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第38話 ロッテンウル
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医療室から出ると、その前に会議室にダレンだけ通された。
驚いたことに、この艦隊にいないはずのロッテンウル大将がいた。
彼は立ち上がるとダレンに敬礼をし、ダレンも反射的に敬礼を返す。
「ダレン大佐、久しいな。33年振りかな?君は立派に艦隊を率い、ここまで導いた本物の英雄だ。そして君はこれからは少将だ」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに1枚の紙と少将の徽章を渡した。
「少将ですか?どういうことですか?」
ダレンは紙を見た。
もちろんそれは昇進令だった。
「儂はお前さんをこの艦隊というのではなく、工廠部門の少将に任命するだけじゃよ。まあ、これは私の権限の範囲内だから心配するな。儂にはこの艦隊の指揮権を有するお前さんに対して援護射撃くらいしかしてやれん。そして、儂の権限を正式にダレン少将に託す旨も書いてあるし、艦隊のログに正式に記録しといたからな」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに続きを話し始めた。
「儂がこの艦にいるのは、ガン治療のためじゃて。本来帰路になんとかいう星系に寄るのじゃったが、補給物資を届けるついでに儂を降ろしてもらうように艦長にお願いしておったのじゃ。そこにはガンの特殊な治療法を行うことができる医師がおるとのことじゃった。艦隊の輸送任務の経由地にあるそのスペシャリストに診てもらうために、コールドスリープに入っておった。輸送艦の艦長だけが私の存在を知っておったが、しかし、先日の反乱時にあの少将が私のカプセルを開けてしまい、コールドスリープを解除しおった。恐らくあの女は儂を人質にしようとしたのじゃろうが、お前さんが倒してくれて、命拾いをした次第なんじゃ。それとこの33年の間に開発した医療ポッドに半年から1年入らねばならぬが、どうやら末期のガンにも効くらしいのう」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに感謝の言葉を述べた。
「大将、私はただ、義務を果たしただけです。私は大将が恩義を着るような事はしていないはずなんだが・・・」
ダレンは謙遜したが、直ぐに否定される。
「いやいや、謙遜しなくても良い良い。お前さんの機転は素晴らしい。お前さんは間違いなく儂の知る限り最高の指揮官じゃ。儂は1人の男として、友人としてお前さんを誇りに思っておる。こう見えても感謝しておるのじゃぞ。そして、お前さんに頼みがある」
ロッテンウルはそう言って、ダレンを真剣な表情で見つめた。
「頼みですか?何でしょうか?」
ダレンは不安になった。
「もう長くはないはずじゃった。儂はガンを克服したとしても軍を去ることにする。儂は工廠部門のトップとしてその権限を全てお前さんに譲ろうと思う。これは儂の最後の決断であり最後の願いじゃ。どうか引き受けて欲しい。そして、儂はお前さんが治療されていた医療ポットに入って治療を受ける。あれはまだ試作の1台だけらしいのう」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに涙を浮かべた。
「大将、これは・・・」
ダレンは言葉に詰まった。
「ダレン、儂は全てをお前さんに託す。どうかこの艦隊、いや、人類を守ってくれぬか。お前さんにこの艦隊を導いて欲しいと心の底から思っておる。儂はお前さんに酷いことを求めておる。済まぬ。他に成し遂げられそうな者を知らぬ。もし儂が指揮をしておったら、敵艦隊を屠った後、超新星爆発に巻き込まれて死んでおったはずじゃ。人類の未来をお前さんに託す。この艦隊を栄光に導いてくれ。儂はお前さんに・・・」
ロッテンウルはそう言って、涙を流しながらダレンに抱きついた。
ロッテンウルはダレンより握りこぶし1つ小さく、大きくもなければ小さくもないが、ダレンの目にはそれ以上に小さく映った。
「大将、私は・・・」
ダレンはロッテンウルに感謝の言葉を伝えようとしたが、その時ドアがノックされ宙兵隊が現れた。
「失礼します。全艦とのホロ会議の準備が整いましたのでお知らせに参りました」
ミズリア達も入ってきて、ロッテンウルとダレンの服や髪型を直していく。
「閣下、お久し振りです。ようやくお会いできました」
「ミズリア君だね。すっかり別嬪さんになったのう。儂が何故これまで貴官からの取材を断ってきたか分かるか?」
「いえ。堅物な方とは聞いておりましたが」
「貴官がダレンに辿り着くからじゃ。儂の事は覚えておるじゃろ?」
「はい。あの時一緒にダレン少将に助けられ、ヘリで去っていったのが閣下だとは軍に入り直ぐに分かりました」
「まあ、将官以上は写真と軍歴が広報されておるからな。じゃから儂の代わりにダレンの取材をさせる事にしたのじゃ」
「感謝しておりますわ」
「まあ、此奴の女運の無さは呆れるばかりじゃし、これまでろくな女としか過ごしておらん。育った環境が悪かったのもあるがな、今は君と氷の魔女、それに威勢のよい娘と恵まれているようじゃな。ミカ中尉と言ったな。この馬鹿は肉弾戦は無類の強さを誇るが、過信するところがある。守ってやってくれ。ミズリア中尉はオツムの出来が此奴とは比べられぬ。常識を説いてやってくれ。氷の魔女、まさかお主がダレンを選ぶとはな。此奴はカリスマ性に乏しい。ノリコ大佐は全艦を鼓舞したと聞く。彼の味方として艦隊の指揮をサポートしてやってくれぬか」
ミカとノリコは首を傾げたが、それでも3人はハモる・・・
「昇進ですか?」
「うむ。他の者も確認し、儂の名で昇進させ、正式に記録しておいた」
ミカだけは、この人何者?といった顔をするも、ホロ会議に参加すべく席に着いたのであった。
後書き失礼します。少しでも面白い、先が読みたい!と感じていただければ【お気に入り】登録にて応援をお願いします!お気に入りをしてもらうと励みになります!宜しくお願いします!
驚いたことに、この艦隊にいないはずのロッテンウル大将がいた。
彼は立ち上がるとダレンに敬礼をし、ダレンも反射的に敬礼を返す。
「ダレン大佐、久しいな。33年振りかな?君は立派に艦隊を率い、ここまで導いた本物の英雄だ。そして君はこれからは少将だ」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに1枚の紙と少将の徽章を渡した。
「少将ですか?どういうことですか?」
ダレンは紙を見た。
もちろんそれは昇進令だった。
「儂はお前さんをこの艦隊というのではなく、工廠部門の少将に任命するだけじゃよ。まあ、これは私の権限の範囲内だから心配するな。儂にはこの艦隊の指揮権を有するお前さんに対して援護射撃くらいしかしてやれん。そして、儂の権限を正式にダレン少将に託す旨も書いてあるし、艦隊のログに正式に記録しといたからな」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに続きを話し始めた。
「儂がこの艦にいるのは、ガン治療のためじゃて。本来帰路になんとかいう星系に寄るのじゃったが、補給物資を届けるついでに儂を降ろしてもらうように艦長にお願いしておったのじゃ。そこにはガンの特殊な治療法を行うことができる医師がおるとのことじゃった。艦隊の輸送任務の経由地にあるそのスペシャリストに診てもらうために、コールドスリープに入っておった。輸送艦の艦長だけが私の存在を知っておったが、しかし、先日の反乱時にあの少将が私のカプセルを開けてしまい、コールドスリープを解除しおった。恐らくあの女は儂を人質にしようとしたのじゃろうが、お前さんが倒してくれて、命拾いをした次第なんじゃ。それとこの33年の間に開発した医療ポッドに半年から1年入らねばならぬが、どうやら末期のガンにも効くらしいのう」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに感謝の言葉を述べた。
「大将、私はただ、義務を果たしただけです。私は大将が恩義を着るような事はしていないはずなんだが・・・」
ダレンは謙遜したが、直ぐに否定される。
「いやいや、謙遜しなくても良い良い。お前さんの機転は素晴らしい。お前さんは間違いなく儂の知る限り最高の指揮官じゃ。儂は1人の男として、友人としてお前さんを誇りに思っておる。こう見えても感謝しておるのじゃぞ。そして、お前さんに頼みがある」
ロッテンウルはそう言って、ダレンを真剣な表情で見つめた。
「頼みですか?何でしょうか?」
ダレンは不安になった。
「もう長くはないはずじゃった。儂はガンを克服したとしても軍を去ることにする。儂は工廠部門のトップとしてその権限を全てお前さんに譲ろうと思う。これは儂の最後の決断であり最後の願いじゃ。どうか引き受けて欲しい。そして、儂はお前さんが治療されていた医療ポットに入って治療を受ける。あれはまだ試作の1台だけらしいのう」
ロッテンウルはそう言って、ダレンに涙を浮かべた。
「大将、これは・・・」
ダレンは言葉に詰まった。
「ダレン、儂は全てをお前さんに託す。どうかこの艦隊、いや、人類を守ってくれぬか。お前さんにこの艦隊を導いて欲しいと心の底から思っておる。儂はお前さんに酷いことを求めておる。済まぬ。他に成し遂げられそうな者を知らぬ。もし儂が指揮をしておったら、敵艦隊を屠った後、超新星爆発に巻き込まれて死んでおったはずじゃ。人類の未来をお前さんに託す。この艦隊を栄光に導いてくれ。儂はお前さんに・・・」
ロッテンウルはそう言って、涙を流しながらダレンに抱きついた。
ロッテンウルはダレンより握りこぶし1つ小さく、大きくもなければ小さくもないが、ダレンの目にはそれ以上に小さく映った。
「大将、私は・・・」
ダレンはロッテンウルに感謝の言葉を伝えようとしたが、その時ドアがノックされ宙兵隊が現れた。
「失礼します。全艦とのホロ会議の準備が整いましたのでお知らせに参りました」
ミズリア達も入ってきて、ロッテンウルとダレンの服や髪型を直していく。
「閣下、お久し振りです。ようやくお会いできました」
「ミズリア君だね。すっかり別嬪さんになったのう。儂が何故これまで貴官からの取材を断ってきたか分かるか?」
「いえ。堅物な方とは聞いておりましたが」
「貴官がダレンに辿り着くからじゃ。儂の事は覚えておるじゃろ?」
「はい。あの時一緒にダレン少将に助けられ、ヘリで去っていったのが閣下だとは軍に入り直ぐに分かりました」
「まあ、将官以上は写真と軍歴が広報されておるからな。じゃから儂の代わりにダレンの取材をさせる事にしたのじゃ」
「感謝しておりますわ」
「まあ、此奴の女運の無さは呆れるばかりじゃし、これまでろくな女としか過ごしておらん。育った環境が悪かったのもあるがな、今は君と氷の魔女、それに威勢のよい娘と恵まれているようじゃな。ミカ中尉と言ったな。この馬鹿は肉弾戦は無類の強さを誇るが、過信するところがある。守ってやってくれ。ミズリア中尉はオツムの出来が此奴とは比べられぬ。常識を説いてやってくれ。氷の魔女、まさかお主がダレンを選ぶとはな。此奴はカリスマ性に乏しい。ノリコ大佐は全艦を鼓舞したと聞く。彼の味方として艦隊の指揮をサポートしてやってくれぬか」
ミカとノリコは首を傾げたが、それでも3人はハモる・・・
「昇進ですか?」
「うむ。他の者も確認し、儂の名で昇進させ、正式に記録しておいた」
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