2 / 85
第2話 ダレン大佐
しおりを挟む
ダレン視線
俺はダレン・ブレイク。
28歳で航宙軍士官をしている。
階級?大佐だ。
今は特定の女はいない。
先月戦死してしまった・・・
航宙艦乗りで、操舵手がパニックになった駆逐艦に突っ込まれ、艦は文字通り割れたのだとか。
そのまま宇宙空間に放り出されたらしい。
まあ、日常のことで、死体も見つからないなんてよくある。
今は提督室で引き渡しに必要な最後の仕事をしており、当直の時間が終わり8時間の休憩時間中だ。
仕事をしている時は良い。嫌なことも一時的に忘れる。お互い死んじまったら一晩チビチビ飲んで思い出を心の奥底にしまって、翌日には次の相手を探そうぜ!となるのが航宙艦乗りの日常だ。
提督室ともあと2日でお別れだから、せめて最後まで使い倒してやろうと思っている。
提督室にいるのは俺が設計に関わった新造砲艦【フェニックスクラウン】の引き渡しのためだ。
この部屋からしか出せない特別な命令がある。
それを提督が使えるようにする必要があり、目下その作業中だ。
その命令は、フェニックスクラウンの裏コードを利用したモノだ。
これを使えば、艦の性能を最大限に引き出すことができる。
設計上の限界を越え、寿命を縮めかねない為、最後の手段として使う裏技や、起死回生の一手と言われるような最終手段を可能にする為の制限解除が含まれる。
もちろん、悪用されないようにセキュリティーは厳重だが、俺はそのコードを知っている数少ない人間の1人だ。
提督室はベッドとクローゼット、小さな机と端末があるだけの狭い部屋だ。
それと艦長室とここだけは個室のトイレがある。
それでも俺はトレーニングをする方法を見つけた。
天井にある非常用のバンドに脚を固定して、腹筋運動をしているんだ。
背中と尻が天井に接し、上半身を下に垂らして、そこから水平に体を起こす。
これが結構効くんだ。
今は最終調整の関係で、ブリッジと連絡が取れない状態だ。
副長に他の業務を押し付けじゃなく任せ、提督のために設定を変えている最中だ。
ギリギリまでバージョンアップをしており、出港時に設定が間に合わず、引き渡し前に部屋に籠もって処理をする羽目になってしまった。
言っとくけど、俺は引きこもりじゃあない。
もし俺がここを出ると、その間この部屋はセキュリティーが無くなるから、ドアを開けて歩哨を呼ばなきゃいけない。
それは面倒くさいし、入られるのも怖い。
兵士とは入るなと言った部屋に入り、スイッチを押すな触るな!と言っても触る生き物だ。
だから俺は上げ膳下げ膳で食事もここで済ませている。
数少ない自由時間はこの部屋から出られないから、トレーニング以外にすることもない。
まあ、それも悪くないか。
トレーニングは俺の趣味だし、体力もつく。
それにしても、艦隊を指揮する提督の権限はすごいな。
今なら最高機密にもアクセスできるんだぜ。
もちろん、バレたら首チョンパだからやらないけどな。
ただ、予めテスト用に一部の機密コードと検索トリガーを知らされていたけど、ちょっとだけ、それ以外の内容をテストしてみたくなったんだ。
それは今この衛星上に着陸している、引き渡しと引き受ける全ての艦に乗っている者の個人情報だ。
階級が下位の者なら見ても良いと言われているけど、墓まで持って行かなきゃならないレベルの情報だ。
賞罰、スリーサイズや体重はもちろん、初潮や生理の周期まで記録されている。
それほど詳細な個人情報が書かれているのは、軍人としての能力や健康状態を把握するためだろう。
恋人の有無は、戦死した場合に通知を出す先を登録するのに集めた情報なんだ。
俺はある女性士官の情報を見てしまった。
顔写真と名前を眺めていたら、ふと気になったんだ。
聞いたことがあるのと、1度写真を見せられたような気がする。
・
・
・
そうだ!明日俺は軍の広報から取材される。つまりインタビューを受けるのだが、彼女が俺をインタビューする。つまりインタビュアーだ。
彼女はこの艦の引き渡しを広報する任務に就いており、ミス・ミズリアと呼ばれる美人だ。
士官学校では次席の成績を収めたようだが、次席になった理由は戦闘試験が平凡だったかららしい。
逆に俺は戦闘試験はトップだったから、成績もそこそこに持ち直していたんだけどね。
彼女の顔はインタビュー絡みとは別でどこかで見た覚えがあると思っていたら、何だったか、何とかいうミスコンの優勝者だった。
ミス・ミズリアという名前で、航宙軍内でも有名人らしいが、俺はそんなことに興味がなく知らなかった。
美人でプロポーションも抜群だが、彼氏はいないらしい。
そんなことまで書かれているから驚く。
まあ、明日俺をインタビューする者を事前に調べただけだから問題ないだろう。
うん、そういうことにしておこう!
彼女の生い立ちや動機も書かれていて、軍に入ったのは昔助けてくれた軍人を探すためだという。
その人の名前も分からないし、体にある傷が唯一の手がかりだという。
すごいな。
こんな女性が彼女だったら幸せだろうな。
俺は今まで付き合った女とは長続きしなかった。
すぐに死別するか喧嘩別れしてきたからだ。
喧嘩早く、短気な女となんとなくつるんでいた感じだけど、今でも生きている女はいない。
全員付き合い始めてから半年もせずに戦死してしまったんだ。
お陰で狂犬の死神なんて不名誉な二つ名を頂いちまった。
ちゃんとした彼女が欲しい・・・
ダレン視点終わり。
俺はダレン・ブレイク。
28歳で航宙軍士官をしている。
階級?大佐だ。
今は特定の女はいない。
先月戦死してしまった・・・
航宙艦乗りで、操舵手がパニックになった駆逐艦に突っ込まれ、艦は文字通り割れたのだとか。
そのまま宇宙空間に放り出されたらしい。
まあ、日常のことで、死体も見つからないなんてよくある。
今は提督室で引き渡しに必要な最後の仕事をしており、当直の時間が終わり8時間の休憩時間中だ。
仕事をしている時は良い。嫌なことも一時的に忘れる。お互い死んじまったら一晩チビチビ飲んで思い出を心の奥底にしまって、翌日には次の相手を探そうぜ!となるのが航宙艦乗りの日常だ。
提督室ともあと2日でお別れだから、せめて最後まで使い倒してやろうと思っている。
提督室にいるのは俺が設計に関わった新造砲艦【フェニックスクラウン】の引き渡しのためだ。
この部屋からしか出せない特別な命令がある。
それを提督が使えるようにする必要があり、目下その作業中だ。
その命令は、フェニックスクラウンの裏コードを利用したモノだ。
これを使えば、艦の性能を最大限に引き出すことができる。
設計上の限界を越え、寿命を縮めかねない為、最後の手段として使う裏技や、起死回生の一手と言われるような最終手段を可能にする為の制限解除が含まれる。
もちろん、悪用されないようにセキュリティーは厳重だが、俺はそのコードを知っている数少ない人間の1人だ。
提督室はベッドとクローゼット、小さな机と端末があるだけの狭い部屋だ。
それと艦長室とここだけは個室のトイレがある。
それでも俺はトレーニングをする方法を見つけた。
天井にある非常用のバンドに脚を固定して、腹筋運動をしているんだ。
背中と尻が天井に接し、上半身を下に垂らして、そこから水平に体を起こす。
これが結構効くんだ。
今は最終調整の関係で、ブリッジと連絡が取れない状態だ。
副長に他の業務を押し付けじゃなく任せ、提督のために設定を変えている最中だ。
ギリギリまでバージョンアップをしており、出港時に設定が間に合わず、引き渡し前に部屋に籠もって処理をする羽目になってしまった。
言っとくけど、俺は引きこもりじゃあない。
もし俺がここを出ると、その間この部屋はセキュリティーが無くなるから、ドアを開けて歩哨を呼ばなきゃいけない。
それは面倒くさいし、入られるのも怖い。
兵士とは入るなと言った部屋に入り、スイッチを押すな触るな!と言っても触る生き物だ。
だから俺は上げ膳下げ膳で食事もここで済ませている。
数少ない自由時間はこの部屋から出られないから、トレーニング以外にすることもない。
まあ、それも悪くないか。
トレーニングは俺の趣味だし、体力もつく。
それにしても、艦隊を指揮する提督の権限はすごいな。
今なら最高機密にもアクセスできるんだぜ。
もちろん、バレたら首チョンパだからやらないけどな。
ただ、予めテスト用に一部の機密コードと検索トリガーを知らされていたけど、ちょっとだけ、それ以外の内容をテストしてみたくなったんだ。
それは今この衛星上に着陸している、引き渡しと引き受ける全ての艦に乗っている者の個人情報だ。
階級が下位の者なら見ても良いと言われているけど、墓まで持って行かなきゃならないレベルの情報だ。
賞罰、スリーサイズや体重はもちろん、初潮や生理の周期まで記録されている。
それほど詳細な個人情報が書かれているのは、軍人としての能力や健康状態を把握するためだろう。
恋人の有無は、戦死した場合に通知を出す先を登録するのに集めた情報なんだ。
俺はある女性士官の情報を見てしまった。
顔写真と名前を眺めていたら、ふと気になったんだ。
聞いたことがあるのと、1度写真を見せられたような気がする。
・
・
・
そうだ!明日俺は軍の広報から取材される。つまりインタビューを受けるのだが、彼女が俺をインタビューする。つまりインタビュアーだ。
彼女はこの艦の引き渡しを広報する任務に就いており、ミス・ミズリアと呼ばれる美人だ。
士官学校では次席の成績を収めたようだが、次席になった理由は戦闘試験が平凡だったかららしい。
逆に俺は戦闘試験はトップだったから、成績もそこそこに持ち直していたんだけどね。
彼女の顔はインタビュー絡みとは別でどこかで見た覚えがあると思っていたら、何だったか、何とかいうミスコンの優勝者だった。
ミス・ミズリアという名前で、航宙軍内でも有名人らしいが、俺はそんなことに興味がなく知らなかった。
美人でプロポーションも抜群だが、彼氏はいないらしい。
そんなことまで書かれているから驚く。
まあ、明日俺をインタビューする者を事前に調べただけだから問題ないだろう。
うん、そういうことにしておこう!
彼女の生い立ちや動機も書かれていて、軍に入ったのは昔助けてくれた軍人を探すためだという。
その人の名前も分からないし、体にある傷が唯一の手がかりだという。
すごいな。
こんな女性が彼女だったら幸せだろうな。
俺は今まで付き合った女とは長続きしなかった。
すぐに死別するか喧嘩別れしてきたからだ。
喧嘩早く、短気な女となんとなくつるんでいた感じだけど、今でも生きている女はいない。
全員付き合い始めてから半年もせずに戦死してしまったんだ。
お陰で狂犬の死神なんて不名誉な二つ名を頂いちまった。
ちゃんとした彼女が欲しい・・・
ダレン視点終わり。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり
もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。
海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。
無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる