50 / 85
第50話 訓練
しおりを挟む
しかし、ダレンは全艦長には内緒でもう一つの設定を加えていた。それは、ジャンプアウトして模擬戦が始まるが、開始とともに旗艦が敵艦と衝突し中破するというものだった。
旗艦と司令部以外は知らない。ダレンは指揮を取れなくなり、各艦は衝突警報に驚くことになる。ダレンは分隊指揮の経験がない艦長たちの本当の実力を試し、試練と危機を与えるつもりだった。
・
・
・
第2回模擬戦の開始となり、カウントダウンと共に重力ジャンプアウトすると、全艦に衝突警報が鳴り響いた。
そして自動操縦による緊急回避行動が行われたが、あまりにも近すぎて一部の艦が回避しきれなかった。
その中には旗艦があり、敵艦と激突して大破して旗艦からの通信は途絶えた。
各艦は唖然とした。
数艦から旗艦へ無事なのかを問い合わせが入ったが、もちろん返答はなかった。
その行為は時間の無駄だった。
その判断ミスから敵に先手を打たれる結果に繋がった。
敵艦隊は旗艦が大破した混乱に乗じて攻撃を仕掛けた。
旗艦の確認は護衛艦の役目だ。
しかし、経験値なさと指示待ちだったのもあり、後手後手になってしまった。
各艦は敵の猛攻にさらされ、分隊指揮の経験がない艦長たちは右往左往した。
各艦は指示をくれるものがいなくなり、個別に操艦をしており分隊としてのまとまりと連携は崩れた。
分隊としての統率まで失われ、分隊としての実戦でまともに対処できるようになるのは程遠く感じ取れた。
ダレンは旗艦のブリッジで苦笑しながら、シュミレーターで各艦の様子を見ていた。
分隊指揮の経験がない艦長たちに失望こそしないまでも、前途多難だなとつぶやき、司令部が壊滅した後の戦いぶりに焦りを感じた。
ある戦艦は2艦で駆逐艦を攻撃し、ある巡洋艦は戦艦2艦に単独で仕掛けて返り討ちに遭う様だ。
中には数艦でまとまって動いたのもあるが、殆どは各個撃破されていった。
ダレンは模擬戦の結果を全艦長に伝えた。
艦長立ちに対して、厳しくではないが散々たる結果を残念だと告げた。
「先程の模擬戦だが、結果は言うまでもないと思うが、何故だろうか?」
彼らの失敗を認めさせ、分隊として行動する必要性を理解してもらいたかった。
今回のことを期に、特に分隊長の成長を求めたと言うか、期待した。
ダレンは旗艦のブリッジで表に出さないも、苦笑いしながらホロ会議で各艦長の様子を見ていた。
「このような模擬戦は意味がない!接近警報が鳴るような事が起こるなんて考えられない!私達を貶める為としか思えない!」
「そうだ!嫌がらせだ!」
「私達が苦しんでいるのを見て愉しんでいるのだろう!」
「女に良いところを見せようとしているにちがいない」
・
・
・
一部の艦長からはダレンのやり方に文句が出た。
ダレンは分隊指揮の経験がない艦長たちに対して、無理を強いたり、あり得ない危険な設定をしたりと不公平だと言われた。
「自分達の無能さを棚に上げるものではないと思うがな。もちろん私もだ。訓練をしていないからこそ、そのような状態の者が指揮を取れないと理解しなければならない。我々はどう見ても訓練不足だ。先の戦いで訓練を受けた者が皆死んでしまった」
しかし、中立派の艦長たるスベルク艦長から訓練を受けた分隊長が皆無だと指摘された。皆気が付いており、ダレンは事実を皆が受け入れるのを待った。
ダレンではなく、艦長の1人が皆に対して、現実を突きつけたことに意味がある。
「そこでこれからのことについてだが・・・」
ダレンは彼らに対して自分たちの能力を高めるように促した。
もちろんダレンが訓練をつけるが。
ダレンは分隊長、次席の分隊長予備軍の艦長達に分隊指揮のノウハウを叩き込むことにした。
次の重力ジャンプまでの数日の間、その為の模擬戦をやり込むと宣言した。
その後、ダレンは彼らに対して、厳しい訓練を課した。
効果的な指導をしたが、それはあくまで必要な知識と技術を教えるためだ。
各自に分隊としての自立と責任を持たせ成長をさせたが、あまりにハードだったため、一部の者がかなりの不満を抱くことになった。
ダレンは分隊指揮の経験がない艦長に対し、分隊指揮を采るに十分な知識と訓練を実施し、立派な指揮官へと変貌させた。
後は実践あるのみだ。
旗艦と司令部以外は知らない。ダレンは指揮を取れなくなり、各艦は衝突警報に驚くことになる。ダレンは分隊指揮の経験がない艦長たちの本当の実力を試し、試練と危機を与えるつもりだった。
・
・
・
第2回模擬戦の開始となり、カウントダウンと共に重力ジャンプアウトすると、全艦に衝突警報が鳴り響いた。
そして自動操縦による緊急回避行動が行われたが、あまりにも近すぎて一部の艦が回避しきれなかった。
その中には旗艦があり、敵艦と激突して大破して旗艦からの通信は途絶えた。
各艦は唖然とした。
数艦から旗艦へ無事なのかを問い合わせが入ったが、もちろん返答はなかった。
その行為は時間の無駄だった。
その判断ミスから敵に先手を打たれる結果に繋がった。
敵艦隊は旗艦が大破した混乱に乗じて攻撃を仕掛けた。
旗艦の確認は護衛艦の役目だ。
しかし、経験値なさと指示待ちだったのもあり、後手後手になってしまった。
各艦は敵の猛攻にさらされ、分隊指揮の経験がない艦長たちは右往左往した。
各艦は指示をくれるものがいなくなり、個別に操艦をしており分隊としてのまとまりと連携は崩れた。
分隊としての統率まで失われ、分隊としての実戦でまともに対処できるようになるのは程遠く感じ取れた。
ダレンは旗艦のブリッジで苦笑しながら、シュミレーターで各艦の様子を見ていた。
分隊指揮の経験がない艦長たちに失望こそしないまでも、前途多難だなとつぶやき、司令部が壊滅した後の戦いぶりに焦りを感じた。
ある戦艦は2艦で駆逐艦を攻撃し、ある巡洋艦は戦艦2艦に単独で仕掛けて返り討ちに遭う様だ。
中には数艦でまとまって動いたのもあるが、殆どは各個撃破されていった。
ダレンは模擬戦の結果を全艦長に伝えた。
艦長立ちに対して、厳しくではないが散々たる結果を残念だと告げた。
「先程の模擬戦だが、結果は言うまでもないと思うが、何故だろうか?」
彼らの失敗を認めさせ、分隊として行動する必要性を理解してもらいたかった。
今回のことを期に、特に分隊長の成長を求めたと言うか、期待した。
ダレンは旗艦のブリッジで表に出さないも、苦笑いしながらホロ会議で各艦長の様子を見ていた。
「このような模擬戦は意味がない!接近警報が鳴るような事が起こるなんて考えられない!私達を貶める為としか思えない!」
「そうだ!嫌がらせだ!」
「私達が苦しんでいるのを見て愉しんでいるのだろう!」
「女に良いところを見せようとしているにちがいない」
・
・
・
一部の艦長からはダレンのやり方に文句が出た。
ダレンは分隊指揮の経験がない艦長たちに対して、無理を強いたり、あり得ない危険な設定をしたりと不公平だと言われた。
「自分達の無能さを棚に上げるものではないと思うがな。もちろん私もだ。訓練をしていないからこそ、そのような状態の者が指揮を取れないと理解しなければならない。我々はどう見ても訓練不足だ。先の戦いで訓練を受けた者が皆死んでしまった」
しかし、中立派の艦長たるスベルク艦長から訓練を受けた分隊長が皆無だと指摘された。皆気が付いており、ダレンは事実を皆が受け入れるのを待った。
ダレンではなく、艦長の1人が皆に対して、現実を突きつけたことに意味がある。
「そこでこれからのことについてだが・・・」
ダレンは彼らに対して自分たちの能力を高めるように促した。
もちろんダレンが訓練をつけるが。
ダレンは分隊長、次席の分隊長予備軍の艦長達に分隊指揮のノウハウを叩き込むことにした。
次の重力ジャンプまでの数日の間、その為の模擬戦をやり込むと宣言した。
その後、ダレンは彼らに対して、厳しい訓練を課した。
効果的な指導をしたが、それはあくまで必要な知識と技術を教えるためだ。
各自に分隊としての自立と責任を持たせ成長をさせたが、あまりにハードだったため、一部の者がかなりの不満を抱くことになった。
ダレンは分隊指揮の経験がない艦長に対し、分隊指揮を采るに十分な知識と訓練を実施し、立派な指揮官へと変貌させた。
後は実践あるのみだ。
10
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる