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第78話 方針
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ダレンは会議で最新のデータを基にした修正情報を提供した。
「敵や人類の艦艇に関しては新たな情報が入った。宇宙艦隊データベースには存在しないものの、これはほぼ100%、人類の敵である通称“ラジカル”の艦で間違いない。そして、先程の85%の確率で憶測していた艦隊だが、人類の艦の特徴が強い。つまり、彼らではなく不利な状況に立たされた我々人類の艦隊が撤退、つまり逃走を試みていると見なせる。これが初期評価だ。人類と断定したのは数艦の中破や大破して漂い救難を求める艦から撤退中の艦に対する通信をキャッチしたからだ」
部屋にいた指揮官たちはこの新情報を即座に受け入れ、現在の状況に対する戦略を再考する必要に迫られた。一人の艦長が立ち上がり、ホログラフィックイメージが若干ゆらめきながら発言した。
「司令官、我々の艦隊が追い詰められているのは明白です。しかし、意志を固め、技術的優位性と戦術的な創意工夫を組み合わせれば、逆転の余地は残されています。レイクルのシミュレーションでは、危機的状況下でもフェイントや罠を使って敵の動きを制御する手法が有効であることが示されました。」
別の指揮官のホログラムが震えるような声で追い打ちをかけた。
「正直なところ、私の艦はすでに限界近くです。しかし、全艦が戦闘行動を一時停止し、わずかながらでも時間を稼ぐことができれば、総合的な退却計画を練ることも可能かもしれません。」
静まり返った空間を打ち破るように、別の艦長が自信満々に提案する。
「恐らく、我々の最良の選択肢は、敵の予測を外れる不規則な動きをすることです。撤退する際に敢えて敵を引き込み、艦隊間の距離を最適化し、そこから分断して逃走を図る―これにより彼らを混乱させることもできるでしょう。」
指揮官たちの意見が重なり合い、ダレン司令官は慎重に頷きながら聞き入れていた。虚空を埋めるように、ホログラムの織りなすプレゼンスが強い意志を伝えていた。影のようにぼんやりとした参加者たちも、この星系での存亡を賭けた戦いにおいて、自分の艦隊だけでなく人類全体の運命を懸けた提案を次々と打ち出していた。
「提案に感謝します。これらの意見をもとに、より戦略的な撤退を実行するための計画を立て、ラジカルの進化した戦術に対抗する手段を速やかに確立しましょう。我々は互いに連携し、この危機を乗り越えなければなりません。」
ノリコ大佐が応え、ダレンは最終的に全員に向けた決意の宣言をした。しかし、その時、救難を求める脱出ポッドからの通信が入った。彼らは敵の攻撃を受けて大破して漂流しているという。彼らの位置は敵の艦隊と我々の艦隊の間にあった。もちろんこちらを見てからこちらに向けて発せられたのではなく、星系全域に広域で発せられた人類の艦に対する信号だ。
すなわち最低でも数時間漂っていることを示していた。
彼らを救助するには戦力を削くリスクを冒さなければならない。
ダレンは、救助の可否を判断するために、指揮官たちに意見を求めた。すると、意見は二分された。一部の指揮官は救助は不可能であり、撤退を援護する事を優先すべきだと主張した。彼らは、救助によって今逃げているとは言わず撤退している艦を救うべきだと。別の艦長は救助は必須であり、同胞を見捨てることはできないと主張した。彼らは、救助によって敵の動きを混乱させ、撤退の隙を作ることができると期待した。ダレンは両者の意見を聞きながら、自らの決断を下すべく、深く考え込んだ。そして、ホロ会議の画面に集う指揮官たちに向かって、声を張り上げた。
「我々は救助を行う。それが我々の義務だ。それが我々の誇りだ。」
そして、ノリコ大佐とともに救助作戦の指示を発した。そして、ホロ会議の画面に集う指揮官たちは、まるで数百万光年の距離感などないかのように、共にこの挑戦を乗り越えるための結束を固めた。
「敵や人類の艦艇に関しては新たな情報が入った。宇宙艦隊データベースには存在しないものの、これはほぼ100%、人類の敵である通称“ラジカル”の艦で間違いない。そして、先程の85%の確率で憶測していた艦隊だが、人類の艦の特徴が強い。つまり、彼らではなく不利な状況に立たされた我々人類の艦隊が撤退、つまり逃走を試みていると見なせる。これが初期評価だ。人類と断定したのは数艦の中破や大破して漂い救難を求める艦から撤退中の艦に対する通信をキャッチしたからだ」
部屋にいた指揮官たちはこの新情報を即座に受け入れ、現在の状況に対する戦略を再考する必要に迫られた。一人の艦長が立ち上がり、ホログラフィックイメージが若干ゆらめきながら発言した。
「司令官、我々の艦隊が追い詰められているのは明白です。しかし、意志を固め、技術的優位性と戦術的な創意工夫を組み合わせれば、逆転の余地は残されています。レイクルのシミュレーションでは、危機的状況下でもフェイントや罠を使って敵の動きを制御する手法が有効であることが示されました。」
別の指揮官のホログラムが震えるような声で追い打ちをかけた。
「正直なところ、私の艦はすでに限界近くです。しかし、全艦が戦闘行動を一時停止し、わずかながらでも時間を稼ぐことができれば、総合的な退却計画を練ることも可能かもしれません。」
静まり返った空間を打ち破るように、別の艦長が自信満々に提案する。
「恐らく、我々の最良の選択肢は、敵の予測を外れる不規則な動きをすることです。撤退する際に敢えて敵を引き込み、艦隊間の距離を最適化し、そこから分断して逃走を図る―これにより彼らを混乱させることもできるでしょう。」
指揮官たちの意見が重なり合い、ダレン司令官は慎重に頷きながら聞き入れていた。虚空を埋めるように、ホログラムの織りなすプレゼンスが強い意志を伝えていた。影のようにぼんやりとした参加者たちも、この星系での存亡を賭けた戦いにおいて、自分の艦隊だけでなく人類全体の運命を懸けた提案を次々と打ち出していた。
「提案に感謝します。これらの意見をもとに、より戦略的な撤退を実行するための計画を立て、ラジカルの進化した戦術に対抗する手段を速やかに確立しましょう。我々は互いに連携し、この危機を乗り越えなければなりません。」
ノリコ大佐が応え、ダレンは最終的に全員に向けた決意の宣言をした。しかし、その時、救難を求める脱出ポッドからの通信が入った。彼らは敵の攻撃を受けて大破して漂流しているという。彼らの位置は敵の艦隊と我々の艦隊の間にあった。もちろんこちらを見てからこちらに向けて発せられたのではなく、星系全域に広域で発せられた人類の艦に対する信号だ。
すなわち最低でも数時間漂っていることを示していた。
彼らを救助するには戦力を削くリスクを冒さなければならない。
ダレンは、救助の可否を判断するために、指揮官たちに意見を求めた。すると、意見は二分された。一部の指揮官は救助は不可能であり、撤退を援護する事を優先すべきだと主張した。彼らは、救助によって今逃げているとは言わず撤退している艦を救うべきだと。別の艦長は救助は必須であり、同胞を見捨てることはできないと主張した。彼らは、救助によって敵の動きを混乱させ、撤退の隙を作ることができると期待した。ダレンは両者の意見を聞きながら、自らの決断を下すべく、深く考え込んだ。そして、ホロ会議の画面に集う指揮官たちに向かって、声を張り上げた。
「我々は救助を行う。それが我々の義務だ。それが我々の誇りだ。」
そして、ノリコ大佐とともに救助作戦の指示を発した。そして、ホロ会議の画面に集う指揮官たちは、まるで数百万光年の距離感などないかのように、共にこの挑戦を乗り越えるための結束を固めた。
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