなりながら、何が?何でとか言いながら慌てて喋り始めた。コウがきつめに言っていて、その口調に気圧されたのだ。

「君に対して酷い事をお願いをしているのは重々承知している。任務を達成したならば、君達がこれから何不自由なく生活できるように国として面倒を見る事を約束する。陛下から書簡を頂いている。また、これも約束を取り付けているが、召喚者との年齢差を考えると君一人では辛かろう。そこで我が弟子の中で一番若いフレンダを同行させる。彼女は丁度国元から今回の聖女召喚に伴い一度国元に帰るようにと指示を受けておるようだ。召喚が終わればまた留学先に戻っても良いと言われているので丁度良い。君達はフレンダの同行者として不審がられずにウッダード国に入れるであろう。

 君からフレンダに役割を伝えてくれ。彼女であれば年齢からも召喚された者とお近付きになれる可能性も高かろう。そこから先は君の才覚に委ねる。

 流石にフレンダにこれはお願いできない。申し訳ないが、未亡人の君に託さざるを得ない。もしもフレンダが召喚者と仲良くなり恋人関係になるなら、止めたり君が体の関係を求めて行く必要はない。折角の関係をこじらせる事はせず、その場合は二人を結婚させる方向に舵取りを頼む。もし破局したならば、慰めるなりで君が子種を得てくれ。頼むとしか言いようがない。君が帰ってきたならば、私は君に対して行った指令に対し、我が命を持って償う用意がある。君の生還を求む」

 フレンダは今読んだ部分を見ていなかったようだ。

「あう!あの、その、ゴニョゴニョ」

「まあ、昨日の事は無かった事にするって言ったからそうするけど、これってフレンダの勘違いだよな?」

「ご、ごめんなさい。私の早とちりだったわ」

「まあ、今後は気を付けないとな。これはあの亡くなった方宛の手紙だよな」

「どうしよう、どうしよう、私、私、恥ずかしい」

 フレンダは顔を押さえて泣き出してしまった。

「まあ、気にするな。俺も気にしないから。それよりもそろそろギルドに行っても良いんじゃないのか?ギルドってどんな所かドキドキするな」

 そう言ってフレンダの手を取り、立ち上がらせていた。ギュッと抱き寄せたのだが、泣き止むなりフレンダが怒り出した。

「な、何を勝手に抱きついているのよ!」

 コウはため息しか出なかった。さっきまで恥ずかしいと泣いていたのに、もうツンデレに戻っていたからだが、それでもコウと腕を組み、わざとかたまたまか、コウの腕はフレンダの胸に押し付けられる格好になり、胸の感触にドキドキしているコウであった。
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