忘却の艦隊

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第32話 男女比

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 ダレンとノリコは格納庫から出てランチに乗り込んだ。
 彼らは輸送艦の視察に向かう予定だった。ダレンは旗艦に居住しており、ノリコは今いる鹵獲艦の艦長だった。2人はサクスンとの手合わせの後、互いに想いを打ち明けたが、まだ恋人同士という関係にはなっていなかった。ダレンはノリコに気があることは確かだったが、彼女が艦長であることや、他の女性との関係もあって一歩踏み出せなかった。ノリコもダレンに好意を寄せていたが、彼が朱き狂犬であることや、自分が氷の魔女であることを考えると、自信が持てなかった。それに、彼女も女子会が発足する事が決まったばかりで、他の女性との競争に巻き込まれることを恐れていた。

「大佐、これからどうしますか?」

 ノリコはダレンに尋ねた。

「そうだな。予定通り輸送艦の視察をする」

「そうですね。それでは輸送艦の視察に行きましょう」

 ダレンとノリコはランチで輸送艦に向かった。彼らは女子会開催のため、女性だらけの輸送艦に行くことになっていた。輸送艦は全部で5艦あり、そのうち高級士官がいる艦を選んだ。
 輸送艦には合計26000人の女性、4000人の男性が乗っており、男女比が極端に偏っていた。その理由は、輸送艦に乗っている女性のほとんどが新兵や配置換えされた者であり、男性よりも多く配属されているのは、今回が偶々女性をメインに運ぶ運用の時だったからだ。
 新兵や配置換えされた者達はまだ規律に甘く、長期の輸送で新兵の男性がいると強姦される問題があり、今回は女性を新造艦とともに運んでいたのだ。

「大佐、艦長、スーツの準備ができました」


「了解した。ノリコ中佐、準備はできたか?」

 ダレンはノリコに尋ねた。

「はい。パワードスーツを着込みました。大佐も着てください」

 ノリコは言った。

「ああ、そうだな。ミカ曹長、手伝ってくれ」

 ダレンはミカに頼んだ。

「はい、大佐。こちらです」

 ミカはダレンのパワードスーツを持ってきた。

「ありがとう。さて、着るか」

 ダレンはパワードスーツを着始めると、ノリコが告げた。

「大佐、通信で女子会発足を副長に宣言しました。副長は承諾しましたが、少し不満そうでした」

「そうか。まあ、仕方ないな。女子会というのは男には分からないものだからな」

 ダレンは苦笑した。実際はダレンから直接頼まれたかったのだ。

「大佐も参加してくださいよ。女子会と言っても、女性だけの話しではありません。男女比や人員配置など、重要な話しもありますから」

 ノリコはダレンをどうやって女子会に引っ張るか皆が頭を悩めており、思い切って持ち掛けた。

「そうか。それなら参加しよう。でも、俺は女子会の雰囲気についていけるかな?」

 ダレンは不安げに言った。

「大丈夫ですよ。大佐は女性に人気がありますから、歓迎されると思いますよ」

 ノリコは笑った。

「そうか?それなら良かった。では、行こうか」

 ダレンはパワードスーツを着終えて、ランチに乗り込んだ。

 ランチはスムーズに移動し、程なくして目的の輸送艦に到着した。

「第2輸送艦に到着しました」 

 操縦士がダレンに報告した。  

「よし、女だらけの艦に行くとするか!」

 ダレンが先導の宙兵隊に続いてランチから出ると、ノリコ、ミカの順で後をついて行く。

 そして宙兵隊に手伝ってもらいパワードスーツを脱ぐと、3人は輸送艦に入り、女子会の会場に向かった。

 ダレンはこの輸送艦の副長とともに艦内の視察をする事にしていた。
 また、第5輸送艦の副長も一緒にだ。
 彼は女子会の議案の討論へ参加することを断り、男性である自分は冒頭の挨拶と、発足初期の人事のみして抜ける旨を話すこととし、ミズリア少尉と打ち合わせをした。

 進行がどうなるか分からないので、輸送艦の艦長とノリコ艦長にまずは代表を決め、司令部との連絡役を決めるようにと言った。

 ・
 ・
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 女子会は、ダレン大佐の冒頭の挨拶から始まった。

 輸送艦の一角に、直接会議に参加する者達が集まっていた。
 もちろん殆どはホロ会議での参加だ。

 輸送艦で運ばれていた者の中から、航宙軍では本国から送られた新兵が5人、本国へ戻るはずだったベテランが2人、宙兵隊2人、駐留艦隊とは関係なく乗艦していた者が2人。
 他に陸軍士官2人が陸軍の代表として参加。

 輸送艦のクルーから艦長、士官、下級士官、一般兵士、宙兵隊が艦長以外各々2人。
 収容されている偵察艦のクルー3人。
 鹵獲艦のノリコ艦長、ダレンと共に来た旗艦の少佐と中尉、宙兵隊としてミカと伍長。

 殆どダレンより若い。
 20台前半、士官学校や兵士養成所を出たばかりの18歳なんてのもいて、ダレンは若い女特有のフェロモンに会場へ足を踏み入れた途端頭がくらくらした。

「大佐、いえ、司令官殿がお見えになりました。全員起立!敬礼!着席!」

 どうやら輸送艦のクルーが司会をしてくれるらしい。

 見目麗しい若い女性の軍服姿は、男心をくすぐる。

 ホロ会議には各艦から代表が参加している。

「皆集まっているな。これより第1回女子会を始める。この会は私が設立を認め、よほどのことが無い限り可決した内容は追認する。基本的に今後私はこの会に参加しない。今回は冒頭のみ参加し、退散させてもらう。先ずは役員を決めて欲しい。この場で任命する・・・」

 配置されている艦の関係から連絡役は必然的にミズリア少尉、相談役は発起人のノリコ艦長が担うことになった。
 女子会の初代会長は航宙艦乗りではなく、輸送艦にいた陸軍准将が担当することになった。彼女は女性の権利や福利厚生に熱心で、女子会の発足に賛成していた。

 会長として選ばれた陸軍准将は、女性の権利や福利厚生に熱心であり、女子会の発足を支持していて、会議の冒頭で挨拶を行い、参加者たちに感謝の意を表した。

 連絡役として選ばれたミズリア少尉は、司令部との連絡を担当することになるも、役員としてそれなりの発言力を持つ。
 また、相談役として選ばれたノリコ艦長は、発起人として女子会の運営をサポートする役割を果たす等、重要な役目を担う 。
 会長にとの話も出たが、もっと上の階級の者がすべきと准将を推した。

 人事について、この場で決まった者を追認する形でダレンが任命し、基本規則として一般的な会の中での人事権や罷免等の決まり事を発表した。
 これらの骨子はミズリアが一般的な決まりのベースとして作製していた。

 会の運営について基本的な事を発表すると、ダレンは皆の熱い視線の中退席した。
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