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第25話 初期評価
しおりを挟むダレン大佐は敵艦隊から送られてきた映像を見ていた。
分析と初期評価をするもその内容に恐怖した。
それは本星が陥落したことを告げる様子が写し出されて、その内容は常軌を逸しているとしか言えず、敵の宣戦布告としか思えない映像だった。
映像には敵の大艦隊が本星の軌道上に展開し、本星の防衛艦隊や宇宙ステーション、人工衛星などを次々と破壊する様子が映っていた。
そして、敵の艦隊が本星に向けて主砲やミサイル等で攻撃を加えており、本星の表面を焼き尽くす様子が映っていた。
最後に敵の艦隊が本星から離れてジャンプする様子が映っていた。
映像には敵の指導者らしき者が登場し、以下のようなメッセージを発した。
「我々は人類の敵である。我々は人類の本星を滅ぼした。我々は人類の残党を探し出して滅ぼす。我々は人類の歴史を終わらせる。我々は人類に対して宣戦布告する。人類よ、覚悟せよ」
ダレン大佐は映像を見て、そのあり得ない内容が信じられなかった。
彼は本星が陥落したことに絶望し、敵の宣戦布告に怒りを感じた。
「これは……これは嘘だ・・・本星が・・・本星が・・・」
ダレン大佐は呆然とし、涙を押し殺して 声を荒げた。
しかし、違和感からハッとなった。
「全艦、聞け。既に見たと思うが、敵から送られてきた映像だ。事実ならば本星が陥落したことを示すものだ。だが、これは真実ではない。これは敵の作り出した虚像だ。これは敵の罠であり、我々の心理を揺さぶろうとしている。敵は我々の感情を揺さぶり戦う意志を折ろうとしている」
ダレン大佐は全艦に向け真実を伝え、勇気を与えようとした。
「どうしてそう言えるんですか?大佐」
マイクの音声を止めた瞬間、ミズリア少尉がダレン大佐に尋ねた。
彼女は映像を見てショックを受けていた。
そう、彼女は映像を信じてしまっていた。
「どうしても何も、この映像には矛盾点が多すぎるんだ。まず、本星にあった防衛艦隊や宇宙ステーションとか人工衛星などがあまりにも簡単に破壊されている。本星にあるのは最新鋭のものばかりのはずで、敵艦隊よりも性能で勝っている。数の暴力はともかく、コストの掛かった強力な防衛艦隊がいる。それなのに一方的にやられているんだ。それっておかしくないか?それに爆発の様子が妙に派手だ」
ダレン大佐はミズリアに説明した。
映像にあった矛盾点を指摘し、その不自然さを暴露した。
「それから、本星に向けて放たれた攻撃があまりにも過剰だ。本星の表面を焼き尽くすほどの攻撃をする必要があるのか?敵は星を占領するつもりはないのか?資源や文化や知識に興味はないのか?本星を滅ぼすだけで満足なのか?それっておかしくないか?」
ダレン大佐が続けた。
映像にあった攻撃の過剰さを疑問視し、敵の目的の不明確さを批判した。
「そして、敵の指導者らしき者が登場した時、何か気づかなかったか?敵の指導者らしき者は、人類と同じ姿をし、同じ顔をしているんだ。しかも人類と同じ言葉を流暢に話しているんだ。それっておかしくないか?これまで一切のコミュニケーションを取れなかったのにだ。少なくとも破壊した敵艦の残骸からは人類や、類した者の可能性のある証拠は見つかっていない」
ダレン大佐が最後に言った。
彼は映像にあった敵の指導者の正体を問いただした。
映像にあった敵の指導者の不自然さを指摘した。
「大佐・・・」
ミズリア少尉はダレン大佐の言葉に驚いた。
彼女も映像にあった矛盾点や不自然さに気づいた。
そして映像にあった敵の指導者の正体に疑念を抱いた。
「そうだ。これは敵が作り出した偽物だ。これは敵が我々を欺こうとした幻影に過ぎない。我々はこの映像に惑わされたり、屈したりして負けてはならない!」
ダレン大佐は全艦に向けて宣言した。
全艦にダレン大佐が見破った真実を告げ闘志を燃やさせた。
「では、これからどうしますか?大佐」
ミズリア少尉が尋ねた。
彼女はダレン大佐の指示を待っており、彼の判断を妄信的に信じていた。そしてダレン大佐のサポートをする事に無常の喜びを感じていた。
「うむ。これから鹵獲した50艦を制圧する。まだ鹵獲しただけだからな。突入するのは輸送艦の客人たる陸軍兵士だ。その隊長クラスと通信で各艦に行った者の映像を見ながら解析と指示をする。鹵獲した艦内部の安全を確保する」
ダレン大佐は次なる指示を出した。
鹵獲した50艦に興味があり、その50艦に期待していた。
まだ、コンピューターの制御権を奪ったにすぎない。
いつ制御権を奪い返されるかわからない。
「鹵獲した50艦ですか・・・それは人類の艦なのですよね?」
ミズリア少尉が確認した。
彼女は鹵獲した50艦に不安があり、恐れてもいた。
「そうだ。間違いなく人類の艦だ。だが、それらは敵と行動を共にしていることから敵と見なせる。それらは人類ではなく、裏切り者だ」
ダレン大佐がミズリアに答えた。
鹵獲した50艦のクルーに対して憎悪抱き、そのクルーに対し制裁を下そうとしていた。
「大佐、では、これからどうされますか?」
ミズリア少尉が尋ねた。 彼女はダレン大佐の指示を待っていた。 彼女はダレン大佐の判断を信じていた。
「うむ。これから鹵獲した50艦に陸軍が乗り込むから、それらのサポートをする。艦長は周辺宙域を見張り、異常事態に備えろ」
ダレン大佐が答えた。
次に陸軍の隊長と通信を行う。
「少佐、君のフォローは私が行う。エアロックに取り付いたそうだな?準備が整い次第侵入せよ!」
「了解しました。大佐、我々は制圧作業を開始します」
少佐は返事をすると、鹵獲した50艦のうちの1艦に向かっていった。
小佐によると内部を無傷で制圧する事に挑戦するらしい。
そして、彼らは鹵獲した50艦の内部で驚くべき発見をした。
制圧部隊が突入した鹵獲艦の1艦を見てみよう。
敵から鹵獲した艦の内部は暗くて静かだった。
壁や床や天井には配線や管や機械が張り巡らされており、 人間が住むような雰囲気はなかった。
敵は鹵獲した艦を完全に自動化して運用していた。
初期評価では鹵獲した50艦は全て無人で、本来のコンピューターに敵は生体コンピューターを取り付けられており、それによりコンピューターが乗っ取られていたようだ。
ただ、1つ分かったのは既存のコンピューターはそのままに、それに接続して支配する形だった。
生体コンピューターは敵の人工知能と同期しており、敵の命令や情報を受け取っていた。
生体コンピューターは何かの生命体の脳で、その生命維持にはそれらの心臓や臓器などと機械のハイブリッドだった。作られていたが、人間由来ではなさそうだった。
鹵獲した50艦は人類の最新技術を用いて作られているようだが、敵の新型艦と互角以上に渡り合えるだけの性能を持っているかは不明だ。
少なくとも、ダレン配下の新造艦より設計が新しい。
それは艦の識別番号やシリーズ名にある符号からも分かった。
しかし、その作りは荒く、不安定であり、故障や暴走、爆発の危険が高かった。
鹵獲した50艦は敵によって強制的に改造されており、人類の艦としての機能や特徴や美しさが失われていた。
鹵獲した50艦は人類の艦としての記録やデータや記憶を残しているのか?それらを解析することで人類の歴史や文化や知識に触れることができるのかはこれからの調査次第だ。
しかし、それらは敵によって改ざんされたり削除されたり、隠されたりしている危険性が高く、真実を見つけることは困難だろう。
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