忘却の艦隊

KeyBow

文字の大きさ
上 下
39 / 85

第39話 引き継ぎ

しおりを挟む
 ミカだけはこの人何者?といった顔をするも、ホロ会議に参加すべく席に着く。

 ダレンもロッテンウルの椅子を引くと自分も席に着いた。
 彼の前には全艦の艦長や副官たちがホログラムで映し出されていた。
 また、輸送艦にいる大佐以上が直接会議室に入る。
 宙兵隊だったり陸軍だったりと、航宙軍以外もだ。
 また、新兵の中で士官学校を上位で卒業した者の中から特別に何人かが部屋の片隅で見る事を許された。
 もちろん発言は聞かれた時以外禁止だ。

 彼らはダレンの姿を見て、驚きや敬意の表情を浮かべた。
 ダレンはロッテンウルの隣に座り、彼に頷いてから話し始めた。

「全艦揃っているな?。言うまでもないが俺はダレン・ブレイクで間違いなくこの艦隊の指揮官だ」
 
 ダレンはそう言ってカメラに全身を映すように指示し、会議テーブルの上に立った。

「見ての通りちゃんと脚がある。だから幽霊じゃないぞ」  

 一部から怪訝そうな視線があったが、笑い声も聞こえてくる。
 それを見て頷くとダレンは着席した。

「まずは、君たちに謝る必要があると思う。俺はこの艦隊の指揮をし始めたばかりで、君たちのことを殆ど知らない。指揮を執る直前に提督室の最終調整をしており、本来殆どの艦長とは艦の引き渡しが済めば話をする事もなかった。それもあり元々知己のある者以外と話す機会も少なかった。恥ずかしながら帰還のブリッジメンバーの顔と名前すら一致していない。それに君たちの一部からは信頼を得ていないと思う。それ故あの反乱が起こった。俺はあの反乱の時に、この艦の視察に同行した2艦の副長が止めるのを振り切り、この輸送艦で起こった俺を殺そうとした反乱者を捕らえようとを武芸に物を言わせて1人で突っ込んでいった。応援を呼ぶ時間もなく、殆どの武器の使用ができないようにしてはおき、ほぼ無力可して制圧するも、結局重症を負った。それが良かったのか悪かったのか、俺には分からない。俺はただ、自分の直感に従って行動した。俺は君たちに迷惑をかけたかもしれないし、不快な思いをさせたかもしれない。それに対して、謝る。心配掛けてしまった。済まなかった」

 ダレンはそう言って、深く頭を下げた。
 彼の言葉に、ホロ会議に参加した中の人々は様々な反応を示した。
 中には、ダレンの謙虚さに感動したり、彼の勇気に敬服したりする者もいたが、多くはまだ彼に対して疑いや不満を抱いていた。
 謝罪も偽善だと言わんばかりに睨む者もいたが、ダレンはそれを感じ取るもそれでも先を続けた。

「だが、俺は諸君にお願いがある。俺はこの艦隊の指揮官として、諸君に協力してほしいんだ。俺は君たちのことを尊敬しているし、君たちの意見や提案を聞きたいと思っている。俺は1人では何もできない。俺は君たちと一緒にこの艦隊を最善の状態に保ちたいと思っている。君たちと一緒にこの戦争に勝ちたいと思っている。一緒に人類の未来を守りたいと思っているし、俺を信じてほしいんだ」

 ダレンはそう言って真剣な眼差しでホロ会議参加者を見回した。彼の言葉にホロ会議の参加下者は少しずつ表情を和らげていった。
 ダレンはそれを見て安心し、自分の胸に手を当てた。

「俺は先程少将に昇進した。これは俺の功績じゃない。これは君たちの功績だ。君たちは俺を支えてくれたし助けてくれた。俺は君たちに感謝し、敬意を表する。俺はこの少将の徽章を君たちの代表として受け取る。そして俺は少将としての責任を負い、君たちと共に戦う。俺はこの少将の権限を君たちの為に使う。俺は少将として艦隊の名誉を君たちと共に守る」

 ダレンはそう言って少将の徽章を高く掲げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...