忘却の艦隊

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第55話 結束

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 マクスロイ艦長が重巡洋艦のフランジッド艦長に問いかけたが、フランジッド艦長はうつむいたまま返事をしなかった。

 殆どの者がログアウトし、残ったのはこの2人と、ホロ会議を手配したホストのミズリアだけだ。
 そのミズリアも席を立っており、話が終わったらログアウトする流れだ。

「フランジッド艦長、貴官はどうするんだ?ジルテット中佐に従うのか?それともダレン司令に従うのか?その決断は? 即答は求めない。だが、誠心誠意考えてみてくれ」

  フランジッド艦長は沈黙し、表情からは何を考えているのか読み取れなかった。難しい決断を迫られ、彼は時間を必要としているようだが、ログアウトしようとしていたマクスロイに答えた。

「マクスロイ艦長、私もダレン司令に従います。私たちは仲間を救い、一緒に戦うべきだと信じています。誤った情報を無のみにした自分が恥ずかしい」 

「ではよろしく頼むよ。ただ、貴官に頼みがある。皆がイエスマンだと困るので、貴官には司令に楯突くとまでは言わないが、反対意見を出す役を担って欲しい。恐らく反対意見を出す者はジルテッドと共に離反したはずだ。鵜呑みにして尚艦隊に残った貴官にしか頼めない。頼まれてもらえないか?」

「そういう事ならば。司令に嫌われますかな?」

「それはないぞ。個人の人となりを誹謗中傷するのでなければな。それとなくそんな役回りを頼んだものがいると伝える。慎重論を出した者を蔑ろにはしない方だ」

 フランジッド艦長は融通が利かないタイプで視野がやや狭い。
 だが、法を重んじるタイプだ。

 そして時間が過ぎ、全艦がジャンプ準備を進めていく中、フランジッド艦長の口からようやく言葉が出たが、マクスロイから各艦に誤解が解けて彼は頼れる仲間になったと伝えると艦長たちから歓喜の声が上がった。

 また、艦隊の決定と、離反した艦がいるとの情報は包み隠さず伝えられた。
 全艦一丸となり仲間たちを救出するためジャンプの準備を行い、士気はぐんと上がった。 

 ホロ会議の後、静寂が流れる司令部でダレンは深く息を吸い込んだ。

「艦隊全員が結束した。我々は戦い、そして必ず勝つ。それが我々の使命だ」

 額に手を当てるように宣誓し、戦闘準備に戻った。
 その後、1艦が欠けることもなく重力ジャンプを実行し、ジルテット中佐の反乱を鎮圧するための移動が始まった。

 艦隊の士気は最高潮に達し、一つの目標に向かって一心不乱に準備に勤しんだ。
 彼らの闘志、結束力、そしてダレンのリーダーシップは、遥かな宇宙の戦場で一つの伝説を刻むこととなる。
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