忘却の艦隊

第51話 離反

　翌日、予定通りに重力ジャンプが可能なところにまで来ており、ダレンが全艦に向け司令を飛ばした。

「全艦に告げる、これより事前に通達した星系へ重力ジャンプする！皆ジャンプアウト後に再び合おう！全艦重力ジャンプを実行せよ！」

　ダレンの命令を受けた艦が次々と重力ジャンプした。

　・
　・
　・

　５日後、ジャンプアウトに備えサブブリッジ要員以外の司令部、ブリッジクルーが旗艦のブリッジに待機していて、マクスロイ艦長がてきぱきと指示を出す。

　そしてジャンプアウトした。

　ジャンプアウトした瞬間、ダレン司令は不穏な予感に襲われたが、レーダー担当のアルマイン少尉からの報告を待った。
　彼女がブリッジのメイン画面にレーダーの索敵画面を映し出し、皆がそれを見たが・・・そこには敵の姿がなかった。それどころか、見方の艦の一割近い25艦がジャンプアウトしてこない。

「アルマイン、どうなっているんだ？」

　ダレンはレーダー担当に問いただした。

「レーダー担当から報告します。初期スキャンの結果見方以外の艦影なし。人工構造物確認できず。また、現在25艦がジャンプアウトしていません」

「トラブルで気が付いた艦が付き合っているかもですから、暫く待つしかないわね。トラブルでしたら１時間もすれば連絡艦替わりに1艦は来るでしょう」

　ミズリアが指摘した。

　しかし、一時間経過も25艦どころか１艦も現れなかった。

　ダレンは驚愕と怒りに震えた。

「どういうことだ！？25艦がジャンプアウトしていないぞ！」

　ダレンは皆を見るが、答えを知るものは皆無だった。

「ミズリア、今すぐ会議を開け。一部の艦がいない事を話し合う。全艦長によるホロ会議だ！」

　ダレンは怒りのままに命令を発し、2分後にホロ会議を始める事ができた。

「全艦に告げる。知っての通り一部の艦がいない。誰か知らないか？」

　そんな中、重巡洋艦のイルヌ艦長が挙手をするか迷い、ダレンの目を惹いた。

「イルヌ艦長？何か知っているのか？」

　ダレンの鋭い眼光に、イルヌは汗をかいた。彼は正直に報告することにした。

「はい、司令。ジャンプ直前にジルテット中佐から暗号メッセージを受け取りました。彼は司令の命令に背いて、敵を追いかける星系にジャンプすると言っていました。私はそれを拒否しましたが、一部の艦長の中に、彼に賛同する者もいたようです」

「なんだと！？」

　ダレンは激怒し、ジルテット中佐の反逆を許せなかった。
　ジルテットは艦隊の統一や安全を脅かすだけでなく、敵に対して無謀な行動をとっていた。
　自分のプライドや感情を優先して、艦隊の利益やクルーの命を軽視していたのだ。

「何だ？何か知っていれば遠慮せず言え！」

　重巡洋艦のイルヌ艦長は言葉に詰まった。彼はジャンプ直前に受け取った暗号メッセージを思い出したのだ。それは反ダレン派の筆頭であるジルテット中佐からのものだった。彼はダレンの命令に背いて、敵を追いかける星系にジャンプすると宣言して同志を募っていた。イルヌは誘われたが、彼はダレンに忠誠を誓っていたので、断った。しかし、他の艦長の中には、ジルテット中佐に賛同する者もいたようだ。

　ダレンはその言葉に衝撃を受けた。ジルテット中佐が敵を追いかけるべく星系にジャンプしたというのか。それは人類の星系への早道ではない。それは敵の罠かもしれない。

「ジルテット中佐は勝手に敵を追いかけ、敵がジャンプしたと思われる星系にジャンプしたのか！？。彼は私の命令に背いた反逆者だ。彼は艦隊の統一や安全を脅かすだけでなく、敵に対して無謀な行動をとっている。自分のプライドや感情を優先して、艦隊の利益や命を軽視している。また、私に対して反抗的で、女性に対して軽蔑的だ。彼は謝罪したとはいえ、彼の態度は改善されるどころか、悪化している。彼の私に対する感情や態度はともかく、１つ言えるのは艦隊に忠誠を誓っていない。彼は私達の敵だ」

　ダレンは憤慨した。彼はジルテット中佐の反逆を許せなかった。彼は艦隊の統一や安全を守ることに決めていた。敵の情報を収集し、戦略を立てることを重視しており、艦隊の練度や補給状況を考慮していた。もちろん自分のプライドや感情を抑え、艦隊の利益やクルーの命を尊重していた。

「全艦に告げる。我々はジルテット中佐の反逆に対して、どのように対処すべきかを話し合う。敵を追いかけるべく私が指示した以外の星系にジャンプしたようだが、それは人類の星系への早道ではないし、高々２５艦では話にならない。そもそも敵の罠かもしれない。我々は２５艦を追うべきか、それとも追わずに別の航路を選ぶべきか。各艦の意見を聞きたい」

　ダレンは全艦に問いかけた。内容が内容だけに各艦長の意見を尊重することに決めていた。しかし、艦隊の統一や安全を守ることに決めており、その選択をしてくれると信じていた。
　敵の情報を収集して戦略を立てる必要がある。
　ダレンは艦隊の練度や補給を考慮して戦闘を回避していたのだ。

　そして、これからの方針を決める事にし、ホロ会議を続けた。