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第31話 女子会発足へ
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ダレンとサクスンは格納庫で素手の格闘を続けた。
2人は互いに打ち合い、投げ合い、組み合いながら優劣をつけようとしたが、どちらも譲らず決着はつかなかった。
そして2人共、床に体を打ち付けており、頭を振りながら立ち上がろうとしていた。
「時間です!」
しかしそこで、2等兵である砲術士が審判役として試合終了を宣言した。
事前にダレンとサクスンは10分間の制限時間を設けており、10分が経過したのだ。
「ええっ!?もう終わりなのか?」
「ああ、残念だな。もう少しで勝てそうだったのに」
ダレンとサクスンは残念そうに言ったが、お互いに笑顔で握手を交わした。
「大佐、お疲れ様でした。素晴らしい戦いでした」
「兵曹長もな。君は強いな。楽しかったぞ」
「ありがとうございます。大佐も凄かったです。また戦ってください」
「ああ、喜んでな」
2人は仲良く称えあった。
周りのクルーも拍手や歓声で2人を称えた。
「おお、大佐と兵曹長の戦いは凄まじかったな!!興奮したよ!」
「すごいな。大佐も兵曹長も素敵な戦いだったな!」
「2人ともありがとう!」
「大佐、兵曹長、ありがとうございます!」
2人の戦いは全艦に流されており、多くのクルーが魅入っていた。ダレンは裏ネットワークに手合わせの模様が流れるだろうと思っていたが、それを見て見ぬ振りをしていた。
実は彼は手合わせの模様が全艦に流れ、その戦いを見て士気を高める効果を狙っていた。それにダレンはこの艦のクルーと親しくなりたかったし、彼らに自信とやる気を与えたかった。だから、サクスンと戦っていたのだ。
しかし、格納庫に1人だけ不満そうな顔をしていた者がいたが、それはノリコ艦長だった。
「大佐・・・」
ノリコはジト目でダレンを見つめた。
「何だ?ノリコ中佐」
ダレンはノリコの顔を見たが、その表情に色気を感じてしまった。
「大佐、これは何だったんですか?無駄な時間を使って、怪我を負う危険を冒して、何がしたかったんですか?」
ノリコはダレンに詰め寄った。
ダレンは周りの目があるので、近くのちょっとしたスペースで話そうとなり、手頃な場所として格納庫の脱出ポッドに移動した。
今の自分に文句を言う者がおらず、どきりとしてしまった。
「無駄な時間ではないぞ。これは必要なことだった。サクスンと戦えば、彼の力量や性格を知ることができるし、この艦のクルーと親しくなることができる。それに、彼らに自信とやる気を与えることができる。それが俺の狙いだ」
ダレンはこれまでと違い真剣な表情でノリコに説明をしていく。
「そうですか・・・でも、大佐・・・」
ノリコは言葉を詰まらせた。
「でも何だ?」
ダレンはノリコに問い返した。
「でも・・・私は・・・」
ノリコは赤面した。
「私は何だ?」
ダレンはノリコに聞き返した。
「私は・・・大佐のことが・・・」
ノリコは恥ずかしそうに言った。
「俺のことが何だ?」
ダレンは興味を持った。
「大佐のことが・・・心配でした。怪我をするのではないかと胸が締め付けられる思いを・・・ですから・・・」
「ですから?」
ノリコの次の言葉にダレンは驚いた。
「はい、朱き狂犬のことをお慕いしておりました。その、今もです!大佐は覚えておいでではないかもですが、大佐は士官学校の先輩で、士官学校在籍時から憧れていました。そしてこの艦を与えられ、大佐があの朱き狂犬のダレンその人だと分かった時、気が付けば一緒に戦いたいと思っていました。あのときの想いが再び蘇りました。でも、女子寮へ夜這いに向かい、這々の体で逃げたと聞いた時は悲しかったの。でも、大佐は私に気が付かないし、しかも、もう他の女性と親密な関係にあると知り私は嫉妬・・・」
ノリコは涙を流した。
「嫉妬?誰に?」
「そうです。大佐が護衛のミカ曹長と仲良くしているのを見て私は悔しくて・・・それに、副官のミズリア少尉という美人のライバルもいるじゃないですか?彼女も大佐に好意を寄せていますよね!?私は大佐を取られるのが怖くて・・・好きな人を取られたくないって・・・」
あろうことか、ノリコは少女のように泣きじゃくった。
「そ、そんなことで泣くなよ。ミカと仲良くしているのは、彼女も時折手合わせを楽しんでいるだけだ。俺はミズリア少尉とも付き合っている訳じゃない。」
ダレンは言葉を続けた。
「俺は夜這いに行った訳じゃないんだ。氷の魔女に告白しに行ったのを、本当に女子寮に夜這いをしに行った奴が逃げていて、そいつに巻き込まれたんだ」
ダレンはノリコに当時の事を告白した。
「えっ?本当ですか?その二つ名を知っていたのですね?は、恥ずかしいわ」
ノリコは驚いた。
「本当だよ。君も私の後輩だし、私も君に憧れていた。そして、この艦に来てからも、君と一緒に戦いたいと思っていた。でも、当時から君は私に気がなくて、私の事を避けていたりして・・・俺は・・・」
「寂しかったんですか?」
ノリコは感動した。
「そうだよ。寂しかったよ。だから、君にもっと近づきたかったんだ。でも、君は私を拒んで、怒って・・・」
ダレンは悲しそうに言った。
「ごめんなさい。私も拒んでいなかったんです。ただ、あの時は先輩が他の女に夜這いに行ったと・・・失恋したと思い、先輩を見る事が出来なかったのです」
ノリコは謝罪した。
「ひょっとして、あの時俺が君に好きだと言っていたら・・・まさか?」
「はい。お付き合いしていたと思います」
「嘘だろ?氷の魔女が?・・・」
カララン・・・何かの音がし人の気配を感じた。
「そこにいるのは誰だ!?」
「伍長、私よ」
「こ、これは艦長でしたか。失礼しました。誰もいないはずの脱出ポッドで、また兵どもがうっふんあっはんとやっている、失礼、逢瀬をしているものだと・・・」
「伍長、詳しく教えてくれ。別に誰なのかを特定するような事はしないが、兵どもと言ったな?」
「た、大佐殿、失礼しました」
「急ぎの打ち合わせをしていたんだ」
「そうでしょうとも。着衣に乱れがないですから、もちろん大佐殿が氷の魔女に手を出したと思う者はおりません。ですが、最近男の取り合いがヒートアップしておりまして、女の方が己の体の虜にして、確実にその男の彼女に収まるようにするような事案が多々あるのです」
「この艦だけの問題か?心配するな。正式に聞いている訳じゃないから、この艦だけの問題だとしても、艦長を始め士官達に懲罰を与えるような事はしない。全艦の問題なら俺が知る必要があるんだ」
「大佐はこの艦隊の男女比をご存知ですか?」
「比率までは気にしていなかったが、言われてみればこの艦も旗艦も女性の方が多いような気がするな」
「はい。大佐の知る2艦に限った話しではないのです。確か全体では女の方が1.5倍ほど多く、しかも20歳になるかならないか位の者が7割なのです。これの意味する所が分かりますか?」
「まさか?そうなのか?」
「ほう!流石に大佐殿は分かったようですな。艦長はどうですか?」
「彼氏を作れない女性が多くなるということかしら?深刻な問題になるの?」
「それもありますが、女性の前で話し難い内容ですが失礼します。知っての通り女にも性欲があり、少ないながらセックスに依存する者もおります。しかし、将来結婚して子をなしたいと思うのが普通です。ですが特にその性欲が問題なのです」
「どう問題なの?」
「やりたくても、相手が見つからない女が大勢いるんです。おっと失礼。言葉が汚いのは目をつむってください。目聡い女は33年前の段階で特定の男を捕まえないと、いずれ男に飢えることになると分かっていたようです。そこでコールドスリープに入る時、その相手を確保するのに一悶着あったりしましたから」
「何が問題なのかしら?」
「はっ。一時的な性欲の処理は色々ありますが、将来的な事はどうにもなりません。艦隊の男が全員結婚したとしても、数万の女は結婚できなく、子を抱けなくなるのです。男娼まがいの奴が脱出ポッドで種付け屋と称して商売しているんで、こうやって脱出ポッドを見回っているんです」
「大佐、女子会発足の許可を頂けませんでしょうか!?」
「ああ。任せるよ。事態は深刻そうだな・・・」
ダレンはため息を吐くしかなかった。
2人は互いに打ち合い、投げ合い、組み合いながら優劣をつけようとしたが、どちらも譲らず決着はつかなかった。
そして2人共、床に体を打ち付けており、頭を振りながら立ち上がろうとしていた。
「時間です!」
しかしそこで、2等兵である砲術士が審判役として試合終了を宣言した。
事前にダレンとサクスンは10分間の制限時間を設けており、10分が経過したのだ。
「ええっ!?もう終わりなのか?」
「ああ、残念だな。もう少しで勝てそうだったのに」
ダレンとサクスンは残念そうに言ったが、お互いに笑顔で握手を交わした。
「大佐、お疲れ様でした。素晴らしい戦いでした」
「兵曹長もな。君は強いな。楽しかったぞ」
「ありがとうございます。大佐も凄かったです。また戦ってください」
「ああ、喜んでな」
2人は仲良く称えあった。
周りのクルーも拍手や歓声で2人を称えた。
「おお、大佐と兵曹長の戦いは凄まじかったな!!興奮したよ!」
「すごいな。大佐も兵曹長も素敵な戦いだったな!」
「2人ともありがとう!」
「大佐、兵曹長、ありがとうございます!」
2人の戦いは全艦に流されており、多くのクルーが魅入っていた。ダレンは裏ネットワークに手合わせの模様が流れるだろうと思っていたが、それを見て見ぬ振りをしていた。
実は彼は手合わせの模様が全艦に流れ、その戦いを見て士気を高める効果を狙っていた。それにダレンはこの艦のクルーと親しくなりたかったし、彼らに自信とやる気を与えたかった。だから、サクスンと戦っていたのだ。
しかし、格納庫に1人だけ不満そうな顔をしていた者がいたが、それはノリコ艦長だった。
「大佐・・・」
ノリコはジト目でダレンを見つめた。
「何だ?ノリコ中佐」
ダレンはノリコの顔を見たが、その表情に色気を感じてしまった。
「大佐、これは何だったんですか?無駄な時間を使って、怪我を負う危険を冒して、何がしたかったんですか?」
ノリコはダレンに詰め寄った。
ダレンは周りの目があるので、近くのちょっとしたスペースで話そうとなり、手頃な場所として格納庫の脱出ポッドに移動した。
今の自分に文句を言う者がおらず、どきりとしてしまった。
「無駄な時間ではないぞ。これは必要なことだった。サクスンと戦えば、彼の力量や性格を知ることができるし、この艦のクルーと親しくなることができる。それに、彼らに自信とやる気を与えることができる。それが俺の狙いだ」
ダレンはこれまでと違い真剣な表情でノリコに説明をしていく。
「そうですか・・・でも、大佐・・・」
ノリコは言葉を詰まらせた。
「でも何だ?」
ダレンはノリコに問い返した。
「でも・・・私は・・・」
ノリコは赤面した。
「私は何だ?」
ダレンはノリコに聞き返した。
「私は・・・大佐のことが・・・」
ノリコは恥ずかしそうに言った。
「俺のことが何だ?」
ダレンは興味を持った。
「大佐のことが・・・心配でした。怪我をするのではないかと胸が締め付けられる思いを・・・ですから・・・」
「ですから?」
ノリコの次の言葉にダレンは驚いた。
「はい、朱き狂犬のことをお慕いしておりました。その、今もです!大佐は覚えておいでではないかもですが、大佐は士官学校の先輩で、士官学校在籍時から憧れていました。そしてこの艦を与えられ、大佐があの朱き狂犬のダレンその人だと分かった時、気が付けば一緒に戦いたいと思っていました。あのときの想いが再び蘇りました。でも、女子寮へ夜這いに向かい、這々の体で逃げたと聞いた時は悲しかったの。でも、大佐は私に気が付かないし、しかも、もう他の女性と親密な関係にあると知り私は嫉妬・・・」
ノリコは涙を流した。
「嫉妬?誰に?」
「そうです。大佐が護衛のミカ曹長と仲良くしているのを見て私は悔しくて・・・それに、副官のミズリア少尉という美人のライバルもいるじゃないですか?彼女も大佐に好意を寄せていますよね!?私は大佐を取られるのが怖くて・・・好きな人を取られたくないって・・・」
あろうことか、ノリコは少女のように泣きじゃくった。
「そ、そんなことで泣くなよ。ミカと仲良くしているのは、彼女も時折手合わせを楽しんでいるだけだ。俺はミズリア少尉とも付き合っている訳じゃない。」
ダレンは言葉を続けた。
「俺は夜這いに行った訳じゃないんだ。氷の魔女に告白しに行ったのを、本当に女子寮に夜這いをしに行った奴が逃げていて、そいつに巻き込まれたんだ」
ダレンはノリコに当時の事を告白した。
「えっ?本当ですか?その二つ名を知っていたのですね?は、恥ずかしいわ」
ノリコは驚いた。
「本当だよ。君も私の後輩だし、私も君に憧れていた。そして、この艦に来てからも、君と一緒に戦いたいと思っていた。でも、当時から君は私に気がなくて、私の事を避けていたりして・・・俺は・・・」
「寂しかったんですか?」
ノリコは感動した。
「そうだよ。寂しかったよ。だから、君にもっと近づきたかったんだ。でも、君は私を拒んで、怒って・・・」
ダレンは悲しそうに言った。
「ごめんなさい。私も拒んでいなかったんです。ただ、あの時は先輩が他の女に夜這いに行ったと・・・失恋したと思い、先輩を見る事が出来なかったのです」
ノリコは謝罪した。
「ひょっとして、あの時俺が君に好きだと言っていたら・・・まさか?」
「はい。お付き合いしていたと思います」
「嘘だろ?氷の魔女が?・・・」
カララン・・・何かの音がし人の気配を感じた。
「そこにいるのは誰だ!?」
「伍長、私よ」
「こ、これは艦長でしたか。失礼しました。誰もいないはずの脱出ポッドで、また兵どもがうっふんあっはんとやっている、失礼、逢瀬をしているものだと・・・」
「伍長、詳しく教えてくれ。別に誰なのかを特定するような事はしないが、兵どもと言ったな?」
「た、大佐殿、失礼しました」
「急ぎの打ち合わせをしていたんだ」
「そうでしょうとも。着衣に乱れがないですから、もちろん大佐殿が氷の魔女に手を出したと思う者はおりません。ですが、最近男の取り合いがヒートアップしておりまして、女の方が己の体の虜にして、確実にその男の彼女に収まるようにするような事案が多々あるのです」
「この艦だけの問題か?心配するな。正式に聞いている訳じゃないから、この艦だけの問題だとしても、艦長を始め士官達に懲罰を与えるような事はしない。全艦の問題なら俺が知る必要があるんだ」
「大佐はこの艦隊の男女比をご存知ですか?」
「比率までは気にしていなかったが、言われてみればこの艦も旗艦も女性の方が多いような気がするな」
「はい。大佐の知る2艦に限った話しではないのです。確か全体では女の方が1.5倍ほど多く、しかも20歳になるかならないか位の者が7割なのです。これの意味する所が分かりますか?」
「まさか?そうなのか?」
「ほう!流石に大佐殿は分かったようですな。艦長はどうですか?」
「彼氏を作れない女性が多くなるということかしら?深刻な問題になるの?」
「それもありますが、女性の前で話し難い内容ですが失礼します。知っての通り女にも性欲があり、少ないながらセックスに依存する者もおります。しかし、将来結婚して子をなしたいと思うのが普通です。ですが特にその性欲が問題なのです」
「どう問題なの?」
「やりたくても、相手が見つからない女が大勢いるんです。おっと失礼。言葉が汚いのは目をつむってください。目聡い女は33年前の段階で特定の男を捕まえないと、いずれ男に飢えることになると分かっていたようです。そこでコールドスリープに入る時、その相手を確保するのに一悶着あったりしましたから」
「何が問題なのかしら?」
「はっ。一時的な性欲の処理は色々ありますが、将来的な事はどうにもなりません。艦隊の男が全員結婚したとしても、数万の女は結婚できなく、子を抱けなくなるのです。男娼まがいの奴が脱出ポッドで種付け屋と称して商売しているんで、こうやって脱出ポッドを見回っているんです」
「大佐、女子会発足の許可を頂けませんでしょうか!?」
「ああ。任せるよ。事態は深刻そうだな・・・」
ダレンはため息を吐くしかなかった。
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