忘却の艦隊

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第33話 女性会の会議と視察

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 女性会の会議にて持ち上った意見の中でも特に注目されたのは、男女比や人員配置に関する事柄だった。
 参加者たちは、男性が不足している現状について懸念を表明し、解決策を模索した。

 ミズリア少尉から提案された案では、男性は尉官未満であれば彼女を2人まで、尉官以上であれば3人まで認めるというものであった。 
 この案は全会一致で可決された。

 女子会は各艦から代表1人が参加しており、宙兵隊や陸軍などの航宙艦の指揮系統以外からも参加者が集まっていた。 
 ほとんどの参加者はホログラム会議を通じて参加したが、新兵の代表が「男が複数の女を囲えないとやれないじゃない!」

 一部の者が真っ赤になるような赤裸々な内容を感情的に訴えるなど、議論が紛糾する場面もあった。

 ミズリアが提案したのは、やはりダレンの副官だからというのが大きい。

 ライナン星系からジャンプ後、程なくしてこの男女比についての問題に気が付いた者がミズリアに相談を持ちかけ、ミズリアも知己のある女性士官とこの問題に取り組んでいた。

 本国へ帰還を果たせるのは低重力ドライブで33年のコールドスリープの後、早くても1年、遅ければ数年掛かる試算があり、問題が大きくなると予測していた。

 それが早くもコールドスリープ明け最初のジャンプ後に問題が表面化しており、その問題に気が付き難いダレンに話をするタイミングを掴みかねていた。

 元々航宙軍の佐官であるダレンは言い寄られることが多く、深刻な問題だと気が付き難い。
 戦時下の士官では複数の異性と交際するのはよくある事だった。
 暗黙の了解を公然のものにするだけだ。
 狙いは、女性をくいものにする一部の下郎の排除だった。

 ・
 ・
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「大佐、この艦は新造艦ですか?」

 ライナン星系にいた輸送艦の副長はダレンに尋ねた。
 今回の機会に是非とダレンの視察に同行したのだ。

「そうだ。この艦は最新型の輸送艦だ。高速で大量の物資や人員を運ぶことができる。戦艦と同じ速度の出る重力ドライブを搭載している」

「すごいですね。この艦に乗れるなんて、私達は幸せ者です」

 ダレンの説明に副長は感嘆した。

「そうだな。でも、この艦にも問題がある」

「問題ですか?何ですか?」

 副長は首を傾げる。

「男女比だ。この艦に乗っている女性のほとんどが新兵や配置換えされた者であり、男性よりも多く配属されている。そのせいで、男性が不足しているんだ。この艦に限って言えば、クルー以外の客は全員女なんだ」

「そうですか・・・それは大変ですね」

「そうだよ。女性にも性欲があるし、将来結婚して子をなしたいと思うのが普通だろう。でも、男性が足りないと、それが叶わないんだ。だから、今日の女子会もそれについて重要な話しをするんだろうな」

「女子会ですか?それは何ですか?」

 副長は女子会の開催を何故か知らなかった。

「女子会というのは、女性だけで集まって話すことだ。今日は男女比や人員配置など、重要な話しもするらしい」

 ダレンは説明した。

「そうですか・・・それは興味深いですね」

 副長は興味を持った。

「そうだな。でも、俺は今後は参加しないことにした。俺は男だからな。冒頭のみ挨拶や司令部の認めた組織と伝えるだけだったが、あの場はやばかったぞ」

 ダレンは笑いながら答えた。

「大佐は参加しないんですか?大佐は女性に人気がありますから、歓迎されると思いますよ」

「そうか?でも、俺は女子会の雰囲気についていけないかもしれないし、他の女性との関係もあって・・・」

 ダレンは言って、ノリコやミズリアのことを思い出した。

「他の女性との関係ですか?大佐に彼女がいるんですか?」

「そうだな・・・まあ、そんな感じだ」

 副長の問にダレンは曖昧に答えた。

「そうですか・・・それでは失礼しますが、大佐の彼女は誰ですか?」

 副長は好奇心旺盛だった。

「それは・・・内緒だよ。さて、ここは何だ!?」

 ダレンはそう言うと話題を変え、目の前の扉に書かれた文字を読み首を傾げる。

「ここは・・・特別室です」

 この艦の副長が答えた。

 ダレンは自らが率いてきた艦の事は知っているが、その後の改造や運用については知らなかった。
 感の性能などはよく知っているが、その後の運用について知る必要から視察に踏み切った。 
 バーチャルではなく、実際に自ら赴く必要を感じていた。

「特別室?それは何だ?」

 ダレンは不思議に思った。

「それは・・・この艦に乗っている特別な人たちの部屋がある区画です」

 副長は申し訳なさそうに言った。

「特別な人たち?それは誰だ?」

「それは・・・トルシク准将とその部下たちです」

 副長は言いにく曹に答えた。

「トルシク准将?ああ、あの憲兵として星系防衛軍の監査の為に乗り合わせている奴か。あいつは俺が気に入らないらしいな」

「そうですか・・・それは大変ですね」

 副長の声は同情しているようだった。

「そうだよ。あいつは自分の方が階級が上だと言って、俺が持っている指揮権に納得しないと言っている。しかも、嫉妬から指揮権に納得しない者を募り、俺を殺そうとしているらしいな」

 ダレンは苦笑交じりだ。

「えっ!?本当ですか!?それは危険ですね!」

 副長は素で驚いた。

「本当だよ。俺の部下がその計画を聞きつけて、教えてくれたんだ。あいつらは今、この艦の中で武器や爆弾を集めているらしい。俺を殺すチャンスを狙っているんだろうな」

「それは大変です!大佐、どうしますか!?」

 副長は慌てた様子だったが、ダレンが手で制した。

「そうだな・・・まずはこの扉を開けてみよう。あいつらが何をしているか見てみよう。わざと泳がせているし、予め何人かこちら側のものを潜入させているから、計画が実行されてもうまく行かないさ」

 ダレンはそう言って、扉に近づいた。

「大佐、待ってください!危険です!」

 副長は止めようとしたが、遅く、ダレンが扉を開けた瞬間、扉の中で爆発が起きた。
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