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第三章 事業発展編

第114話 陞爵

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 ロイが夢から覚めた後、目の前に現れたのは一人の執事だった。彼はロイに着替えと食事を済ませた後、国王の謁見に臨むようにと言った。
 色々なことが有り、ロイは混乱していた。

「あれ?ここって何処だ?」

 執事と入れ替わりに入ってきたミネアがメイドを引き連れてきた。

「ロイ様、お目覚めになられたのですわね。その、我慢できないなら私を・・・」

「我慢って?それよりここはどこだろう?状況が飲み込めないんだ。ミネア、俺はなぜここにいるか分かるかい?」

「その、魔力の使い過ぎで私の友人であるフィーネが魔導師たちから吸い上げた魔力を譲渡し、スタンピードの終わりとともに気絶されたのですわ。ですから、魔力切れと思ったのですが・・・」

「よくわからないけど、魔力は全快してるよ」

 そこからメイドに裸にされ、服を着せられている時に色々なことを教えられ、ようやく何があったか思い出してきた。

 着替えると食事を急ぎ済ませ、指示された通り国王のいる謁見の間へと向かう。

 不思議なのは、起きたら真っ先に来るであろうソニアやミンディーの姿がないことだ。

 謁見の間の扉に着くと、ミネアに指示された兵士が扉を開ける。

 そこには先日とは違い威厳に満ちた国王が待っていた。

 また、多くの参列者が通路を挟んで左右に並んでおり、荘厳なファンファーレが鳴り響き、ロイの入場に告げられた。

 国王は深い声で語り始める。

「あなたの勇敢な行動と賢明な決断により、我が国は大きな危機から救われました。国としての感謝の印として、アルディスの町に屋敷を授けることに決定しました。また、領地は持ちませんが、子爵の爵位を授けます」

 この言葉を聞き、ロイは深く感謝の意を表し、同時に重い責任感を感じた。夢に見たような出来事が、現実に起こっているのだから。

 ただ、国王の喋り方に違和感があるが、ため息を付くのを我慢し、陞爵を受け入れた。
 正確には拒否できなかった。

 皆の眼の前で宰相から子爵の身分を明かす徽章を男爵のそれから付け替えられ、終わると大勢の者から拍手された。

 ロイは子爵になってしまった。
 悪い話ではない。
 事業をするのに良い意味で箔が付く。
 本来授爵自体嫌だったが、貴族絡みの嫌なことから逃げられるのは大きい。国王付けの貴族になるらしいから男爵になったが、子爵になってもそれは変わらないらしい。

 ふと見ると、参列者の中にソニアたち硝石の舞の面々もおり、手を振っていた。

 今回の謁見は、実際は謁見ではなく、論功行賞の場だった。
 ロイは最後の者、つまり最大の功労者として参加した。

 謁見が終わり、ロイは屋敷を案内された。
 正確には図面や絵を見せられ、その壮麗さと、これから始まる新しい生活への期待に胸が躍る。しかし、同時に、屋敷を賜ることの意味する重大な役割と、これから国として期待される行動についても、真剣に考え始めた。
 ただ、今のところ求められているのはヴィーナスシリーズの製作と、能力者の教育で、国策となる事業の拡大だ。

 王城での謁見というのは、一生のうちでおそらく一度きりの出来事なのだが、それが数日のうちに2度もあり、ロイはため息を突きつつ、アルディスへの帰路についた。
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