忘却の艦隊

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第58話 開戦

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 ダレン少将は呼吸を整え、情報士へ確認を求めた。

「状況を整理したい。君の認識を聞きたい。敵艦は全体で約700艦だったが、フェニックスクラウンの主砲で550艦を撃破したよな?」 

 情報士は頷いた。

「はい提督。残りの敵艦は約150艦です。しかし、主砲の攻撃から外れた敵艦のうち25艦はジルテット中佐が指揮じゃなくて艦隊から離反した友軍艦を追跡しており、更に25艦が合流しようとしています」

  ダレンは頷き、表情を引き締めた。

「意味のない分離だ。何故離反艦を追う艦は引き返して125艦と合流せずに、寡兵となった125艦から更に25艦を分離した?各個撃破の的にしかならないんだが?」

「はい。分離した25艦の動きを見ますと、当艦の主砲が放たれる少し前にベクトルが変わっています」

「やはりそうか。つまり?」

「はい。提督はもうお気付きの様ですが、恐らく主砲が放たれる直前に命令が出たのでしょう。敵に旗艦というのがあるのか分かりませんが、命じた指揮権を持つ艦が破壊され、直ぐに命令を撤回出来なかったのでは?」

「よし、それならこちらの艦隊は300艦程だから100艦と50艦との戦いだ。ここからが本当の戦いだぞ!我々は最初にその残りの100艦に対応する。混乱に乗じて味方に被害が出ないように一気に蹴散らす!」 

 情報士に指示を出すと同時に、艦内に通信を繋いだ。

「全艦、聞け。今、我々にとって1番の敵は残りの100艦だ。我々が倒した後離反艦に合流する。彼奴等をこちらに転進させる。そして逃げている艦を追跡している敵を全滅させる。フェニックスクラウンはまだ主砲の再装填は無理だが、盾艦を含め無傷だ。さっと倒して僚艦を救うぞ!全艦攻撃開始!」

 声を強めそして静かに付け加えた。 

「訓練の成果を見せてくれ、これがその時だ」 

 艦内は一瞬の静寂が流れ、その後、乗組員達の元気な返事が戦場の喧騒をかき消すように響いた。

「提督!フェニックスクラウンの準備が完了しました!艦内の再起動完了し、シールドも全開です!」

 マクスロイ艦長が告げた。 

 フェニックスクラウンの艦内では全員一丸となり、まだ続く戦闘に備えて行動を開始した。

 各々が自身の役割を全うし、訓練の成果を現実の戦場で発揮し始めた。敵を仕留め、我が艦隊の安全を守るために。

 そして再結集しつつこちらに向かってくる敵との戦いに向け、全艦攻撃態勢で敵との距離を詰めていった。
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