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第63話 修理の算段
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叛意をもって離反した艦長にも人道的な対応をすることを決めた。
彼が自分の艦と命をともにすることを選ばなかった事について、何か理由があるのだろうと考えた。
それよりもまだ艦にクルーがいるのに真っ先に脱出ボットに入ったそうだ。
残ったクルーは何とか艦を動かそうと必死に復旧を試みたそうだ。
ダレンは正直に言うと、自らの前に引き出し、そのこめかみに銃を放ちたいと怒りを覚えたが、ミズリアが手を添え首を横に振ったので、ダレンは、手を軽く上げ大丈夫だとした。
「提督、漂流艦の救助が完了しました。修理が可能な10艦も順次輸送艦の周りに移動予定です」
通信士が漂流艦の救助についても報告し、ダレンは修理が可能な艦の数に苦笑しながらその状況を確認した。
「分かった。修理が必要な艦は輸送艦に搭載された工兵隊に任せろ。それと救助活動が終わった艦は本体に合流させてくれ」
ダレンは修理が必要な艦の対処について命令を下し、輸送艦に搭乗している工兵隊に信頼を寄せていた。
彼らならば離反した艦の修理を見事にやってのけたのるだろう。また、漂流艦のからの部品取りも問題ないだろうと思った。
それと修理についての報告が中佐より入った。輸送艦を修理船として活用することで、10艦の修理とは別に2艦の修理を進め、何とか航行可能な状態にすることができるというのだ。技術士官は深呼吸をした後、言葉を慎重に選びながら続けた。
「そして、その10艦が航行可能になるまでに約10日かかると見積もっていますわ。極力時間を短縮するため、輸送艦は修理だけではなく、移動も兼ねて行う作戦を立てました。つまり修理が完了した艦が航行を再開した後も、輸送艦は追加で2艦の修理を航行中に行います。これにより我々は可能な限り多くの艦を稼働させることができます。ただし、30日以上掛かる見込みで、それも工廠部の検査を通らないレベルですが・・・」
ダレン少将はリーダーとしての冷静さを保ちつつ、敬意と承認を含む声で答えた。
「それは良い提案だ。我々は時間に追われている。早めに修理を完了させるための段取り、そしてあらゆる可能性を試す勇気、それを評価する。工廠部の検査はともかく、武器を発射して武装が暴発したり、戦闘機動で艦体が捻れなければ良い」
しかし、技術士官の次の言葉が出ると、彼の表情は一瞬、曇った。
「ただし、この計画を実行するためには、他の13艦を破棄する必要があります。これらの艦は修理に必要な時間とリソースを過度に消費し、我々の手に負えません。さらに、そのアクションの結果として迅速に修復できない艦も発生します。我々がそれらの艦を破棄することは痛ましいですが、最善の選択肢と考えています。」
ダレン少将は予想通りの報告に、非常に辛辣な口調で答えた。
「それは、聞いている。元々15艦の破棄が初期評価だった事を考えると、例え2艦であろうとも、戦線に復活可能な艦が増えただけ良しとするしかあるまい。破棄艦が出るのは避けられない現実であり我々が取るべき決断だ。それでもなお我々が生き残り、助けを求める声に応えるためには、その場に適した労力をかけねばならない。私の責任で許可する。その作業を進めてくれ」
彼女はその言葉を言い終えると、ディスプレイを切った。
ダレンはカメラの画像を、つまり輸送艦とその周りに集まる修理が必要な艦を見ていた。その艦の中には自分の仲間や友人がいることを知っていた。彼らに別れを告げることもできないことに、胸が痛んだ。
彼らの犠牲を無駄にしないことを誓い、この戦争を終わらせるために、最後まで戦うことを、本星に帰ると自らの魂に誓った。
彼が自分の艦と命をともにすることを選ばなかった事について、何か理由があるのだろうと考えた。
それよりもまだ艦にクルーがいるのに真っ先に脱出ボットに入ったそうだ。
残ったクルーは何とか艦を動かそうと必死に復旧を試みたそうだ。
ダレンは正直に言うと、自らの前に引き出し、そのこめかみに銃を放ちたいと怒りを覚えたが、ミズリアが手を添え首を横に振ったので、ダレンは、手を軽く上げ大丈夫だとした。
「提督、漂流艦の救助が完了しました。修理が可能な10艦も順次輸送艦の周りに移動予定です」
通信士が漂流艦の救助についても報告し、ダレンは修理が可能な艦の数に苦笑しながらその状況を確認した。
「分かった。修理が必要な艦は輸送艦に搭載された工兵隊に任せろ。それと救助活動が終わった艦は本体に合流させてくれ」
ダレンは修理が必要な艦の対処について命令を下し、輸送艦に搭乗している工兵隊に信頼を寄せていた。
彼らならば離反した艦の修理を見事にやってのけたのるだろう。また、漂流艦のからの部品取りも問題ないだろうと思った。
それと修理についての報告が中佐より入った。輸送艦を修理船として活用することで、10艦の修理とは別に2艦の修理を進め、何とか航行可能な状態にすることができるというのだ。技術士官は深呼吸をした後、言葉を慎重に選びながら続けた。
「そして、その10艦が航行可能になるまでに約10日かかると見積もっていますわ。極力時間を短縮するため、輸送艦は修理だけではなく、移動も兼ねて行う作戦を立てました。つまり修理が完了した艦が航行を再開した後も、輸送艦は追加で2艦の修理を航行中に行います。これにより我々は可能な限り多くの艦を稼働させることができます。ただし、30日以上掛かる見込みで、それも工廠部の検査を通らないレベルですが・・・」
ダレン少将はリーダーとしての冷静さを保ちつつ、敬意と承認を含む声で答えた。
「それは良い提案だ。我々は時間に追われている。早めに修理を完了させるための段取り、そしてあらゆる可能性を試す勇気、それを評価する。工廠部の検査はともかく、武器を発射して武装が暴発したり、戦闘機動で艦体が捻れなければ良い」
しかし、技術士官の次の言葉が出ると、彼の表情は一瞬、曇った。
「ただし、この計画を実行するためには、他の13艦を破棄する必要があります。これらの艦は修理に必要な時間とリソースを過度に消費し、我々の手に負えません。さらに、そのアクションの結果として迅速に修復できない艦も発生します。我々がそれらの艦を破棄することは痛ましいですが、最善の選択肢と考えています。」
ダレン少将は予想通りの報告に、非常に辛辣な口調で答えた。
「それは、聞いている。元々15艦の破棄が初期評価だった事を考えると、例え2艦であろうとも、戦線に復活可能な艦が増えただけ良しとするしかあるまい。破棄艦が出るのは避けられない現実であり我々が取るべき決断だ。それでもなお我々が生き残り、助けを求める声に応えるためには、その場に適した労力をかけねばならない。私の責任で許可する。その作業を進めてくれ」
彼女はその言葉を言い終えると、ディスプレイを切った。
ダレンはカメラの画像を、つまり輸送艦とその周りに集まる修理が必要な艦を見ていた。その艦の中には自分の仲間や友人がいることを知っていた。彼らに別れを告げることもできないことに、胸が痛んだ。
彼らの犠牲を無駄にしないことを誓い、この戦争を終わらせるために、最後まで戦うことを、本星に帰ると自らの魂に誓った。
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